自殺しそうな提督

いや、ドM提督?
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同志雪の人@活動低下 @yuki_8492

宿舎に帰る途中の道、片側は庁舎の建屋で片側は海。ただ通過するだけなら、道を建屋沿いに進むだけで良い。 だが提督は、ことさらに海側に寄った。何というか、海面を眺めたい気分だったのだ。

2019-02-26 23:07:28
同志雪の人@活動低下 @yuki_8492

夜の海面は真っ黒で、波頭だけが灯火に照らされてちろちろと輝いていた。波は定期的に岸壁にぶつかって、ざぶんざぶんとはじける。海面の黒と波の白が渦巻く様子は、不思議な引力があった。

2019-02-26 23:11:52
同志雪の人@活動低下 @yuki_8492

ごうごうと吹く潮風が骨身に沁みた。運ばれてきた夜の冷気が、胸に開いた空洞をなぜる。 無性に海に飛び込みたくなった。温かさが欲しくなったからだ。

2019-02-26 23:15:12
同志雪の人@活動低下 @yuki_8492

海は今となっては恐怖の象徴だ。全てを呑み込む海、深海棲艦の訪れる道。だが自分にとってはそれだけではない。この海の底のどこかに、荒潮も沈んでいるはずなのだ。

2019-02-26 23:20:05
同志雪の人@活動低下 @yuki_8492

死後の世界を信じているわけではない。彼女と再び会えるなんてことはあり得ない。 でも、それでも、彼女と同じ場所に居られると言うことは、同じように海に沈むと言うことは、それだけでとても尊いことのように感じられた。

2019-02-26 23:20:42
同志雪の人@活動低下 @yuki_8492

(しゃっきりなさい! このクズ!) 霞の罵倒が聞こえたような気がして振り返ったが、誰も居なかった。当然だ、彼女には彼女の仕事がある。この時間に、ここにいるはずがない。

2019-02-26 23:23:28
同志雪の人@活動低下 @yuki_8492

荒潮が死んで以来、彼女に罵られたことがないような気がする。連合艦隊に居た頃は、ことあるごとにクズと言われていたのに。手抜かりを見逃さない彼女は頼もしかったが、叱責は恐ろしくもあった。 それが今は無いと言うのは、彼女なりに気を使っているのか、もう罵倒する価値もないと言うことなのか。

2019-02-26 23:28:26
同志雪の人@活動低下 @yuki_8492

霞の声は幻聴だったはずなのに、気分はすっきりとしていた。もしかしたら自分は、霞に罵倒されたいのかもしれない。 輝いている思い出の中で、現実に残っているのは彼女だけなのだ。

2019-02-26 23:29:57