ア・デッカーガン・イズ・マイ・パスポート ＃１

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

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国家崩壊後の10年、暗黒メガコーポの進出に伴う社会の混沌のなかで、街区の名をそのまま残した地域はさほど多くない。トコシマはそうした例外のひとつだ。トコシマはもともと犯罪指数の低い穏やかな街であり、警察解体後もマッポやデッカーはその地に残り、市民の支援のもとでシェリフとなった。1

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混迷の度合いを深めるネオサイタマにおいて、それでもトコシマは奥ゆかしさを忘れない街でありつづけた。一年。三年。五年。十年。……つまり、少なくとも、つい数十日前までは。　2

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ニンジャスレイヤー　エイジ・オブ・マッポーカリプス　プレシーズンエピソード【ア・デッカーガン・イズ・マイ・パスポート】#1

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「ビョウキしてからタバコも止めてな」「ハイ」「言っとくが俺はな。実際健康になっちまった」「デスネ」「お前、そう思うか」「いや、わかりません」「あのな。健康なワケあるかよ。脳梗塞だぞ」「デスネ」彼は相棒を睨み、サイバネ化した左腕で、サイバネ化した左目を示した。「な」「デスネ」　3

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「まあ、そのてん僕は健康なものですけどね。視界同期」タバタはサイバーサングラスのこめかみ部分を操作。「視界同期」シンゴは左目のサイバネアイをそのまま同期させる。これで彼らの視界左上に互いの見ているものが映し出される。「僕も遅かれ早かれサイバネティクスになるかもですよ。怪我で」4

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「そのナメたクチをこんなに長いこと聞くことになるとは思わなかったぜ、俺もな」「まあアレです、生きてる証拠ですよ」タバタは言った。「健康って何の話でしたっけ？」「タバコ止めたんだよ。言われてよ」と、シンゴ。「おかげで肺もキレイだ」「よかったじゃないですか」「唯一のよかった事だ」　5

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「僕は出来るだけ生身でい続けたいと思いますね」「実際サイバネの人間に、面と向かってそういう事を言う奴だよな」「信頼関係がありますからね」二人は無駄口をたたきながらハンドサインをかわし、色あせたウキヨエ石畳の街路を二手にわかれた。　6

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「安い、安い、実際安い」「オタノシミノ……オタノシミノ」「貴方！これ買えば売れます」中立広告ツェッペリンが上空をゆっくりと移動してゆく。シンゴは「パーラー」と書かれた個人店を通り過ぎ、その隣の「セカンドハンズ」と書かれた店に入っていった。　7

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ブリスターパック入りのコケシ、瓶詰のケムシIC、「低脂肪」と書かれた栄養ブリック、廃版のプラモデル箱などが所狭しと積まれた店内。レジカウンターで肘をつき、俯いてサイバーシーシャに興じている男が店主だ。「ドーモ」シンゴは口だけ歪めて笑った。「アポ要るよ。アポどなた」「アポ？」　8

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シンゴは頭を掻いた。店主は無関心にサイバーシーシャに興じた。シンゴは……左腕を閃かせ、カウンターに置かれた店主の腕にドス・ダガーを突き刺し、縫い付けた！「アバーッ！」店主はシーシャを取り落とし悲鳴を上げる！「アイエエエ狂人！」シンゴは凄む！「アポだァ？アポは"ンズ・デイ"だ！」　9

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「ンズ・デイ」の名前を耳にした途端、店主の動揺はさらに激しくなった。「知らない！誰ですか、そんな！」「ああそうかよ！」シンゴはドス・ダガーを捩じり込んだ！「アイエエエエ！」店主は悲鳴を上げ、身を引いた。縫われた腕がいともたやすく脱落した。サイバネティクスだ！分離点は銃口！　10

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BLAMN！店主の腕が火を噴き、店の柱時計が爆発した。シンゴはこの反撃も予期しており、身を傾げてこの銃撃アンブッシュを回避した。彼は既にドスから手を離しており……かわりに抜き放っていたのはデッカーガンである！BLAMN！「グワーッ！」店主は肩口に被弾！シンゴはカウンターに跳び上がる！　11

