岩波「科学」2019年3月号掲載「宮崎早野論文に対する黒川眞一氏の論考と牧野淳一郎氏の論考」は、壊れた基盤をどのように修復・作り直せばよいかの道筋を示している(2019.2.28作成)

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asadori_Qly @AsadoriQ

『科学』3月号を入手。特集は「原発事故下の8年」。原発事故は今も続いているという事実をふまえた表現の正確さに注意。目次はこちら。 iwanami.co.jp/book/b440644.h…

2019-02-28 21:15:01
asadori_Qly @AsadoriQ

重要な記事ばかりだが、とりわけ田中三彦「積み残されたままの原発事故原因・事故分析 その(1)」を特集に入れたのは編集者の高い見識を示している。平沼百合「福島県の甲状腺検査の動き」2018年12月27日検討委員会を扱う。一つ前は↓参照。 iwanami.co.jp/kagaku/eKagaku…

2019-02-28 21:23:24
asadori_Qly @AsadoriQ

このアカウントでは宮崎・早野2論文(同意なしデータを使うことを含む重大な倫理違反と通常の科学論文が犯す誤りとはみなし難い数値の複数の不整合がありまた規制の基準と中央値(と混同した平均)を混同した論文)の問題をいくつかtweetしてきたので関連記事を。

2019-02-28 21:48:10
asadori_Qly @AsadoriQ

第一は黒川眞一「被曝防護には空間線量そのものを使うことが妥当である」。副題の「信頼性なく被曝線量を過小評価する宮崎早野第1論文」が示すように宮崎早野第一論文を検討するもの。

2019-02-28 21:50:00
asadori_Qly @AsadoriQ

読むとはこういうことという模範のようなもので(「論文」を「丁寧に」読むことに矮小化してはいけない)、大学で「情報リテラシー」とか「メディアリテラシー」と言いながら原発事故後沈黙していた人たちは宮崎早野論文とこの記事を教材に使って授業をするとよい(すみません、言い切ります)。

2019-02-28 21:52:39
asadori_Qly @AsadoriQ

紹介したいけどこの読みのプロセスは要約には適さないので皆さん『科学』今月号でお読みください。宮崎早野論文は無料で英語版も日本語訳も手に入る。リンクはOurPlanett-TVの以下のページの下の方にあります。 ourplanet-tv.org/?q=node/2337

2019-02-28 21:55:24
asadori_Qly @AsadoriQ

もう一つの宮崎早野論文関連は牧野淳一郎「3.11後の科学リテラシー 75」。宮崎早野論文の「あまりに杜撰な研究の進め方に驚き、あきれてしまいますが、宮崎早野論文の問題は、科学者コミュニティにとどまらない、極めて大きな社会的影響があることです」と指摘。前半はそれを扱う。

2019-02-28 22:00:32
asadori_Qly @AsadoriQ

具体的には2018年9月28日第142回総会放射線審議会の「142-2号:東京電力福島第一原子力発電所事故の教訓を踏まえた緊急時被ばく状況及び現存被ばく状況における放射線障害防止に係る技術的基準の策定の考え方について(案)」で参照されている。 nsr.go.jp/data/000246876…

2019-02-28 22:07:45
asadori_Qly @AsadoriQ

それを使ってしまうと被曝線量を過小評価することにつながる。 2019年1月25日第143回総会放射線審議会資料では、宮崎早野論文への言及は削除されているが、この会議で事務局は、学術的な意義が全否定されるわけではない、結論は変えないとした。審議会の該当資料はこちら。 nsr.go.jp/data/000259695…

2019-02-28 22:11:41
asadori_Qly @AsadoriQ

この審議会資料ではもう一つ、内藤らによる「福島第一原子力発電所事故後の飯舘村における復興期間中の個人外部被ばく線量の測定及び評価」という論文も参照されている。元論文はこちら(英語)。 iopscience.iop.org/article/10.108…

2019-02-28 22:16:04
asadori_Qly @AsadoriQ

この論文も空間線量率と被曝線量率の関係を0.15とか0.18としているが、実は、空間線量率は航空機モニタリングに基づいており除染後の実際の値よりも2-5倍程度高くなっている。従ってこれも被曝線量を過小評価することになる。

