[R-18]密採者と自然保護官のいちゃいちゃ

新規約?ペッ。知るかよ! タイポ?すいません…
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帽子男 @alkali_acid

鳥獣を不法に獲るのは密猟 魚貝を不法に獲るのは密漁 じゃあ草木を不法に獲るのは密採…かな? 素人が山で茸とか菜とかとるの昔はゆるかったが、最近は取り締りが厳しい。業者がやるしね。希少植物などになればそれこそ警備も厳しく、命がけの仕事になるね。

2019-03-10 20:45:00
帽子男 @alkali_acid

海藻とってたら自然保護官に射殺されるまである。

2019-03-10 20:45:38
帽子男 @alkali_acid

海藻は、例えばそうだなあ。お肌をつやつやぷりぷりにする成分を含んでいて、乱獲したせいで数が激減。決議の結果、自然保護局が管理することになった。 そんなん養殖すればええやんと思うでしょ。そうよな。俺もそう思う。 でも多分、汽水を湛えた内海の特別な成分の潮のもとでしか育たない。

2019-03-10 20:49:35
帽子男 @alkali_acid

天然ものの海藻は、進んだ生命科学をもってしても複製も改良も難しい何か… 仮に「情報素」とでも呼ぼうか、何かを成長の過程で獲得していくんやな。

2019-03-10 20:51:38
帽子男 @alkali_acid

はい。そういう訳でね。海藻をとったら自然保護官の手で射殺まではある。 あります。 三代前から海藻採りで生計立ててたとしても、不法行為になった以上は別のことせなあかんよ。環境に悪いからね。コーディングでも覚えれば? といって従わない密採者もおるんよなあ。腕がよいやつほどね。

2019-03-10 20:53:28
帽子男 @alkali_acid

両親ともに腕利きの密採者で、海藻とるのをやめなかったせいでどちらも射殺みたいな目にあったせいで孤児になったやつとかもいる。 しょうがないね。立入禁止区域にあった村は移転するはめになり生まれた家も失う。 淡水海の岸辺に杭を打って建てた水上屋だったんだけれどもね。 まあ汚染の源だし。

2019-03-10 20:55:56
帽子男 @alkali_acid

悲しい話やな。悲しい。 つきつめて言えば、自然保護と人間の生活は両立しえない。 自然を保護したければ人間がたちのき、 人間が生活したければ自然はこわれる、 だが密採者の暮らしは自然があるからこそ成り立つともいえる。 自然保護官が活動できるのも人間の生活がもたらす余剰のおかげだ。

2019-03-10 20:58:13
帽子男 @alkali_acid

淡水海の海藻を守る自然保護官は残忍だった。 先の戦争では南の軍人で、バイオインプラントを施して前線に出ていた。 まあだから多分心のどこかが壊れてしまったんだろうな。 鰓を移植した体は溺死の危険もなく、電磁波で同期した変色鮫(カメレオンシャーク)四頭とともに立入禁止区域を巡回した。

2019-03-10 21:02:33
帽子男 @alkali_acid

密採者は水中銃で撃たれればまだいい方で、鮫に八つ裂きなる場合もあった。 もちろん密採者だって軍の横流し品などで武装していたし、ECM、Electronic Confusing Machineなどまで調達していた。 ただこれは北の機械化した兵士上がりには有効だったが、バイオインプラントにあまり効き目がなかった。

2019-03-10 21:08:17
帽子男 @alkali_acid

自然保護官は四頭のカメレオンシャークを駆使して淡水海の海底図形まで作らせ、密採者の潜水艇を発見すると、爆発物をしかけて撃沈することもあった。 沈んだ艇体は今では密採者のむくろとともに漁礁になっている。もっとも立入禁止区域で魚を獲ろうとする不逞の輩も減りつつあるが

2019-03-10 21:23:57
帽子男 @alkali_acid

密採者のあいだに遺恨が生じた。単にお肌つるぷりになる海藻を奪おうとするものと守ろうとするものの争いという以上に、親兄弟の仇を討とうという感情が。 だが皆返り討ちにあった。保護官は強かった。もちろん自然保護局の現場職員は密漁/密猟/密採者に卓越した戦闘力を求められるが。

2019-03-10 21:28:19
帽子男 @alkali_acid

とりわけこの鮫使いは強勢で、容赦がなかった。 荒事に慣れた密採者も死んだり捕まったりすると、残りはひとりふたりと復讐を諦め、家業を捨て、人間の集住地区、いわゆるコロニーへ流れていった。 もはや汽水の香りをかぐこともなく、赤鳥の群が飛び立つ空を見上げることもなく、誇りと銃を捨てて。

