「未来」800号記念特集号 未来歌集2018②より 好き短歌まとめ
- atelier_yi
- 2001
- 5
- 0
- 0
800号記念特集号、やっと今日から②のほうです 復路六区です イノシシのくせしてスピードは亀です こつこついくよ
2019-01-07 23:41:10「未来」2018.9 800号記念特集号②:■こころはれる/こころこはれる 雲間からひかりこぼれる空を見てゐる /微乳好きとロリはちがふと言ひ訳をすればするほど遠ざかる月(秋月祐一) 晴れるとは壊れることか まどろみを裂いて すみません二首目結句の月と話者がおもしろくて選んでしまいました
2019-01-08 00:10:24「未来」2018.9 800号記念特集号②: ■人が人を呼ぶ声ひびきさぞしさの根源のように窓はひらきぬ /窓の外を鼓笛隊行く晴れながらそのまま行ってしまいぬ日々は(秋山律子) クレッシェンドとデクレッシェンドがみえる さなかのようで、とり残されている日々の ここにも晴天のさみしさがある
2019-01-08 00:27:05「未来」2018.9 800号記念特集号②: ■微笑めばもう夕暮れであるやうに頬に落ちゆく頬骨のかげ /今すぐに駆けてゆきたい足二ほんぶら下げてゐるぴあのの椅子に(飯田彩乃) なにがあって微笑んだだろう 暮れる頬という機微 二首目、心の在り処が ピアノではなくぴあのなのがぴったりですね
2019-01-09 00:46:29「未来」2018.9 800号記念特集号②: ■東京に空が無いといふほんたうの智恵子の空を奪ひしわれら /戦争の放棄謳いて国ひとつ在るロマンティックわれは愛する(石川洋一) 高村光太郎の詩の一節、「阿多多羅山の山の上に/毎日出ている青い空」が本当の空だったのだ われら、という人称が重い
2019-01-09 00:58:08「未来」2018.9 800号記念特集号②: ■結晶の育つ速度でさよならは近づいてくる ゆびをからめて /羊水はつめたいとなぜおもったろうまっさらに街 まっしろな息 /どのみちを選んでもさみしいときはゆたかなほうをゆきなさい、火よ(石畑由紀子) じぶんのもピックアップしてよいですか
2019-01-09 21:45:44「未来」2018.9 800号記念特集号②: ■睡蓮の茎を柱と呼んでゐた夢のなかでは国家になれた /あなただれ、黄昏。おまへだれ、雪崩。浮世草子をうしろから読む(伊豆みつ) 池の底、くらがりに満ちていたことの 伊豆さんの歌にある一貫した関節のやわらかさ、美しさが好きだ
2019-01-09 22:01:20「未来」2018.9 800号記念特集号②: ■心ごととらえるように抱いたのにあたりいちめん花びら花びら(岩田あを) ■亡き猫の名をパスワードに決めたれば日々に打つなり猫の名前を(大島史洋) 泣いていいですか
2019-01-09 22:09:32「未来」2018.9 800号記念特集号②:■風となつて通り過ぎてくものたちを見てゐたずつと駅として僕は /おとがひを私の膝におきながら宵闇はさつき涙してゐし /氷 (ひ) のごときひとと触れなば和ぎゆかむ炎の縁をよこぎれる雪(大辻隆弘) 駅、停車することのないもののための 三首目、嗚呼好き
2019-01-09 22:52:16「未来」2018.9 800号記念特集号②:■だめ、と手を強くつかまれ水辺では幼いひとのようにうなずく /ジッパーを引き下げながら白樺の林にわれの熱を放てり /冬山をおりたあなたの頭 (ず) を抱けば火の匂いしてまた強く抱く(岡崎裕美子) 溺れるのを許さない手 各歌の、追熟するように深まる話者
2019-01-09 23:14:34「未来」2018.9 800号記念特集号②: ■ハムからハムをめくり取るときひんやりと肉の離るる音ぞ聞こゆる(門脇篤史) 自分では殺していない、捌いていない 丁度よい加工品である肉の それでも追いかけてくる死にたてのけものの音 手を汚さずに食す者を醒ます音
2019-01-10 21:55:05「未来」2018.9 800号記念特集号②: ■体 (たい) あさく病むやすらぎのたとうれば桃のはだえのようなけばだち(釜田初音) ■嘘をつく舌のかたちのエリンギをひりひり焼きて夕暮れにをり(河竹由利) 釜田さん、微熱をこのように詠めるなんて 河竹さん、エリンギ! 嘘をつく舌の形の! エリンギ!
