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【艦これSS】鳳翔と提督のバレンタイン

バレンタインのために書き下ろした鳳翔さんを嫁にした提督のSS 実のところ去年のバレンタインに書き出して、最後まで書けなかったもののリベンジ作品です。
ゲーム セルフまとめ SS 艦これ
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青葉⚓日曜西 N-06b@鎮守府新聞ワレアオバ @_Ware_Aoba
「おはようございます提督。今日の秘書艦は大和が務めます」  執務室の扉を開けると待ち構えていたのは、常設秘書艦の鳳翔ではなく大和だった。 「あのぅ……そこまで落胆されると、さすがに私も傷つきます」  驚きが顔に出ていたらしい。 「すまん。そういうつもりはないんだが……鳳翔は?」
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「鳳翔さんは本日はお休みです。なので私が代わりを頼まれました」 『バレンタインなのに?』  喉まで出かかった言葉を飲み込む。 「今朝は特にそういう話はしていなかったんだが……」  自宅での朝を思い起こす。起こされて、朝食を共にして、出勤した。
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鎮守府では朝イチに艦隊司令が集まっての会議があり、それに参加してから執務室に行くと秘書艦が待っているという日課だ。後から家を出るのが当たり前だったので、特に気にしていなかった。 「言われていれば、驚くことも無かったんだけどね」
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「私も今朝、急に頼まれたので、前から決めていたのではないのかもしれません」 「そうなのか」  どうして休みを取ったのかさっぱりわからない。何でも通じ合ってるつもりでも、そうではないんだなと寂しさを覚る。  ふと机の上に綺麗に包装された箱が置かれていることに気が付く。
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「あ、それは私からです。いつもお世話になっているお礼に」  チョコレートであるらしい。 「ありがとう。いただくよ」 「……本当は鳳翔のが欲しいんだけど」  心の声を読んだかのようなセリフを吐いて、いたずらっぽく笑う大和。
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「まあ、そうなんだけど。そうなんだけどね。それと大和から貰うのは別の話だから。素直に礼を言わせてくれ」 「ウフフ、ごめんなさい」 「さあ、仕事仕事。遠征と近辺海域の巡回の輪番表を出してくれるかい」 「はい。お任せください」
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仕事に取り掛かるものの、今日という日は艦娘が代わり代わりチョコを渡しにやってくるものだから、そのたびに中断されて仕事になりはしない。  午後になると訪れる艦娘も少なくなり、午前中の遅れを取り戻すために猛烈に事務処理を進めた。 「次は?」
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「今のでいったん終わりです。後からまた上がってくる予定ですけど」  そう聞いて深く息を吐き出す。張りつめていたものが一気に弛緩していく感覚。 「お茶をお入れしますね」  大和がそう言い残して執務室から出ていく。
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身体の節々を伸ばしながら執務室を見回すと、応接テーブルの上に積み重なったチョコレートの箱が目に入った。  艦娘の艦隊を率いるようになってから早数年。着任した艦娘の多さが実感する。今は戦時だ。今日を生きた彼女たちが、また来年こうしてチョコをくれるかどうかはわからない。
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そう思うと1つたりとも無下にはできないのだが……本当に欲しい人のものがそこに無い。  目を閉じると真っ先に思い浮かぶのは鳳翔が温かに微笑む顔だ。目を開いて自分の左薬指を確認する。  何か怒らせるような事でもしたのだろうか。今朝はそんな素振りもなったと思うのだが。
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女性の心の中は複雑怪奇。などとどこぞの首相のような気分になってくる。 「お待たせしました。一息入れてください」  湯飲みを盆に載せた大和が執務室に戻ってきた。手渡された湯飲みに口を付けて再び深く息を吐き出す。 「そんなに気になりますか?」 「え?」
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「鳳翔さんが今日いらっしゃらないことです」  そんなにも態度が見え見えなのかと自分自身でも困惑してしまう。 「正直、鳳翔がそばにいないだけで、こんなにも気もそぞろになるとは思わなかったよ」 「あらあら。ごちそうさまです」  大和が口に手をあてながら笑う。 「あのなあ……」
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「そんな提督に大和からアドバイスを差し上げましょうか?」 「アドバイス?」  いったいなんだというのだろうか。 「今日の帰り、電車に乗る時にYデッキ側の改札からに入るようにしてください」  Yデッキとは横須賀中央駅東口改札からY字型に延びる横断歩道橋の事だ。
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「どうして?と聞いてはいけないんだろうな」 「はい。それがお作法というものですから」  大和は意味ありげな笑いを浮かべながらそう答えた。
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その後の執務は順調に進み、定時で課業は終了となった。  大規模作戦前とはいえ、準備は着々と進んでいる。艦隊の英気を養うという意味でも、必要以上に残るのを控えるように通達した。  自分の仕事を終えて執務室を出ると、最後に関係部所をひと廻りし、まだ作業している艦娘たちには声をかける。
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小一時間ほど後に鎮守府正門をでると、すでに街は夜の装いとなっていた。 「春は名のみの風の寒さや……か」  コートに首をすくめながら、詩の一節を口ずさむ。  立春を過ぎて10日あまり。暦の上では春だが、3月にかけて寒さは続く。
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横須賀は海からの風のせいか、あまり雪が降らないことだけが救いだが。  人々が行き交う横須賀の繁華街を抜け、駅前到着するとYデッキへと階段を上る。
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いつもの春色の和装の上にえんじ色の道行コートを羽織り、やや緊張したような面持ちでじっとたたずんでいた。 「鳳翔……」  思わず漏れ出た声が届いたのか彼女がこちらへと振り向いた。そしてこちらを見つけるや、パっと花咲くような笑顔に変わる。
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やや小走りにこちらに向かってくるのをこちらからも歩み寄って出迎えた。 「あなた。おかえりなさいませ」 「ただいま。てっきり家にいるものだと思ってた」 「そのつもりだったのですが。思ったより早く終わったもので、居ても立っても居られなくなってしまいました」
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鳳翔は手に持っていたバックから小さな包みを取り出し、両手を添えて差し出した。 「チョコレートです。バレンタインの」 「ありがとう。でもどうして今日は?」  少し困ったように笑顔が曇る。 「今日は……沢山貰えましたか?」 「まあ、それなりに」
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「……ちょっと恥ずかしい事なのですけど」  やや俯きながら言葉を続ける。 「私が朝に渡したとして。その後に他の子たちからのチョコレートに気が行ってしまうのが嫌だなって、昨日からそんなことばかり考えていたんです。それで今日は……」
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その言葉に一瞬だが呆気に取られてしまった。つまるところ、彼女は他の艦娘たちに嫉妬心を抱いていたらしい。思わず喉を鳴らすように笑いが漏れる。 「あ、もう。ひどいです。笑うなんて」  そっぽを向いて不機嫌な顔をする鳳翔は、いつもより少女めいて可愛らしい。一歩進んでその耳元に囁いた。
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「僕も今日一日、キミの事ばかり考えていた」  鳳翔が驚きを隠せない表情でこちらに振り向き、視線が交わりあう。 「似たもの夫婦ってことさ」 「そうですね」  自然とお互いに笑っていた。 「さて、帰ろうか」 「はい」
青葉⚓日曜西 N-06b@鎮守府新聞ワレアオバ @_Ware_Aoba
腕を差し出すと、鳳翔がその腕を取って寄り添った。心なしか身体が温かくなるのを感じた。 「鳳翔、僕はね。改めて思うんだ」 「……」  彼女は何をとは言わない。だから言葉を続けた。 「鳳翔。君のことが好きです。これからも僕のお嫁さんでいてください」
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