BDZの減量方法 by 佐々木幸哉医師

精神科医によるBDZ減量の実際が非常にわかりやすく書かれています。医師だけでなく患者さんにも理解出来ると思われます。
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Yukiya Sasaki/佐々木幸哉(精神科医, 製薬) @YukiyaMEDICAL

一般科の先生達が熱心に議論をして下さっているので、一丁噛みさせていただこうかと思います。 因みに「一般科」というのは、精神科から見た他科の呼称で、北海道人が本州のことを「内地」と呼ぶのに似た自虐性を伴う用語ですが、ここでは敢えて。 @cardioathlete @DrTowa108 @osanpo_surgeon twitter.com/cardioathlete/…

2019-03-03 19:02:20
Yukiya Sasaki/佐々木幸哉(精神科医, 製薬) @YukiyaMEDICAL

ただこれ、話し込むと長くなる。 「断薬クラ」とでも呼ぶべきクラスタでは、BDZの減量方法について、ワクチンや放射線論争を彷彿とさせる激論が交わされています。 一般科ではBDZが使われていても単剤・低用量処方が大半だと思いますので、ここではその前提で話を進めます。 a.r10.to/hfXSAq

2019-03-03 19:02:21
Yukiya Sasaki/佐々木幸哉(精神科医, 製薬) @YukiyaMEDICAL

向精神薬、特にベンゾジアゼピン系薬物(BDZ)≒睡眠薬・抗不安薬には「出すに易く引くに難い」という特徴があります。 これはBDZが即効性・確実性という面で優れた薬だからだとも言える。 精神疾患が背景に無い、不眠の訴えがあるだけの患者さんにマイスリーを処方すれば、その日から熟眠が得られる。

2019-03-03 19:02:21
Yukiya Sasaki/佐々木幸哉(精神科医, 製薬) @YukiyaMEDICAL

抗不安薬も同様。服用すれば不安や苛々がすぐに和らぐ。 患者さんは喜ぶし、医者も手間がかからない。 短期使用や頓用では大きな問題は起こりませんが、大多数の医師(大多数の精神科医も含まれる)はBDZの依存性や副作用について知識が無いので「有効で安全な薬」として漫然処方を続けることが多い。

2019-03-03 19:02:21
Yukiya Sasaki/佐々木幸哉(精神科医, 製薬) @YukiyaMEDICAL

そして処方を受けた患者さんの何割かは律儀に毎日BDZを服用する。 律儀な性格故に不眠や不安が起きるのかもしれませんが、そのタイプの患者さんは「飲めば安心・飲まなきゃ不安」という心理的依存に陥りやすい。 やがて、服用を続けるうちに真の依存――身体的依存が形成されます。 BDZを止め難くなる。

2019-03-03 19:02:21
Yukiya Sasaki/佐々木幸哉(精神科医, 製薬) @YukiyaMEDICAL

依存形成までの期間については諸説・個人差があるが、4週間連用すると依存が生じると考えておいた方が安心。受診間隔が4週間の患者さんに日数分のBDZを処方するとそれだけで依存症リスクがあるわけです。 yakugai.gr.jp/topics/topic.p… BDZ依存が生じる=BDZを止めると離脱症状が現われることになります。

2019-03-03 19:02:22
Yukiya Sasaki/佐々木幸哉(精神科医, 製薬) @YukiyaMEDICAL

まず反跳性の不眠・不安・筋緊張。 BDZが共通して有する催眠・抗不安・筋弛緩作用のリバウンドです。BDZ服用開始前よりも遙かに強い不眠、不安、肩こり・頭痛といった症状が現われます。 その他、多彩な離脱症状が現われますが、これはBDZの標的が、脳の広い範囲に作用するGABA神経系であるからです。

2019-03-03 19:02:22
Yukiya Sasaki/佐々木幸哉(精神科医, 製薬) @YukiyaMEDICAL

こうした離脱症状が処方前に説明されていることは稀です。 2泊3日の旅行に薬を持っていくのを忘れたところ、旅行中一睡もできず酷い体調不良が続いて観光どころではなかった。 別病の手術のために、術前の絶飲食に伴ってBDZを中断したら、全身痙攣発作(これも離脱症状)が起きて手術が中止になった。

2019-03-03 19:02:22
Yukiya Sasaki/佐々木幸哉(精神科医, 製薬) @YukiyaMEDICAL

こうした大小の「アクシデント」が契機になってBDZ依存が成立していることがわかることが多い。 患者さんはBDZが「癖になる薬」であり、かつ服薬を止めたら服薬前よりも酷い状態になることを、痛い目に遭って初めて知ることになります。 当然、処方医に相談しますが、相談された処方医も困ります。