2019-01-10 22:03:09「未来」2018.9 800号記念特集号②:■背後という火があるようでふりかえる部屋はひたすらにほら穴だった /まさびしく水脈 (みお) たどるとき胸の奥に芽ぶく想いよもう一度来よ(岸原さや) 熱は幻か 洞穴は黒々と口を開けるのみか 森が燃えるのも炭が鎮まるのも火のように しずかな 美しい二首
2019-01-13 22:13:38「未来」2018.9 800号記念特集号②: ■解答欄ずっとおんなじ文字並び不安だアイアイオエエエエエエ /殺人をしてしまったら殺人をしてない人に憧れそうだ(工藤吉生) 境界はまぶしく向こう側は美しい 自身の針の振れた、その力の正体を 一方通行の路上、遮断機の前で想像するほかない
2019-01-13 22:21:51「未来」2018.9 800号記念特集号②:■シューティングゲームのうまいやつが来て全部よけて帰った /ぼくは汽車、汽車なんだぞー! と駆けてきた子供がオレにぶつかって泣く(工藤吉生) 汽車!汽車!(道産子) なんだろう、この、通ってきた道の(結果的に)壁になってみて解る滑稽さ、清々しさ
2019-01-13 22:23:56「未来」2018.9 800号記念特集号②: ■生命を恥じるとりわけ火に触れた指を即座に引っ込めるとき(工藤吉生) 更にもうひとつ工藤さん 驚きというか、気づき アダムとイヴと同時期のような気づき よい歌だなあ よい歌だなあ 特集号①②通じてもっとも印をつけたのが工藤さんでした
2019-01-13 22:38:03「未来」2018.9 800号記念特集号②: ■お子様ランチの残り押しつけらるるゆゑやや小盛りにて注文す俺氏 /朝凪よ 手足口病発症の予感をさせて児は土手を行く /(黒瀬珂瀾) 俺氏。。俺氏! 手足口病というひびき 病はまだ凪いでいて そのパーツ全部をいきいきさせて土手をゆくのだろう
2019-01-15 23:45:54「未来」2018.9 800号記念特集号②: ■「このおちや」にあらず畳に零れたる「あのおちや」が飲みたいのと叫ぶ(黒瀬珂瀾) どこまでが「お茶」か 児にとっては あそこも「お茶」なのだ 今は機能していないもののかつてのかたち おとなも同じように泣くことがある 黒瀬さんの、子の歌、好き
2019-01-15 23:57:33「未来」2018.9 800号記念特集号②:■「銀だらの西京焼き」なる文字見ればファミレスに燃え落ちる朱雀門 /『電池太郎』という絵本はないかと全国の図書館訪ねる爺になりたい(笹公人) ファミレスが瞬時に大内裏、逃げ惑う人々! しかも火を放ったのは銀だら きっと自らの脂で… 爺、もういそう
2019-01-19 23:39:37「未来」2018.9 800号記念特集号②:■永遠にこの星に棲むと思はるる 菜の花畑を君と歩けば(髙橋あき子) 死後の強い予感だろう 圧巻の風景のなか なにより"君"といるということ 片恋かもしれない 永遠に"二人で"棲むとまでは描かれていない 独りでも この記憶だけで死後も魂が留まるのだ
2019-01-20 00:00:59「未来」2018.9 800号記念特集号②:■折り紙をやり過ぎ指紋を削られてもう青い眼の猫に会わんか(髙橋政嗣) 上句と下句の関係性がわからないままに ふしぎな感触だけを味わい 印象に残った一首 擦り減ったことで開かなくなったある種の扉か(メタファとしての) 青い眼の猫、吸い込まれますね
2019-01-23 22:35:43「未来」2018.9 800号記念特集号②:■人ひとり隠せるような雨の日だ きみのシフトを覚えてしまう /外国のお菓子みたいな曾祖母の骨を拾って朝が終わった(鷹山菜摘) 実風景であり心象風景であり 隠して、おきたいのか(自身を) 隠れていてみえないのか(きみが) 恋ですね 二首目よいなあ
2019-01-23 22:47:21「未来」2018.9 800号記念特集号②:■案内の矢印とぎるる場所ありて声する方に歩きゆきたり(竹内通代) ひかり、という言葉を用いずにひかりについて書かれた作品を述べよ、という設問があったならわたしはこの歌をあげる と、おもった よいな よいな この、ぱぁぁ…とひらける感じ この感じ
2019-01-23 22:56:57「未来」2018.9 800号記念特集号②:■風のないホームに母が立っていたアインシュタインのTシャツを着て(竹中優子) "あの"アインシュタインの写真のプリントだろう 単純に「オカンの変T」的なおかしさか、とも思いつつ 風のないホーム 次にあげる一首のこともあり覚醒や性的な何かとも感じる
2019-01-23 23:24:42「未来」2018.9 800号記念特集号②:■暗闇でするおしっこのあたたかさ母さんは本を読む人でした(竹中優子) 制約のなかで研ぎ澄まされてつながっていくもの それが「おしっこ」から「母さん」であること 生々しさから、母の、届かないところに想いをとばす(心の)指のような読後感
2019-01-23 23:37:50