2019-03-10 21:31:52
帽子男 @alkali_acid

たった一人を除いては。

2019-03-10 21:32:43
帽子男 @alkali_acid

少年。名前はウルザーンとしようか。 淡水海のほとりの今はなき村で生まれ、幼き日には立ち退きをこばんだ家々が変色鮫に打ち壊されるのを見た。肺を持つ大型魚は四つの目に虚ろな殺意を漲らせ、男達、女達を引き裂いた。 恐怖に屈したほかの密採者が去るなかで、ウルザーンだけは残った。

2019-03-10 21:35:22
帽子男 @alkali_acid

いや厳密には祖母がいた。ある年齢までは。 祖母は淡水海を縦横にめぐる汽水の潮をすべて知っていた。 「お前の両親は、匂いを嗅ぐより、色を見るより、音を聞くより早く、淡水と汽水の流れがどうからみあっているか解ったよ」

2019-03-10 21:37:10
帽子男 @alkali_acid

「俺だって解る」 「お前はまだ耳や目や鼻や記憶に頼ってる。それじゃ鮫は出し抜けない。鮫と同じようにやるんだ」 「人間は鮫じゃない」 「よその人間はね。だけどあたし等、内海(うつみ)の衆はできる。お前の両親はできたよ」 「…そうかな」 少年が両頬を掌の底で支えると、老婆は耳をほじった。

2019-03-10 21:41:12
帽子男 @alkali_acid

「そうともさ」 ウルザーンは年ふりた師の指図のままに淡水と汽水のあいだをくぐり、泳ぎと潜りとを学び、貝と魚と水鳥を捕え、捌く術を覚えた。 「ばあちゃん。銃の使い方も教えてよ」 「まだ早い。お前は狩る側じゃなく駆られる側だからね」 「なんだよ。俺だってもう沢山獲物を」 「銃を持つと」

2019-03-10 21:44:23
帽子男 @alkali_acid

「気が大きくなる。自分が無敵のような気がしてくる。誰だってやっつけられる怪物だってさ」 「そんなことない」 「あるんだよ。だけどね。お前は怪物なんかじゃない。怪物はむこうさ。あの鮫や自然保護官の方だ。戦ったって勝てない。逃げ、隠れ、息をひそめてやりすごす。そのやり方を覚えるんだ」

2019-03-10 21:45:44
帽子男 @alkali_acid

そのくせ祖母は水中銃を手放さなかった。 「あたしはいいんだよ。歳だからね」 「ずりい」 「ずるくていいんだよ。歳だからね」

2019-03-10 21:46:58
帽子男 @alkali_acid

ウルザーンは祖母から淡水海に関する一切を教わった。 移入種のカメレオンシャークほどではないが、獰猛な棘鰭河馬や、赤鳥の中に混じる危険な毒の羽矢を持つ青鳥のことも。 祖母はあらゆる危険を避ける方法を心得ているようだった。 「お前の両親を鍛えたのはあたしだからね」 「うん」

2019-03-10 21:50:27
帽子男 @alkali_acid

だが結局は百戦錬磨の老婆も自然保護官にはかなわなかった。 ウルザーンは見た。葦の浮島に伏して、葉泥にまみれ、半ば意識を失ったまま。 祖母の船が転覆し、痩せこけ少し背の曲がった体を鮫のあぎとがとらえ、空中高く差し上げるのを。

2019-03-10 21:52:32
帽子男 @alkali_acid

すぐそばに光学迷彩を解いた無音ホバークラフトが出現した。 甲板には小柄な男が立っていた。手には新型の水中銃を携えて。 「お前で最後だ密採者」 「水底の地獄へ落ちな」 「これでようやくここは綺麗な海の戻る。私の海に」 「地獄の番人があんたの薄汚い腸で飾りを作るよ」

2019-03-10 21:55:56
帽子男 @alkali_acid

次の瞬間。 祖母の額には小さな銛が生え、続いて熟しすぎた瓜酸漿(ウリホウズキ)のように炸裂した。 「姉妹よ。我慢させてすまなかったな。あとは平らげていい。たいしてうまくもなかろうが」 カメレオンシャークが残骸を貪り食った。

2019-03-10 21:58:18
帽子男 @alkali_acid

親族の最期を見届けてウルザーンは気を失った。死のようなまどろみのうちに、未熟な心には石のように凝った部分ができた。もっと幼かったころに両親を失った際、すでに種のように生じていた憎悪の周囲に怨嗟が結晶し、強い殺意となった。

2019-03-10 22:01:05
帽子男 @alkali_acid

少年は目覚めると、淡水海のほとりを去った。はるか北、集住地域への移入許可を待つキャンプに潜り込むと、同郷の人々をあたった。目的は武器だ。 「銃をくれよ。どうせコロニーにはもってけないだろ」 「だめだ。売れば金になる。向こうでの暮らしには必要だ」 「くれなきゃ密告してやる」

2019-03-10 22:03:54