2019-03-03 19:02:22
Yukiya Sasaki/佐々木幸哉(精神科医, 製薬) @YukiyaMEDICAL

多くの医師のBDZ依存に対する認識は甘く、離脱症状の知識も乏しい。患者が訴える離脱症状が本当に自ら処方したBDZを中止したために起きたのかどうかも確信が持てない。 結果、処方医は「この薬は安全だし、飲んでいれば調子は悪くならないのだから飲み忘れないように」という「服薬指導」をしがち。

2019-03-03 19:02:22
Yukiya Sasaki/佐々木幸哉(精神科医, 製薬) @YukiyaMEDICAL

集中力や記憶力の低下、ふらつきといった副作用は、少なくとも短~中期的には自覚されないことが多い。患者さんは心理的依存が生じてもいるので、処方医の指導を受け入れることが多い。 ここに、断薬を望まない患者さんと、安全に断薬する技術を持たない医師との間である種の「共犯関係」が成立する。

2019-03-03 19:02:23
Yukiya Sasaki/佐々木幸哉(精神科医, 製薬) @YukiyaMEDICAL

結局ずいぶんと長くなりましたがここまでが前置き。 「その辺の患者さんへの上手い説明方法+漸減方法」が本来のお題。 元も子もないところから始めると、前主治医から引き継いだ患者さんの中にこうしたBDZ長期慢性服用者が10人いたとして、減量・断薬できるのは半分くらいではないかと思います。

2019-03-03 19:02:23
Yukiya Sasaki/佐々木幸哉(精神科医, 製薬) @YukiyaMEDICAL

減量に同意しない患者さんと、同意はしたが減薬開始後に離脱症状や症状再発のために断薬を断念する患者さんが合わせて半数程度はいるのではないかという意味です。 BDZの服用に伴う長期的リスクを説明し、それでも患者さんが服用継続を強く望まれた場合、そのやりとりは記録に残しておくべきでしょう。

2019-03-03 19:02:23
Yukiya Sasaki/佐々木幸哉(精神科医, 製薬) @YukiyaMEDICAL

減薬に同意した患者さんのBDZをどのように減らしていくか。 技法としては漸減法、隔日法、置換法等がありますが、技法以前に、断薬までには長い時間がかかることを、医師自身が知り、また患者さんに説明しておくことがとても重要です。 時間を掛けることが断薬成功の秘訣であるとも言えます。

2019-03-03 19:02:23
Yukiya Sasaki/佐々木幸哉(精神科医, 製薬) @YukiyaMEDICAL

断薬までにどれくらいの時間を掛けるべきか、エビデンスはありませんが、僕は、患者さんに「これまでこの薬を服用していた期間と同じくらいの時間がかかると思っていて下さい」と説明することが多いです。 つまり、BDZを5年服用していた患者さんの断薬には、5年かかると考えておいた方がいい。

2019-03-03 19:02:24
Yukiya Sasaki/佐々木幸哉(精神科医, 製薬) @YukiyaMEDICAL

BDZの断薬に関する文献には「2~4週ごとに服用量の25%ずつ減量し、4~8週間かけて中止する」と書かれているものが多いのですが、経験的に申し上げて、これはあまり現実的ではない。 年単位で服用してきたBDZを2ヶ月で断薬することは通常不可能です。 igaku-shoin.co.jp/paperDetail.do… fpa.or.jp/library/kusuri…

2019-03-03 19:02:24
Yukiya Sasaki/佐々木幸哉(精神科医, 製薬) @YukiyaMEDICAL

依存の生じやすさには本当に個人差があって、長期・高用量服薬していても、さくっと断薬できて離脱症状が全く起こらない方もおられます。 しかしそれは大多数の患者さんに期待できる幸運ではありません。 減薬開始にあたっては、ごく少量減らすところから始めるのが無難です。 twitter.com/YukiyaMEDICAL/…

2019-03-03 19:02:24
Yukiya Sasaki/佐々木幸哉(精神科医, 製薬) @YukiyaMEDICAL

@chochocho4 以前にも書きましたが、高用量のベンゾを長期服用してる患者さんが転院してきて、「これ、依存性がある薬です。慎重に減らしていきましょう」って説明したら、次回受診時「先生の説明で怖くなって全部止めました」と、けろっとしてる患者さんも少なくありません。そしてそういう方はツイートはしないw

