辻仁成Twitter小説『つぶやく人々』第一部まとめ

4/8に第一部が終了したようです。作者の妻は中山美穂さん。 辻仁成 - Wikipedia http://bit.ly/BC309 区切り毎に色分けしてあります。入り組んでいるので別まとめにもしています。 『つぶやく人々』110まで(赤) http://togetter.com/li/8454 続きを読む
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辻仁成 @TsujiHitonari

チュイッタ~で小説書いたら、どうなるだろう。

2010-03-05 03:02:50
辻仁成 @TsujiHitonari

ツイッター不定期連載小説「つぶやく人々」第一回:ちぇ、つまんねえ、人生最悪。その時、俺は思わずつぶやいちまった。ところが、気まずいことにそのつぶやきを妻に聞かれてしまう。どういう意味よ、妻が言う。ただのつぶやきじゃん、と俺は返す。疑う目で妻は俺を見つめてやがる。まいったね。つづく

2010-03-05 23:46:37
辻仁成 @TsujiHitonari

不定期連載小説「つぶやく人々」第二回:妻は腕組みをし「仕事してるのかと思いきや、またツイッター」と吐き捨てた。「小説家がつぶやいたら、おしまいでしょ?ただでさえ本が売れない時代なのに、あんたにはプライドとかないの? ないよ、とつぶやきかけて、俺は思わず口を手で塞いでしまう。つづく

2010-03-06 04:22:46
辻仁成 @TsujiHitonari

ツイッター連載小説「つぶやく人々」第3回:「あんたそんなにぼやきたいことがあるの?」妻がにじり寄って吐き捨てる。俺は後ずさりしながら、おい、ぼやきとつぶやきを一緒にする奴があるか。つぶやくというのはもっと高尚で孤高な行為だ、と反論する。妻が俺の顔を指さしゲラゲラ笑いだした。つづく

2010-03-06 07:08:50
辻仁成 @TsujiHitonari

ツイッター小説「つぶやく人々」第4回:締め切りどうするのよ? 女性自身の斎藤さんからさっき電話あって、締め切り二日過ぎてるって。何しているのかと思って覗きにきたら、ツイッター。嗚呼、まさか、あんたツイッターで小説とか書いてないでしょうね。作家がタダで小説配ってどうするのよ。つづく

2010-03-06 07:25:55
辻仁成 @TsujiHitonari

ツイッター小説「つぶやく人々」第5回:でも、フォローされているんだ、と俺は思わず反論してしまう。妻は「誰があんたのフォローなんかするのよ」と怒鳴った。くそ、ツイッター知らない奴とじゃ喧嘩にもなりゃしない。俺はパソコンを指さし、今現在2566人、と叫んでしまった。まいったね。つづく

2010-03-06 15:57:32
辻仁成 @TsujiHitonari

ツイッター小説「つぶやく人々」第6回:「その2566人のフォロワーがあんたの小説買ってくれるわけ?」妻が素早く計算する。「それはないでしょ」と俺が苦笑し肩を竦めると、妻は切れ、ドアを蹴り上げた。寝ていた愚息6歳が起きてきて「母ちゃんひもじい」と泣きだす。くそ、フォローミー!つづく

2010-03-06 16:06:51
辻仁成 @TsujiHitonari

ツイッター小説「つぶやく人々」第7回:「いい年こいてラウドロック?頭振りすぎて手術までしちゃってさ、命がけ?くだらない映画撮るし、その上、ツイッターってか?あは、ばかじゃないの?作家は小説だけ書いてりゃいいのよ、金になる甘ったるい恋愛小説書いてなさい。ねえ、離婚したろか?」つづく

2010-03-06 18:05:33
辻仁成 @TsujiHitonari

ツイッター小説「つぶやく人々」第8回:「ちょっと待て、落ち着け!」と俺は興奮する妻を止めた。「俺はただつぶやいてるだけだろ。何の問題がある?」妻は話にならないという顔をして横を向いてしまう。愚息が俺の服を引っ張る。「父ちゃんひもじいよー」くそ、なんてこった。フォローミー!つづく

2010-03-06 18:14:22
辻仁成 @TsujiHitonari

ツイッター小説「つぶやく人々」第9回:「誰かへのメッセージなんてもう古いんだよ。時代はつぶやき。お前に分かるか?応答してくださいなんて言ってちゃ駄目なんだよ。みんな勝手につぶやいて、どっか行っちゃう、この世界が俺はいとしい。言いたいこと言い散らかして消えちゃう奴らが新しい」つづく

2010-03-06 18:19:34
辻仁成 @TsujiHitonari

ツイッター小説「つぶやく人々」第10回:「新しけりゃいいのかよ!」妻が怒鳴って本棚をひっくり返した。つづく

2010-03-06 18:28:08
辻仁成 @TsujiHitonari

ツイッター小説「つぶやく人々」破壊された仕事部屋に佇み、俺は俺を囲むこの世界の惨状を眺める。まるで大地震だ。愚息は泣くし、妻は切れるし、食糧はなし。頭の手術から二カ月、俺の中で何かが変化していた。変化の渦の中で俺は世界と対峙していた。もっと真剣につぶやかなければ、と思った。つづく

