インディーズ映画って、何?・・・映画の作り方

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榎本憲男★『マネーの魔術師 ハッカー黒木の告白』1月20日発売! @chimumu

0.いま大不況の最中で、数々の映画が資金調達で難航し、企画にゴーサインが出ない状況にある。ならば自主で作ろうと決心したとする。では自主映画を撮ろうとする人間はどのように商業映画(映画館で上映している映画)に切り込んでいけばいいのかについて、思うところを連投します。

2011-05-05 22:31:57
榎本憲男★『マネーの魔術師 ハッカー黒木の告白』1月20日発売! @chimumu

1.言葉の整理をしよう。大手の映画会社や関連企業が幹事となって作る映画をメジャーと呼ぶ。非大手の映画会社が企画して製作する映画をインディペンデントと呼ぶ。最後に自主映画というものを定義する。これらは話をわかりやすくするための便宜的な定義です。

2011-05-05 22:35:03
榎本憲男★『マネーの魔術師 ハッカー黒木の告白』1月20日発売! @chimumu

2.自主映画は、①監督発案の企画であり、②マイクロバジェット(後で定義する)で、③プロデューサー中心ではなく監督主導で製作する映画とする。出資があるかどうかはこの際問題としない。また、④監督にその映画の著作権(の一部でも)があればこれを自主映画と呼ぶ。

2011-05-05 22:38:17
榎本憲男★『マネーの魔術師 ハッカー黒木の告白』1月20日発売! @chimumu

3.そういう意味では『見えないほどの遠くの空を』は完全に自主映画である。『歓待』の方は『見えないほどの遠くの空を』よりもプロデューサー(小野光輔&杉野希妃)の牽引力はかなり強いが、まあ自主映画と言える。だが、両作品ともに製作委員会を組成している。

2011-05-05 22:39:42
榎本憲男★『マネーの魔術師 ハッカー黒木の告白』1月20日発売! @chimumu

4.製作委員会システムというのは日本映画界独特のものだ、一言で言ってしまえば、複数の出資者が、①それぞれの事業特性を活かしてプロモーションすることを前提に組成し、②出資比率に応じて著作権を按分する製作方法である。

2011-05-05 22:40:14
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5.製作委員会が強大になっていくと、映画監督のポジションが弱体化していく。しかし、自主の生命線は監督主導である。監督主導のマイクロバジェットのプロジェクトが自主の基本的な枠組みなのだ。

2011-05-05 22:41:09
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6.では、マイクロバジェットというのはいくらくらいなのか、これも話をわかりやすくするために定義してしまおう。自主映画の資金調達の傾向から予算規模を二分して捉えよう。a)数万円~50万円以下 b)200万~300万程度 である。

2011-05-05 22:41:50
榎本憲男★『マネーの魔術師 ハッカー黒木の告白』1月20日発売! @chimumu

7.a)の場合。例えば映画学校を出て、最後の卒業制作に「ここは一発勝負だ」と一念発起し、貯金をはたいて製作をというような場合である。若い映画作家志望が個人で出せる上限が大体30万から50万だ(大金持ちは除く)。但し、この場合、映画の尺は40分~50分となることが多い。

2011-05-05 22:42:26
榎本憲男★『マネーの魔術師 ハッカー黒木の告白』1月20日発売! @chimumu

8.b)のプロジェクトはプロの現場経験のあるスタッフもちらほらいる。あるいはa)での経験を共有したスタッフがいる。売れている俳優はいないかもしれないが、芝居経験者が演じる。尺は90分以上。撮影期間は10日~2週間程度。『歓待』『見えないほどの遠くの空を』はこのタイプだ。

2011-05-05 22:45:12
榎本憲男★『マネーの魔術師 ハッカー黒木の告白』1月20日発売! @chimumu

9.カメラはHD以上のグレードで撮影する(『歓待』はCanon 7D、『見え空』はRED)。フィルムは焼かない。プロジェクター上映可の映画館で上映する。『歓待』『見え空』の上映素材はBlu-rayである(HDCAMがマスターだが、これを上映できる映画館はほとんどない)。

2011-05-05 22:50:18
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10.あとは宣伝費である。宣伝はほぼクチコミを狙うのだが、どうしても作らなければならないもの、やらなければならないことがある。それはチラシとポスターとHPと試写とプレスシートの作成だ。

2011-05-05 22:51:52
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11.単館系の商業映画の場合では、宣伝会社の人間が約4名ほど作品に関わって宣伝をする。そのような人件費も含めると1000万~3000万ほど宣伝費がかかる。こんな値段は到底自主には無理である。まず、いかに宣伝をしないで宣伝を成立させられるのかということを考えなければならない。

