ギガベース日誌 ACT07「CREATED VICTIMS」06

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再す誕ふ者ん🍜🍬 @hfsm_ABIDING

「こんな時間に呼び出して、どういう用件だ?」 「なんだ。無視しても良かったのだぞ」 黒い染みで彩られた壁に四方を包まれた部屋の中。4隻の艦娘は不満げな表情を浮かべながら立ち並ぶ。 #ギガベース日誌

2019-02-19 00:40:13
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その視線の先には、漂白されたような服装に身を包み、今日日珍しい木製の執務椅子に腰掛けるこれまた艦娘の姿がある。 「実質選択肢なんてねえだろうが」 「ここの艦娘が全員お前みたいに賢かったらと思うよ、天霧」 #ギガベース日誌

2019-02-19 00:43:44
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「さて、二次統制権限を持つお前達を呼んだのは他でもない。サイセターを動かす。第二艦隊所属の艦娘、その全てごと」 「リリアナの方に貸してる連中はどうすんだ」 「回収するとも。一隻残らずな」 #ギガベース日誌

2019-02-19 00:47:00
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「ちょっと待て。つまりゴトランドやポーラをこの船に……またサイセターに乗せるっていうのか?」 「寝てたのかガングート。『一隻残らずだ』。この言い直しは高くつくぞ」 「ハッ!戻したつもりが、次の日には艦が減っているかもしれんぞ」 「その為の私だよ」 #ギガベース日誌

2019-02-19 00:51:46
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「捕虜に死なれたらどうするの?今はどうにか快適に過ごしてもらっているけど、黎明期の治安に戻ろうものなら……そこまでする理由を聞きたいわ」 「絶対怒られちゃいますよ~」 「そうなる前に、壁の染みが増えるだけだ」 #ギガベース日誌

2019-02-19 00:57:00
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「まぁ、理由ぐらいは教えてやる。これを見ろ」 その眼光で4隻を威圧し続けるグラーフの背後の背中に、数機のネクストとアームズフォートらしき構造物を捉えた画像が投影される。 「どうして本社施設にアンサラーが?!」 「FGの連中まで……」 #ギガベース日誌

2019-02-19 01:01:08
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「さあな。秘書艦不知火はこれを送るだけで精一杯だったようだ。送受信には随分と回りくどい手段を使ったから、だいたいこれが1時間ほど前の状況になる」 グラーフの声色に凄味が混じり始める。 #ギガベース日誌

2019-02-19 01:03:11
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「まぁここまではAdmiral達も想定の範囲内だろう。だが、本当にまずいのはこっちのほうだ」 切り替わる投影画像を見た4隻は、例外無く数秒言葉を失った。沈黙はプリンツ・オイゲンによって破られる。 「グラーフ、これ……」 「”これ”が今、真っ直ぐ本社海域の上空へと向かっている」 #ギガベース日誌

2019-02-19 01:06:37
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「本社周辺は高度7000mまでエネルギー高射砲の射程内にある筈よ。今頃撃墜されて……」 「海域周辺の対空レーダーは本隊が破壊した。それに、こいつが飛んでるのは高度11000m付近、成層圏の真下だ」 「だったら……」 「どうしてだろうな。星屑が降り注いでいる様子は無い」 #ギガベース日誌

2019-02-19 01:13:20
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「私はこいつをサイセターを動かすに値する緊急事態と結論付けた。Admiralには、ゲスト二名の確保さえ完了すれば後は好きなように動かしていいと言われている。異論はあるか?」 4隻は首を横に振る。 「私達の提督か……ようやく会えるかもしれないのね」 #ギガベース日誌

2019-02-19 01:20:01
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「ついていく甲斐のある奴かねぇ。その辺どうなんだよ、グラーフ。会った事あるのってお前だけだろ?」 「いいや、直接は一度も無い。通信での会話だけだ。だが」 グラーフが立ち上がる。その眼の奥で煌めく緑光は薄暗い部屋の中で一際目立ち、4隻にこれから生じる苦痛を覚悟させた。 #ギガベース日誌

2019-02-19 01:24:37
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「彼はこの私に、願うだけでお前達を殺せるほどの、私の神経一つの乱れで全てが瓦解しかねない程の権力を与えた。あぁ、兵器として、軍人として、これ以上の誉れがあるものかよ、フフフ」 「お前……」 「ならば、応える他は捨てるのが流儀というもの、だよな?」 #ギガベース日誌

2019-02-19 01:27:41
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「Lichten des Ankers」 グラーフの意思を空気振動では無く痛みとして知らしめる絶対の命令。天津風、プリンツ、ガングート、天霧は、両目から血を流しながら倒れ込み、数多の血を吸い固まった絨毯の質感を全身で感じた。 #ギガベース日誌

