私と人形１１ ドルフロ：ショートショート

﨟長けた鉄血のかはたれどきの魔女🦋 @r_s_b_s

#私と人形　私は『指揮官』辺境の分屯基地で部下の人形達と共に鉄血との戦いに備えるのが仕事の一つ。昨今のこの辺境の貴重な人間が住む事の出来る地域での鉄血の活動が活発化したからか、それとも司令部に戦果を認められたかは知らないが、最近は新たに人形が配備される事になった。挨拶をせねば。

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配備された人形の中には私が導入を申請した物や、明らかに（予想以上の戦果を上げた）ご褒美臭い人形も混じっていた。後者の一例ではショットガン…もといSGであろう。M500とM1887を受領した。よもや、盾役たるSGを二体も受領する事になるとは思わなかった。世の中判らない物である。

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さて、申請した人形とは…対物ライフルを有する人形である。将来的に、硬い装甲を持つ鉄血の兵器やコンクリートの壁越しに悪党を撃ち殺さなければならない時に備えての事である。そうしたらG&K本部から二人の人形が送られてきた。ゲパ－ドM1とPTRDの二人だった。この戦力拡充は素直に嬉しい。

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そんな中、何故か一緒に紛れ込んでいた人形も居た。いや、決して悪くは無い。だが、何故彼女らが此処に配備されたのかが不思議なのだ。WA2000と、NZ75だ。どちらも最前線で闘う指揮官が欲する様な高性能人形である。其れが何故、この辺境の基地に回されたのか。謎なばかりである。

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ともあれ、人形達に着任の歓迎と挨拶を交わした。そして各人形の取りまとめ役を紹介した。その後に付いては気さくなAK47に施設や設備、この分屯基地でのルール（ゴミ捨てや食器洗いについて。他には宿舎でやらかしてはいけない事等々）を説明して貰った。斯くして辺境の分屯基地での１日は過ぎる。

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その翌日。この基地で過ごす内に独特の個性を獲得していった人形達に囲まれて朝食を摂っていた六人の人形達は、補佐官を務めるスプリングフィールドに呼び出された。食事の後、促されるが儘に彼女らは案内される。修復室へと。何故こんな場所に自分達は呼び出されたのか。彼女らは疑問が尽きなかった。

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扉を開くスプリングフィールド。そして其所に居たのは、精密な整備道具を扱うグリズリーと…『私』が居た。四肢の義手義足を剥き出しにして。人形達が絶句するのが判る。だが、これで良いのだ。「見てのとおり、私の体の大半は義体でね…鉄血の機動兵器とやり合った結果がこれさ。この義眼だってそう」

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「何よ…何なのよそれ！」WAが涙声でヒステリックに叫んだ。無理も無いか。「ご覧の通りだよ。私は死に損ないで、君達人形の技術でこうして生活が出来てる。同情を買うつもりは無い。だが、私もまた、君達と同じ様に鉄血の連中と闘ったと言う事を知って貰いたかっただけなんだ」人形達は押し黙る。

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「それともう一つ…これは恥ずかしい話なのだがね…私は度々幻肢痛に苛まされてね…程度が軽ければ耐えれば良いんだが…あまりにも痛みが酷いと意識を失いかねないんだよ。その時はどうか、私の事を助けて欲しい…」私はそう言い終えると彼女らに頭を下げた。スプリングフィールドも頭を下げる。

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すると、WAが震える唇で呟いた。「…私、判った気がするわ。なんでこんな辺境の基地に送り込まれたのかって。私、指揮官がどうしても信用出来なかったわ。どんなに優秀な指揮官でも、不安感が拭えなかった。だけど、あんたなら信用出来る気がする。上手く言えないけどッ」彼女は顔を赤らめて言った。

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NZ75もまた呟く。「道理で私がG&Kの本部から送り込まれた訳だ。指揮官。貴女は期待されているんだ。私は配属に際して本部からは何の説明を受けなかったが、彼らは貴女の事を重要な人物と評価したんだ。この辺境を守る防人として。ならば闘おう。鉄血と。そして守ろう。貴女の事を」

