岩波書店『科学』による大気圏内核実験期フォールアウトと東電福島第一原発事故時のフォールアウトの量的比較について

岩波書店『科学』による核実験期フォールアウトと福島第一原発事故時のフォールアウト比較について。『知ろうとすること。』などで繰り返される間違った知識の流布。
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岩波『科学』 @IwanamiKagaku

『科学』2012年4月号では、気象研究所で放射性物質の降下量測定に長年携わってきた、青山道夫・五十嵐康人・廣瀬勝己の3氏による、「月間降下物測定660カ月が教えること」を掲載。この論考による事実は次のとおりです。

2019-02-25 20:08:38
岩波『科学』 @IwanamiKagaku

気象研究所の測定は1970年代まで東京・高円寺で、その後つくばでの測定。12年4月号掲載のセシウム137の月間降下量(1957年4月〜2011年9月)の順位を示すと、 1位 2011年3月 2万7000ベクレル /平方メートル /月(執筆時の暫定値。単位以下同) 2位 2011年4月 2300(暫定値) 3位 1963年6月 550

2019-02-26 19:41:17
岩波『科学』 @IwanamiKagaku

4位 2011年5月 510(暫定値) 5位 1963年8月 260 で、1963年の発生源は米ソ大気圏核実験、2011年は言うまでもなく東京電力福島第一原子力発電所です。 また同論文には、セシウム137の積算降下量の図も掲載されていますが、2011年以前に最も高かった1960年代半ばでも数千ベクレル/平方メートルで、

2019-02-25 20:23:47
岩波『科学』 @IwanamiKagaku

1万ベクレル/平方メートルは超えていませんでした。 対して、2011年3月には2万ベクレル/平方メートルを超えてつくばに降下していました。 その後、2014年2月付で気象研究所から公表された「環境における人工放射能の研究2013」mri-jma.go.jp/Dep/ap/ap4lab/…で、より正確な値が示されていますが、

2019-02-25 20:29:47
岩波『科学』 @IwanamiKagaku

2011年3月の月間降下量はおよそ2万3000ベクレル/平方メートル/月と記されています。 本誌12年4月号掲載の図については、14年1月に環境省専門家会議への情報提供iwanami.co.jp/kagaku/kagaku2… したうちの資料D iwanami.co.jp/kagaku/siryoD.… として公開してきました。

2019-02-25 20:36:11
岩波『科学』 @IwanamiKagaku

東京近辺で大気圏核実験時代のほうが福島原発事故後よりも放射性物質の降下量(ないし濃度)が多かったというのは、まったく間違っているのですが、そうしたデタラメを2011年7月に行政に助言していた専門家の例が前述の資料D iwanami.co.jp/kagaku/siryoD.… で述べられています。

2019-02-25 20:45:10
岩波『科学』 @IwanamiKagaku

しかし驚くべきことに、その後も同種の誤認識が流布されており、今現在もそう思っていた、といわれるのを耳にする機会があり、改めてご紹介しました。流布された例としてその時に挙がったのが、早野龍五氏と糸井重里氏による『知ろうとすること。』でした。

2019-02-25 20:48:33
岩波『科学』 @IwanamiKagaku

『知ろうとすること。』の「あとがき」の日付は2014年8月、刊行は同年10月、手元の15年3月版は10刷と記載。同書36頁以降で早野氏は、「外へ出てみて計測してみたところ、あたり一面が汚染されている」という「1973年、東京都心での出来事」を早野氏が「強烈な原体験」として紹介した上で、

2019-02-25 20:56:19
岩波『科学』 @IwanamiKagaku

「糸井 そのフォールアウトを実測したときの数値は、今回の事故の数値と比較して、どのくらいの規模のものだったんですか。 早野 ぼくらは、いまのように1平方メートルあたり何ベクレルというかたちでは測ってなかったので、当時の東京といまの福島を直接比較するのは難しいんです。…

2019-02-25 20:59:02
岩波『科学』 @IwanamiKagaku

〔早野氏の発言続き〕…でも、気象研究所というところが1950年代後期からずっと核実験によるフォールアウトの研究をしていて、継続的に数値を残しているので、そのデータといまの福島を比べることは、事故後、割と早い時期からできていました。…

2019-02-25 20:59:41
岩波『科学』 @IwanamiKagaku

〔早野氏の発言続き〕…地域差があるので一概には言えませんが、少なくとも首都圏に関しては、1973年のフォールアウトと比較しても、それほど心配するレベルではないなと。」(『知ろうとすること。』39頁より)

2019-02-25 21:01:06
岩波『科学』 @IwanamiKagaku

14年2月時点で気象研究所の報告が述べていたこと、12年4月号で本誌が掲載した論考と14年1月以降公開してきたその図が示していたことは、気象研究所のデータが示していることとは、福島原発事故後のほうが大気圏核実験時代よりも、月間で2桁、積算で1桁大きかったということです。

2019-02-25 21:05:44
岩波『科学』 @IwanamiKagaku

なお前掲資料Dの前半部の初出は、12年3月号掲載の[座談会]押川正毅・影浦峡・牧野淳一郎・山田真「消えた論理の謎―原発事故後の言葉の融解」に掲載したコラムです。

2019-02-25 21:12:25

岩波『科学』さんによる訂正と補足

(上にあるツイートは訂正済みのもの)

岩波『科学』 @IwanamiKagaku

(訂正)12個前のツイートにおいて、1位と2位をともに、2011年4月、と誤記してしまいましたが、正しくは、1位が2011年3月、2位が2011年4月、です。次のメールで修正版を再投稿します。

2019-02-26 19:40:26
岩波『科学』 @IwanamiKagaku

フォールアウトの話題と関連して、3月号(出庫・販売開始)掲載の佐藤暁「福島原子炉事故8年後の回想と爪痕」では、東京都区内清掃工場における飛灰の放射能濃度測定結果を示しています。江戸川清掃工場の飛灰は2018年11月でも267ベクレル/kgあり、クリアランスレベル100ベクレル/kgを超えています。

2019-02-26 20:06:30
岩波『科学』 @IwanamiKagaku

また、3月号では青木美希「発事故の汚染土,再利用に反発の声相次ぐ」も掲載。南相馬、二本松、那須、柏の各地をたずねたルポです。 iwanami.co.jp/book/b440644.h…

2019-02-26 20:08:51