2019-02-19 01:31:13

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「おいおい……一体何事だよ……」 真上を通過したクレイドルと、そこから投下され続ける大量の深海棲艦を遠目に眺め、木曾は球磨の吐瀉物が詰められた水筒を口から離した。 「ただ事じゃ無さそうクマ。ギガベースと通信が繋がらんクマ」 「この期に及んで通信妨害か?ったく……」 #ギガベース日誌

2019-02-19 03:30:30
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「とにかく、ギガベースに戻った方が良さそうだな。あの調子じゃ、本社攻撃もクソもあるまい」 木曾の視線の先では、ダーインスレイヴがその下端部でオーメル本社を押し潰し始めていた。 「全く、乱入してくるとはとんでもない奴等クマ」 「突破するぞ、姉さん」 #ギガベース日誌

2019-02-19 03:31:09
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移動を開始した二隻の前に、程無くして深海棲艦が現れた。軽巡ツ級を始めとした小型艦の軍勢が、オーメル側の艦娘に襲い掛かる。 「もう始まってるクマ!」 「丁度いい。どさくさに紛れて突破……」 「ちょっ……あれ見るクマ!」 #ギガベース日誌

2019-02-19 03:32:16
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球磨が指す先。クイックブーストで深海棲艦を振り切ろうとした夕雲を、深紅の装甲を纏ったツ級が連続する破裂音と共に追い越し、機銃掃射を叩き込む。 「深海連中まで、QBを……」 異常はそれだけでない。被弾した夕雲の腕部に、急激な変化が現れる。 #ギガベース日誌

2019-02-19 03:33:36
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夕雲の腕部に刻まれた夥しい数の孔から、黒い液体が溢れ出す。夕雲の全身は瞬く間にその液体に包まれ、内部からフロート脚部を有した深海棲艦が出現した。 「マジかよ……冗談じゃねえ、被弾しただけでアウトだってのか!」 「木曾!来るクマッ!」 #ギガベース日誌

2019-02-19 03:34:29
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木曾と球磨を捕捉し、二隻を追い立てる深紅のツ級となれ果てたオーメルの艦娘達。 「見つけた。ギガベースの艦娘。救済を開始する」 「大丈夫、大丈夫」 「痛くしないから」 「っせえんだよ、化け物が!」 木曾が放つPMミサイルが、ツ級達を真上から襲う。 #ギガベース日誌

2019-02-19 03:35:20
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ツ級が放つ正確無比な対空射撃がミサイルを次々に撃墜するが、ガントレットの隙間に球磨がレーザーライフルを撃ち込み撃沈する。 「まだまだクマぁっ!」 ヘ級の高角砲の射線を蹴りで逸らし、MURAKUMOで胴体を横一文字に切り裂く球磨。 #ギガベース日誌

2019-02-19 03:37:14
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切り離された上半身を元夕雲に向け蹴り飛ばす球磨。木曾がよろめいたそれにコジマミサイルを叩き込み、2隻は再びギガベースへと向き直る。 「姉さん、ツ級相手に近接戦闘はよしてくれ。肝が冷える」 「自分のゲロを飲んで興奮する妹のほうがお姉ちゃんは怖いクマー」 #ギガベース日誌

2019-02-19 03:37:59
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「言うねえ」 「それより、気付いたクマ?PAが正常に展開できるようになってるクマ。やっぱりあのAFが……」 それが飛来してくる音に最初に気が付いたのは、球磨の方だった。 少し遅れて木曾が気付く。遅すぎた。球磨はQBの勢いを乗せ、木曾の体を突き飛ばす。 #ギガベース日誌

2019-02-19 03:39:47
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馬鹿げた速度で飛来した2機の桜花。いずれも黒く変色したそれの片方は海面に激突し、もう片方は球磨の背中に突き刺さった。 「姉さんっ?!」 球磨に突き刺さった桜花が体内に侵入し、球磨の肉体が艤装ごと侵食されていく。 「姉さん待ってろ!今っ」 「く、るなああァアっ!!!」 #ギガベース日誌

2019-02-19 03:40:43
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黒色の装甲に覆われつつある喉の奥から絞り出された声が、木曾を制止する。 「はや、ギガベースに、も、ドっ、あっ、ぎあっ」 「嘘だろ……ふざけんな!!一緒に戻るぞ!姉さっ」 球磨だったそれは、駆け寄ってきた木曾に対し両腕と一体化したショットガンを向け、淡々と言い放つ。 #ギガベース日誌

2019-02-19 03:41:46
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