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そう言うや否や、NZ75は敬礼し、残りの人形達もまた敬礼をする。私は略式敬礼で彼女らに返礼をした。四肢の義手義足のメンテナンスは終わっていないのだから。「にしても指揮官、仕込み銃付きの義手は如何かと思うよ？重いだろうに」グリズリーからの指摘に私は苦笑した。仕方が無いじゃないか。

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これは、貴女達の守護が得られない場合の最終手段なのだから。体に負担が掛かろうとも、非常手段は持つに越した事はない。「何はともあれ、私の『体を』含めての自己紹介は終わりだよ。どうか宜しく頼むね。皆」「用件は異常になります。お疲れ様でした」スプリングフィールドはそう言って会釈した。

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さて。『私』は指揮官として新たに着任した少女らにどの様な訓練を与えるべきか悩んだ。特にSGと、対物ライフルの四人である。私はSGの二人にSMGの人形を割り与えた。回避能力の高いSMGを狙わせ、SMGからの弾幕をSGが持つ装甲板で防ぐ訓練を行わせた。SMGも訓練が出来て効率的だ。

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対物ライフルのゲパ－ドM1とPTRDの訓練は…戦場から持ち帰った鉄血の装甲兵器の装甲やコンクリートの壁をぶち抜く訓練を与えた。通常の的では威力が在りすぎて的ごと吹き飛ばしかねない。何より、装甲やコンクリートの壁をぶち抜いて貰うが為に私は彼女らの配備を申請したのだから、これで良い。

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NZ75の面倒はナガンのお婆様に任せるとして、私はスプリングフィールド他、ライフル達に率いられて自然の中へと入っていったWAを見送った。…正直に申し上げれば、些か不安である。WAはプライドが高そうな人形だから、この辺境の分屯基地流の訓練にパニックを起こさないか心配であった。

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…その頃…「何なのよ！もう！」WAは自然の中で叫んでいた。「私は殺しの為に産まれてきたのよ！？なのに何故山の中でハンティングしなきゃいけないのよ！？」そんな彼女をやんわりとモシンナガンが窘めた。「これもまた訓練ですよ。我々は鉄血のみならず、人間の悪党を撃ち殺す必要がありますなら」

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「野生動物の呼吸、気配を読む事は人間を殺す時にも有効です。これはその訓練の一環ですよ」モシンナガンがそう言う間にも、スプリングフィールドは『自分』を構えて、緩やかな呼吸を繰り返し、そしてゆっくり引き金を引いた。山中に鋭い銃声が響き渡った。野鳥がパタパタと飛び去っていくのが見えた。

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その日の晩の事…「今夜はイノシシのジビエですよぉ」「うおぉぉ！！」食卓に並ぶイノシシの肉に人形達は目を輝かせた。それも大物のイノシシである。食い出がありそうだった。『私』も内心嬉しい。ここ数日はあまり美味しくないMREの消費に勤しんでいたから。…場の空気に対してWAは憂鬱だった。

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この基地も、この基地の指揮官も、そしてこの基地の人形達も、何もかもが個性的過ぎて頭が痛かった。何よりも、圧倒的に年代の古いスプリングフィールドに狙撃の腕で負けたのが彼女には悔しかった。「食べないのか？W2。美味しいぞ。このジビエ」「もう慣れ親しんでるんじゃないわよ！NZ75！」

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「それとW2って略して言うな！」「じゃぁ、WAっちゃん」「何よWAっちゃんて！？」「ARやSMGの子達が貴女の事をそう呼んでいた」WAは頭を抱えた。「…W2で良いわ。あと私にもジビエ頂戴。お腹空いた」「判った。取ってこよう」嗚呼もう、なんて不適当で、なんて破茶滅茶で…だけども

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…どうしてこんなにも、居心地が良いのかしら。理由は判らない。だけども多分…その切っ掛けを作ったのは紛れもなく、あの『指揮官』なのだ。片目と四肢を失い、人形と人間の狭間に居て今も尚、必死に闘い、必死に生きている『指揮官』がいるからなのだと、WA2000はそう思ったのだった。

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どっとはらい。