2019-02-28 09:45:04
Yukiya Sasaki/佐々木幸哉(精神科医, 製薬) @YukiyaMEDICAL

断薬クラでは、1000分の1mg単位での減量を提唱する一派もいますが、通常そこまでマニアックになる必要はないでしょう。とはいえ、減量幅は10分の1mg単位を想定していた方がいいと思います。 多分に感覚的になりますが、デパスを1日1mg服用されている患者さんなら、僕ならばまず、0.1mg減量してみます。

2019-03-03 19:02:24
Yukiya Sasaki/佐々木幸哉(精神科医, 製薬) @YukiyaMEDICAL

1週間様子を見て、離脱症状の訴えが無ければ、今度は0.2mg減量します。 離脱症状が出ても軽微で忍容可能な範囲であればもう1週間様子を見ます。 耐えがたい離脱症状が出た場合は、1日1mgに戻して、離脱症状が消失するのを待ちます。 このように、同じ操作に対して、最低3通りの反応と対応がありうる。

2019-03-03 19:02:24
Yukiya Sasaki/佐々木幸哉(精神科医, 製薬) @YukiyaMEDICAL

減量しようとしているBDZがデパスではなくメイラックスだったら、0.1mg減らしてから4週間は様子を見ます。 減薬した薬は、半減期の4~5倍の時間をかけて体内から消失します。 デパスの半減期は6時間。減らした分の0.1mgは1日あれば体内から消失しますから、1週間後には離脱症状の有無を確認できます。

2019-03-03 19:02:25
Yukiya Sasaki/佐々木幸哉(精神科医, 製薬) @YukiyaMEDICAL

対してメイラックスの半減期は122時間。減量分が体内から消失するのに25日かかる計算です。よって離脱症状の有無の判断に減量後4週間空ける必要がある。 BDZ減量をどれくらいの時間的間隔を空けて行うべきかは、このように公表されている各薬剤の薬物動態のデータが一助となります(但し万能に非ず)。

2019-03-03 23:02:51
Yukiya Sasaki/佐々木幸哉(精神科医, 製薬) @YukiyaMEDICAL

先走って漸減法でのBDZ減量について踏み込んでしまいましたが、少し戻って減薬前のお話です。 長期的に考えてBDZは断薬した方がよい、それには時間がかかる――その次に患者さんと合意すべきは、断薬のゴールです。断薬した結果、何が起こるのか・起こらないのか。最初にそれを共有しておく必要がある。

2019-03-03 23:02:51
Yukiya Sasaki/佐々木幸哉(精神科医, 製薬) @YukiyaMEDICAL

断薬の目的は将来的に起こりうる事故の予防であるからです。 多くの場合、断薬によって、現存する何らかの症状が改善するわけではない。 医者側が患者さんを引き継いだ際に処方箋を見て「これはヤバイな」と思って断薬を思い立ったその時、その患者さんはBDZ服用に大きな問題を感じていません。

2019-03-03 23:02:51
Yukiya Sasaki/佐々木幸哉(精神科医, 製薬) @YukiyaMEDICAL

しかも断薬すると、不眠や不安といったBDZの標的「症状」が、再び頭をもたげてきます。 断薬前よりも、断薬後の方が、QOLは落ちるかもしれない。 そのことを予め患者さんに説明し、しかし長期的にはメリットがあるとご納得頂いた上で減・断薬を開始しなければ、あとあと話が拗れるリスクがあります。

2019-03-03 23:02:52
Yukiya Sasaki/佐々木幸哉(精神科医, 製薬) @YukiyaMEDICAL

一般科でBDZが継続処方される場合、恐らくその患者さんに狭義の精神疾患の診断は付かない(本スレッドでの前提)。 寝付きが悪い、更年期なのか苛々しやすくなった――たまさかそれを主治医に相談したら「軽い」眠剤や安定剤を勧められた。 それが全ての始まりだったりします。 twitter.com/Rush_again/sta…

2019-03-03 23:02:52
とある家庭医の振り返り記録 @Rush_again

薬が無いと寝られない身体になってしまった。 信頼するあの先生の薬だから、健康のために毎日飲んでいた。 副作用を知っていたら最初から薬に頼らなかったのに... 睡眠薬を数年きっちり飲み続けた患者さんの言葉です。 知らぬ間に毒を盛るなんてことの無いよう、今一度処方の見直しと丁寧な説明を。 twitter.com/YukiyaMEDICAL/…

2019-03-03 20:21:26
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