- YamanekoOuka
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――ソシャゲのガチャであった。 2月も終わりにさしかかったその日、男はいろいろと血迷っていた。 すべての始まりは2年前のことである。 元々、そのゲームのためにスマホを購入した程度に、入れ込んでいるゲームであった。
2019-02-22 23:14:16であるからして、コラボ先の思い出と相まって期待は大きかった。 無論、ソシャゲのイベントとは虚無と作業で構築された悪夢的複合体であり、ゲームと呼べるのは閲覧できるシナリオ部分だとかボス戦だとかである。 そういう過酷な周回作業をしてでも、先を見たいと思わせる魅力があった。
2019-02-22 23:19:08結論から言おう。 その物語は美しかったのだ。 それだけで意味があり、価値があった。男にとってゲームというものは、「美しい物語を体験できるか」否かで価値が決まるものであり、その尺度においてそこには絶対があった。
2019-02-22 23:21:13で、血迷った。当時、絶賛無職ライフであった男はそのもの語りのメインヒロインが排出されるガチャのため課金を行い、死んだ。つまりマネーを溶かして無へ還元した。 翌年のバレンタインイベントは地獄だった。 推しのバレンタインシナリオがかわいいと評判だった。 無論、縁のない話である。
2019-02-22 23:23:39この年の配信シナリオで登場した育ちのいい金髪ロリキャラのガチャでも敗北を喫していたので、なんかこう虚無がわっと押し寄せてきたのは想像に難くない。 そして年末と正月が来た。 おわかりだろうか。 ガチャの季節だ。
2019-02-22 23:26:08ゲームにおけるバレンタインとは、キャッキャウフフする物語である。いや、リアルにおいてどうかはさておき、ゲームではそういうものである。 しかしガチャ排出キャラ限定のバレンタインシナリオは、ここに地獄を生み出した。 推しがアカウントに存在しないまま迎えるバレンタインイベントがやってくる
2019-02-22 23:28:31無論、賢明なるプレイヤー諸兄は「それはそれ、これはこれ」とおっしゃるだろう。しかしここでSNSと連動した罠――ソシャゲのソーシャルたるゆえんが牙をむく。 そう、TLに流れてくるのだ。 (俺の持っていない)推しのバレンタインイベントが。
2019-02-22 23:30:03これが効いた。 かなり精神的につらい。 すると俄然、「年末年始のピックアップで手に入れて今年こそ」と思うのが人情であろう。 意気揚々と課金した。 ――屍山血河。 ガチャとは万象の終焉たる死にも似たもの。 当然のことながら、推しは来なかった。
2019-02-22 23:32:28あまりのつらさに、男は推しが推しであったという記憶を封印した。ツイッターとPIXIVでめっちゃ画像集めてるとか、フォローしてる絵師が明らかにジャンル的に偏ってるとか、そういう感じの不具合が発生しているが封印した。 ガチャという死神から逃れるため、推しから逃避した。
2019-02-22 23:34:03そして1年が経過した。 ゲームシナリオは第二部へ移行し、様々な物語が配信された。男は多いにこの1年のメインシナリオを楽しみ――骨董品のスマホはイベント周回できなくなりつつあった――かつて欲した推しとそのガチャのことを忘却した。 いや、だってイベント限定PUだしな。
2019-02-22 23:36:10そして翌年。 男は連日の残業で死んだ魚の目になっていた。 こうなってくると人間、とりあえず残業代で散財してストレス発散したくなる。 ちょっと贅沢して飯を食うとか、映画をハシゴするとか、プラモ買うとか、他二や利用はあった。 だが、ここにきて。
2019-02-22 23:37:40