RS-ATCの基本解説

先日長野新幹線の軽井沢〜佐久平間での停電に伴う、な下り列車の上り線逆走時に使用したRS-ATCシステムの解説をしています。 中身を見ると、まもなく東京メトロ丸ノ内線に採用させるCBTCに近いと思われる方もおられるかもしれません。
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ふとんや(二条機関区所属) @dc282466

ではご希望にお応えして、今から解説して行きます。 RS-ATC(無線式ATC) 対象路線はJR東日本管轄の全新幹線、北海道新幹線、西日本管轄の北陸新幹線 通信方法はLCXを用いたデジタル列車無線を活用。 概要図は以下の通りです。 pic.twitter.com/VaPgr9qPRQ

2018-12-09 21:55:54
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ふとんや(二条機関区所属) @dc282466

これまで採用されていた代用保安方式は、対向列車の誤出発防止や逆線走行中の列車に対する速度制御などをシステムの制御ではなく、人の注意点に頼っていた。その為、停止信号の冒進もあり得る状態であった。 これを解消することと、将来的には新幹線の無線制御を行う実績作りとして立上げた。

2018-12-09 22:01:12

訂正 注意点→注意力

ふとんや(二条機関区所属) @dc282466

また、駅間の閉塞確保は従来の代用保安方式で用いていた車軸検知装置によるチェックインアウト方式をそのまま流用。また自列車の位置をDS-ATC同様列車自身で認識して、その情報をデジタル列車無線で送受信しているので、安全性は高い。

2018-12-09 22:06:22
ふとんや(二条機関区所属) @dc282466

これによって、駅間の軌道回路による検知は不要となる。但し、駅構内は従来通り軌道回路による位置検知を行う。また、列車から地上に送信する電文には列車番号も含まれているので、これを用いて駅のPRCが進路制御を行う。

2018-12-09 22:19:55
ふとんや(二条機関区所属) @dc282466

これを用いて、RS-ATCによる列車位置検知とDS-ATCによる列車検知を常時比較して両者の相違がないことを確認している。将来的な本線向けの無線式ATCの第一ステップとしてサンプリングを行なっている。

2018-12-09 22:23:22
ふとんや(二条機関区所属) @dc282466

また、E5系はやぶさの運転開始に合わせて列車の列車番号送信を従来の車上子→地上子からデジタル列車無線を用いた方式に変更しており、この技術もRS-ATCから派生している。

2018-12-09 22:25:13
ふとんや(二条機関区所属) @dc282466

地上側の設備としては各連動駅に方向てこを設置して指令からの操作も可能としている。また、無線制御部から列車の停止点情報を送信している。但し停止点についてはDS-ATC同様車上データベースに依存する為、軌道回路単位となっている。送信する電文は無線ATC電文と呼ばれている。

2018-12-09 22:34:22
ふとんや(二条機関区所属) @dc282466

一方車両側はDS-ATC同様、速度発電機の信号と位置補正用トランスポンダ地上子で自列車の位置を連続して認識する。なお立上げ時はレールからDS-ATC電文から自列車の位置を認識する。その為駅間での再立上げは、自列車の位置認識が困難となるので、不可能である。

2018-12-09 22:38:27
ふとんや(二条機関区所属) @dc282466

列車のパターンは独自に逆線用パターンを保有しているが、順線についてはDS-ATCのデータベース(以外DBと略します)をそのまま流用している。なお、短絡型の列車防護スイッチが無効になる関係で両方向とも最高速度は110キロまでとなっている。信号現示はDS-ATCと共用にしている。

2018-12-09 22:44:27
ふとんや(二条機関区所属) @dc282466

ではここからお待ちかねの取扱を説明します。逆走時の流れは以下の通り 1.該当する列車は車上切替スイッチで、常用モードから無線ATCに切替を行う。(写真上の1) 2.レールからのDS-ATC電文を受信することで初期位置を確定する。(写真下の2) pic.twitter.com/DmDStyMJEn

2018-12-09 22:51:55
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ふとんや(二条機関区所属) @dc282466

3.指令員は駅間の開通を確認してから方向てこを逆線側に扱い、その後発駅の無線出発進路と着駅の無線場内進路を反位に設定する。この時、駅側の連動・ATC論理部で進路の確保と開通確認を行っている。問題がなければ、無線ATC電文を無線論理部から列車に送信する。(写真上の3) pic.twitter.com/o2upffqG4N

2018-12-09 23:01:25
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ふとんや(二条機関区所属) @dc282466

4.受信した列車はこの電文受信を以ってパターンを設定して、出発する。駅間は無線ATCのパターンに従う。なお、軌道回路のDS-ATC信号は原則初期立上げ後は受信しないが、駅で設置されている添線式軌道回路の03信号は受信して緊急停止する。(写真中の4) pic.twitter.com/TQ6r35lnff

2018-12-09 23:06:56
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ふとんや(二条機関区所属) @dc282466

5.到着は次駅の車軸検知器と軌道回路で検知する。列車進入が完了したら、指令員は方向てこを復位する。駅の連動・ATC論理部は駅間の開通を確認して方向の復位を行う。(写真中の5) 6.運転士は車上切替スイッチを無線ATCモードから常用モードに戻して完了となる(写真下の6) pic.twitter.com/pH1J6SMyor

2018-12-09 23:12:01
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ふとんや(二条機関区所属) @dc282466

なお、順線方向時は方向てこの扱いがない以外は共通の扱いとなっています。 このRS-ATCは2009年9月から先行で列車番号送受信機能を、残りの機能は2010年4月から使用開始となりました。初の運行となったのは2010年9月に白石蔵王〜仙台で支障物撤去作業によって上り列車が下り線を逆線走行した時。

2018-12-09 23:19:06
ふとんや(二条機関区所属) @dc282466

なお、盛岡〜八戸は当初導入されていなかったものの、後に追設されている(時期は未確認です) 以上でRS-ATCの解説を終わります。御質問等がありましたら、ご遠慮なく。可能な限りお答えします。

2018-12-09 23:21:24
ふとんや(二条機関区所属) @dc282466

(追記) 北海道新幹線の共用区間に入線しているEH800及び四季島(E001)も逆線走行に備えてRS-ATCを装備しています。なお、トランスポンダ地上子の位置がズレるので両方向とも対応できるように、車上子をそれぞれの方向に装備しています。

2018-12-09 23:38:33