2011-05-05 22:53:31
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12.宣伝に金がかけられない場合、何に頼って宣伝するか。タダパブである。その為に作品のクオリティに頼ることになる。だから、出来が悪ければ、アウトである。『歓待』は2010年東京国際映画祭ある視点部門作品賞受賞作品。これは大きかった。

2011-05-05 22:54:54
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13.原作が超有名、キャスト超有名、宣伝費莫大の場合、映画がイマイチでも、ガンガン宣伝すれば当たる可能性はある。けれど、自主映画の場合、クオリティが最低条件になる。そのクオリティの質もいろいろあるが、ここでは議論しない。とにかく映画として出来がいいことが最低条件だ。

2011-05-05 22:55:34
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14.ところが、これがなかなか難しい。映画というのは金をかければかけるほど演出の選択肢が広がる。カメラワークにしても低予算の場合は限られた選択肢の中で選ばなければならない。俯瞰で撮りたくても出来ない。空撮など到底無理である。

2011-05-05 22:56:37
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15.クオリティをある程度保障するには、まずは脚本だと考えるのが妥当である。だが、メジャー作品に求められるような最大公約数的な口当たりのよいウェルメイドさは自主ではむしろ徒となる場合も多い。むしろエッジを立てることがクオリティの突破口になる。これが難しい。自主の脚本は難度が高い。

2011-05-05 22:58:11
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16.クオリティにおいて次に大事なのはキャスティングだ。脚本に書かれた台詞を喋るのもスクリーンに写るのも役者なのだ。もちろん自主では、著名な俳優のキャスティングは難しい。とにかく芝居がしっかりしていてカメラ映えする人間になんとか出てもらうように頼み込む。

2011-05-05 22:59:49
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17.『歓待』の場合は深田監督が青年団に所属しているので、同劇団の俳優が出演している。やはり、うまい。『見えないほどの遠くの空を』は主演の森岡龍に関わりのある若手(渡辺大知、橋本一郎、佐藤貴広、前野朋哉、中村無何有)で固めた。試写では彼らの芝居の評判がいいので嬉しい。

2011-05-05 23:01:28
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18.『見えないほどの遠くの空を』キャスティングを担当したブレスはタレント事務所だが、自主映画にも役者を出演させるという方針を出している。主演の森岡龍は自分の監督作のキャスティングの相談に行って、そのままスカウトされ『茶の味』に出演してしまったという経歴を持つ。

2011-05-05 23:03:10
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19.あと、自主映画のネックはサウンドである。みんなカメラの方には意識的になるのだが、音に関しては後回しになりがちだ。映画のサウンドは机の上の小さなスピーカーで聴いている時には気にならなくても、劇場の大きなスピーカーで上映すると相当なノイズを出す(それが演出意図ならいいが)。

2011-05-05 23:04:39
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20.となると効果・整音の技術は必要である。ところが、整音というのは撮影が終わって映画が完成する最後のプロセスなので、もうこの時点で一銭も残っていないという場合がままある。ここは気をつけなければならない。

2011-05-05 23:06:15
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21.また、効果・整音は、出来ればプライベートスタジオを持っているプロの人がいい。自主では時間換算のスタジオは予算上借りられないし、低価格でも今のデジタル機材の音質はどれもかなりの水準である。ゴツイ機材がなくても、スピーカーが小さくてもいい。機材ではなくプロの耳を信じる。

2011-05-05 23:07:04
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22.『見えないほどの遠くの空を』は現場で音を録ってくれていたスタッフがスケジュールの都合で、仕上げに参加できなくなり、急遽、臼井勝に整音を頼み込んだ。非常にうまく仕上げてくれた。あの時臼井が捕まらなかったらと思うとぞっとする。

2011-05-05 23:08:01
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23.クオリティを確認するため、試写の反応は重要だ。一昔前は、デジタル作品は試写ができなかったが、今は大抵の試写室で対応している。『歓待』は監督の出身校の映画美学校、『見えないほどの遠くの空を』はTCCで試写。TCCは値段交渉に応じてくれる。映写状態もよい。

2011-05-05 23:10:20
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24.試写に来てくれたマスコミ関係者に手渡しするのがプレスシートだ。これは作品をピッチする側の意図を伝えるためにも重要なものなので、きちんと作った方がいい。今では、単館系作品もカラー印刷の豪華なものになったが、昔はワープロ印刷のものを渡していた。『見え空』は当然ワープロ出し。

2011-05-05 23:11:03