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「死ね！シェリフ！死ね！」店主は後ろに倒れ込みながら服をまくり上げた。腹からミニガンが迫り出した。しかしシンゴは既にカウンターからさらに跳んでいた！「イヤーッ！」「グワーッ！」跳び蹴りが店主の顔面を直撃する！店主は倒れ込み、転がり、後ずさりしながらミニガンで銃撃！「死ね！」　12

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「おいヤメロ！」「うるせェーッ！」BRRRRTTTTT！ミニガンが火を噴いた！シンゴはあわれハチの巣……とはならず、耐えた！袖が破れて剥き出しになった左上腕、格納されていた薄く強靭なシールドが展開して、弾丸を防いだのである！「畜生め！」BLAM！盾越しにシンゴはデッカーガンを撃つ！　13

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ガキン！ミニガン駆動部に弾丸が撃ち込まれ、暴発する！「グワーッ！」「だからヤメロって言ったんだ、クソめ！」シンゴが罵った。「それに俺はトコシマ・シェリフじゃねえ。シンゴ社の社長だ俺は！」「アイエエエエ！」傷ついた店主が裏口から路地へ飛び出す！だが！「グワーッ！？」　14

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待ち構えたタバタが店主の首を抱え込み、うつ伏せに倒して押さえつけたのである！「ハイ、お疲れ様」「いいぞ副社長！」ドカドカと物を蹴飛ばしながらシンゴが路地に出て来た。「従業員いないじゃないですか」「確保！」腕時計を見ながらシンゴは言った。「時刻……要らんか、これは」「デスネ」　15

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「畜生！俺は無実の市民だ」店主が騒いだ。シンゴが顔をしかめた。「フルタ・セカンドハンズのオヤジとだいぶ顔が違うぜ、お前」「息子だ」「オヤジに息子は居ねえ」「よくある事だ畜生！」「ああそうか」シンゴはタバタを見た。「それよりお前見たか？コイツの物騒なサイバネをよ」「見ましたよ」　16

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「何だお前？腹にミニガンってのは、この野郎」シンゴは店主の脇腹を蹴った。「しゅ、趣味だ」「趣味の店か」「そうとも！」「趣味で重サイバネ手術を斡旋か？ンズ・デイの名前を俺が知ってる、その時点で諦めろ」「……」「ツラの皮の厚い野郎だなお前も。手術でふてぶてしさも身に着けたか？」17

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「絶対にネタは話さんぞ」「知る方法は色々ある」「アバーッ！痛い！痛てェ！」タバタは締め上げる力を更に強める！「アババーッ！」店主は痙攣！シンゴは懐に手を入れ、タバコがわりのハッカ・キャンディを取り出して口に入れた。「ちなみにそれは方法に入らんからな」「アババーッ！」　18

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「実際ショックですよ」もがく店主を締め上げながら、タバタがシンゴに言った。「こんな街じゃないのに」「シェリフの奴らはちゃんとやってる。多分な」シンゴは言った。「だが兵器汚染となりゃ連中には荷が重い。たまには古巣の為に一肌脱ごうや」「デスネ」　19

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シンゴはバリバリと飴を噛み砕く。「……ア、シンゴ＝サン、ストップ」店主を締め上げながら、タバタが言った。「そのまま、貴方の視界の、エート、地面、そう、しゃがんでください、そうそう……それ」「おう」「キラッとしたんで。何ですそれ」「バッヂだな」シンゴは顔をしかめた。クロスカタナ。20

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「アーン！」薄暗く、ジャンクが所狭しと積まれた一室、バニーオイランが画面の中で煽情的なポーズを取った。ミンチョ文字が流れる。「２分以内に入金すれば95％割引ドスエ」「……」タキはベルトを外しながら素早いキータイプを始める。ブガー。タキはびくりとなる。ブガー。ブガー！「ンだよ！」　22

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ブガー！ブガー！ブガー！激しい呼び出し音だ！「クソが！こちとらリサーチ中なんだよ！」ブガー！ブガー！ブガー！「消音」とタイプしようとした彼は、一瞬迷ってから、「応答」を選択した。「モシモシ。こちらピザタキ。本日閉店」玄関にはスーツ姿の女が映っている。「閉店だぞォ」繰り返した。　23