【書き起こし】「依存症をめぐり注目される『ハームリダクション』とは何か」松本俊彦×古藤吾郎×みなみおさむ×荻上チキ▼2018年12月18日(火)放送分#ss954
【書き起こし】「依存症をめぐり注目される『ハームリダクション』とは何か」松本俊彦×古藤吾郎×みなみおさむ×荻上チキ▼2018年12月18日(火)放送分 tbsradio.jp/324189 #ss954 ※一部ケバ取り・整文あり これより連投。
2019-03-19 21:25:05南部広美さん:「依存症を巡り注目される『ハームリダクション』とは何か」。Session22ではこれまで薬物やギャンブル・アルコールなど様々な依存症について取り上げてきました。特に薬物については、芸能人やスポーツ選手などの薬物問題に関する報道やドラマでの表現など、
2019-03-19 21:25:05メディアの取り上げ方の中には依存症への差別や誤解を助長し、依存症治療を妨げているものが少なくないとして、その問題点を指摘。昨年1月には、専門家やリスナーと共に番組内で薬物報道ガイドラインを作成し、その回はギャラクシー賞ラジオ部門の大賞も受賞しました。
2019-03-19 21:25:05こうした中で依存症への注目すべきアプローチとして、番組内でも度々出てきたのが「ハームリダクション」という考え方です。処罰をより厳しくする厳罰主義などとは大きく異なり、健康や社会に与える害を実質的に減らし、依存症患者への治療や支援に重きを置くハームリダクション。
2019-03-19 21:25:05この理念に基づく薬物対策は既に欧米各国などで採用され、成果を上げてきています。そこで今夜は、日本ではまだまだ馴染みの薄いハームリダクションについて、一体どのようなものなのか、その理念と実態について、薬物問題を題材にいち早く取り入れている海外の事例などを基に、理解を深めていきます。
2019-03-19 21:25:06では、今夜のゲストをご紹介します。国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所薬物依存研究部部長の松本俊彦さんです。よろしくお願いいたします。 松本俊彦さん:よろしくお願いします。
2019-03-19 21:25:06南:そしてNPO法人アジア太平洋地域アディクション研究所のソーシャルワーカーで、精神保健福祉士の古藤吾郎さんです。よろしくお願いいたします。 古藤吾郎さん:よろしくお願いいたします。
2019-03-19 21:25:06荻上チキさん:お二人はですね、ハームリダクションについてお書きになった本『ハームリダクションとは何か 薬物問題に対するある一つの社会的選択』(chugaiigaku.jp/item/detail.ph…)の編著者で共著者でもあるわけですね。なおこの本は僕が帯を書かせていただいていて、
2019-03-19 21:25:07以前その現物を送られてきてびっくりしたのですけれども、著者のお二人の名前より僕の名前が大きくて、表紙を見て「僕の本みたいだ」って。ちょっと驚きなんですけれど。しかも眼鏡のイラストまで載っていますよね。
2019-03-19 21:25:07すごく大事な本で、Twitterでも「ハームリダクションって聞いたことない」とか「カタカナってやっぱり慣れないな」というふうに思われる方も多いと思うのですが、これから薬物依存だけではなく、さまざまな依存症や本人の健康状態を改善するためのアプローチとして、
2019-03-19 21:25:07もっともっと耳にする機会が増えていく概念だと思うのですね。まず古藤さん、ハームリダクションとはどういった概念なのか、改めて教えてください。
2019-03-19 21:25:08古:このことを取り上げていただいて本当に光栄ですし、関心を持って聞いてくださっている方がいるのかと思うと本当にうれしいです。ハームリダクションは英語なのですけれども、ハーム(harm)というのは害・ダメージ・悪影響といった意味で、
2019-03-19 21:33:30それをリダクション(reduction)・減らすという意味になります。これが薬物の中で使われているというのは、つまりドラッグを使う中でさまざまな害が起き得る、それが健康や社会的なもの、経済的なものであって、それをどうやって減らそうとするのかというものなのですね。
2019-03-19 21:33:30なので、使う薬物の量そのものを減らすということにはこだわらずに、あくまでもそれを使うことによって起きる様々な悪影響をどうやって減らしていくのかということで、それは違法であるかどうかに関係がなく、
2019-03-19 21:33:31そういったものを減らしていくための政策・プログラム・実践というのがその意味なのですけれど、いきなりドン引きしてしまいますかね?意味が伝わりますでしょうか?
2019-03-19 21:33:31荻:大丈夫ですよ。ハームリダクション、害を減らす。だから通常薬の話であるとか、他の依存症の話でも、使うのをやめることが一番の害をなくすことでしょう?という発想があると思うのですが、例えば薬物使用に関しては注射の回し打ちによって感染症になってしまったり、
2019-03-19 21:33:31ギャンブルなどもそうですが会を重ねることによってお金がなくなってしまうなど、そうしたさまざまな害が出てくることを減らしていきましょうと。だから健康へのアプローチだけではなくて、経済面や社会面などいろいろな害悪、つまりハームをリダクション、減らしていくために、
2019-03-19 21:33:32医療的にそしてケア的に対策していくという概念になるわけですよね。松本さん、ハームリダクションというのは、プログラム名というよりは考え方と言った方がいいのでしょうか? 松:そうですね。公衆衛生政策の一つの理念というふうに考えていいかと思います。
2019-03-19 21:33:32荻:Twitterでも「適切な日本語訳があるといいな。カタカナ難しい」という話があるのですが、公式な訳はまだないのですかね? 松:ないですね。
2019-03-19 21:33:33古:今回日本の5カ年戦略が8月に出たのですけど、その中でも政府がハームリダクションとカタカナで表記しましたので、このまま公的にいくのかなという印象がありますね。
2019-03-19 21:33:33荻:あえて分かりやすく言うと、既存の薬物依存症などへの対策というのは、厳罰主義というか、刑罰でペナルティを与えましょうと。それをまず治療というモデルに変えていきましょうね、という話にシフトしていますよね。で、プラスそれが一気に断薬といったことではなくて、
2019-03-19 21:39:24本人に寄り添って段階的にやっていくと。だからある意味では段階的治療モデルでありつつ、なおかつそれが薬物の不使用に決してこだわるわけではなくて、本人の健康を、あるいは社会の改善を第一にする。このあたりがポイントになってくるわけですね。
2019-03-19 21:39:24いろいろなものを含んでいるから、なかなか「この訳だ」というのは難しいのですが、今言ったようなものが含まれている概念だと思ってほしいですね。古藤さん、ハームリダクションはいつごろ生まれた概念なのでしょうか?
2019-03-19 21:39:25古:諸説ある、と言ったら変ですけれども、何を持ってハームリダクションにするか幅広い中で、例えば1920年代ぐらいにイギリスでは、処罰するのではなくて政策の中で治療していこうということが始まっていたということが書かれている本もありますし、
2019-03-19 21:39:25'60年代・'70年代になってくると欧米でヘロインというドラッグの代わりに麻薬を処方するというプログラムが始まっています。ただ、ハームリダクションという考え方がよく知られるようになったのは、'80年代以降にHIVや肝炎などが、
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