2019-02-28 22:19:02
asadori_Qly @AsadoriQ

この文章は論理から仮説を組み立てデータをチェックという流れの見通しがとてもよい。この話題はやはり牧野淳一郎さんがハーバービジネスオンラインに書いた「宮崎早野論文を、「削除はするが問題はない」とした放射線審議会の異常さ」でも扱われている。 hbol.jp/184914

2019-02-28 22:21:03
asadori_Qly @AsadoriQ

同意なしデータを使うことを含む重大な倫理違反と通常の科学論文でもありうる誤りと見ることが難いような数値の不整合がありまた規制の基準と中央値(と混同した平均)を混同した論文の著者の一人早野龍五氏は原発事故後しばしば科学的な情報を誠実に提供した人のように報じられてきた。

2019-02-28 22:28:29
asadori_Qly @AsadoriQ

例えば、石戸諭「ツイッターがつなげた福島と科学者 最終講義で語ったこと」とか内村直之「物理とツイッターで福島を支えた科学者 早野龍五」とか。 headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170316-… dot.asahi.com/aera/201705250…

2019-02-28 22:32:59
asadori_Qly @AsadoriQ

早野氏は2011年3月22日、関東に放射性物質が来ていたときに、twitterで「春雨じゃ濡れて参ろう」とつぶやいていた。その後、ホールボディカウンターでの測定や給食丸ごと調査などに乗り出した。3月の誤りを自ら踏まえ誠実に対応しようとしているようだった。

2019-02-28 22:38:39
asadori_Qly @AsadoriQ

でもおそらくはそうではなかった。給食丸ごと検査は、徐々に明らかになりつつあった放射性物質を吸収しやすい食材とそうでない食材を混ぜることで被曝の診断をむしろ困難にした。また糸井重里氏との共著『知ろうとすること』では大気圏核実験時代の方が汚染がひどかったかのように述べていた。

2019-02-28 22:41:09
asadori_Qly @AsadoriQ

それを考えると早野氏という人を批判したくなる。そして市民としてはそれは自然なことであるし当然でもあろう。『科学』における黒川氏と牧野氏の記事の重要性は知見として提出されたことの何がどう問題なのかを科学の手続きと科学が従うべき倫理に依拠して淡々と緻密に検討していることにある。

2019-02-28 22:45:21
asadori_Qly @AsadoriQ

市民の権利の行使や事故により不当な被曝を強いられた人々の尊厳の回復や被害への賠償といったことと並行して、色々なところの基盤が壊れているときにそれをどのように修復しまた作り直せばよいかについての道筋を示す。

2019-02-28 22:48:31
asadori_Qly @AsadoriQ

いつかはわからないがずっと後になってこの号は歴史的に残るものと評価され参照されるだろう。でも私たちは今、生きていて、今、社会の様々な基盤が壊されている状況を目の当たりにしている。今、この号の記事も手がかりに、わずかでも一人一人ができる基盤を修復する作業をしよう。

2019-02-28 22:58:53

asadori_Qly @AsadoriQ

断片的な補足。宮崎早野論文の箱ひげ図は普通の箱ひげ図とはだいぶ違う描かれ方をしているようだ。

2019-03-01 22:37:27
asadori_Qly @AsadoriQ

『科学』の牧野記事と黒川記事に共通すること。航空機サーベイは除染の効果を捉えることができない。牧野記事では「内藤論文」について、黒川記事では宮崎早野第一論文について、その点を検証している。

2019-03-01 22:40:03
asadori_Qly @AsadoriQ

驚くのは、宮崎早野第一論文の図4から除染の効果と考えると説明のつく高空間線量率域での個人被曝線量率のずれが観察されること(高汚染地域で避難していたためなら最初から観察されるはず)。それは『女性自身』記事でも指摘されていたように第二論文でも観察される。 jisin.jp/domestic/17118…

2019-03-01 22:44:07
asadori_Qly @AsadoriQ

でも第一論文を引き継いだ宮崎早野第二論文の結論の一つは除染の効果が観察*されない*ということだった。そこで改めて第二論文を読んでみると、論理的に恐ろしいことが書いてある。伊達市で除染の効果が観察されない理由として(p. 632から) iopscience.iop.org/article/10.108…

2019-03-01 22:52:26
asadori_Qly @AsadoriQ

"1. The ratio of the areas actually decontaminated to the area covered by the airborne monitoring is small. Thus, decontamination has little effect in reducing the ‘grid’ dose."

2019-03-01 22:53:35