2010-03-06 18:36:30
辻仁成 @TsujiHitonari

ツイッター小説「つぶやく人々」第12回:妻は本の瓦礫の中にしゃがみ込み放心している。愚息は泣き疲れて再び眠った。俺はと言えば、ツイッターが気になってしょうがない。日本の携帯がなったので出ると、女性自身の斎藤からであった。「締め切り」と声がしたので、慌てて閉じた。まいったね。つづく

2010-03-06 19:18:22
辻仁成 @TsujiHitonari

ツイッター小説「つぶやく人々」第13回:「あなた、愛はどこへ行ったの?」妻がどことは言えない場所を眺め、つぶやいた。俺は心の中で、やった、と叫んだ。あの妻がやっとつぶやいてくれた。人間はつぶやくとき、本当のことを口にするものだ。だから俺はつぶやく人々を信じる。フォローミー!つづく

2010-03-06 19:22:32
辻仁成 @TsujiHitonari

ツイッター小説「つぶやく人々」第14回:「パリに渡る前のあなたの情熱が懐かしい」再び妻がつぶやく。おっと、このつぶやきも本音ということか。「いや、愛が深まったってことじゃねえのか?」俺が返す。「愛が終わったんじゃないの」妻が振り返って睨んだので、俺は慌てて視線をそらした。つづく

2010-03-06 19:34:22
辻仁成 @TsujiHitonari

ツイッター小説「つぶやく人々」第15回:「あなたを信じてこんな遠くまで来たのに、ツイッター」妻が嘆いた。嘆くのとつぶやくのとでは大きく意味が違う。人生嘆いちゃ駄目だ。つぶやきなさい。思わず俺はつぶやいてしまう。「なんて言ったの?聞こえないわ」妻が立ちあがって俺ににじり寄る。つづく

2010-03-06 19:40:33
辻仁成 @TsujiHitonari

ツイッター小説「つぶやく人々」第16回:俺は思わず後ずさりした。その時、仕事机のパソコンに目がとまる。「うあ、見ろ、三千人を超えてる!」大きな声を出したので寝ていた愚息6歳が起きてしまう。「昼ごはん前は2566人だったのに!」妻と愚息がパソコンを覗き込んだ。「3086人だ」つづく

2010-03-06 21:48:39
辻仁成 @TsujiHitonari

ツイッター小説「つぶやく人々」第17回:「どういうこと?」妻が言った。「だから、おれのつぶやきを3086人がフォローしているってことさ。まだツイッターはじめて48時間しかたってないのに。すごい。おい、これがツイッターの実力だ。つぶやきが世界を駆け巡るんだ。フォローミー!」つづく

2010-03-06 21:56:19
辻仁成 @TsujiHitonari

ツイッター小説「つぶやく人々」第18回:「あ、父ちゃん、また人が増えたよ」「3090人だ!ひゃっほー、フォローミー!」笑う愚息、妻は椅子に腰を下ろした。「ねえ、つぶやく人々、というのがタイトル?」有頂天の俺は、おお、そうよ、と自慢した。「締め切り無視してこれ書いてたのね」つづく

2010-03-06 22:04:36
辻仁成 @TsujiHitonari

ツイッター小説「つぶやく人々」第19回:みるみる妻の顔がこわばった。「あんたって人は、本当にどうしようもない与太公ね。こんなことで文学が守れるの?」「いや、これも純然たる小説で、確かに原稿料とかないけど、でも、俺は書きたいという強い衝撃と意志でこれに打ちこんでるんだよ」つづく

2010-03-06 22:11:06
辻仁成 @TsujiHitonari

ツイッター小説「つぶやく人々」第20回:妻の言い分も理解出来る。でも、これだけははっきりさせておく必要があった。「プロになる前の俺は、ただ、書きたかったから書いてた。あの頃の俺が今ここにいるんだよ。分かるか?この小説は自発的に生まれて、読まれている。俺の純粋な心が書いてる」つづく

2010-03-06 22:18:53
辻仁成 @TsujiHitonari

ツイッター小説「つぶやく人々」第21回:「ZAMZAを始めたのも同じよ。俺が50歳になったから落ち着きましたってバラード歌うわけにゃいかない。ヘッドバンキングしすぎて頭手術してるくらいが丁度いい。俺みてえな変人がいた方がおもしれえだろ?俺はな純粋へ向かってんだよ。命がけで」つづく

2010-03-06 22:27:39
辻仁成 @TsujiHitonari

ツイッター小説「つぶやく人々」第22回:「話をはぐらかさないで!」妻が強く遮った。愚息が「でも、父ちゃんのバンド好きだよ」とつぶやいた。俺は息子を笑いながら指さした。みろ、人は本音を言う時、つぶやくもんだ。「金とか名誉は二の次でいい。だから、書かせてくれ。ツイッター小説!」つづく

2010-03-06 22:33:05
辻仁成 @TsujiHitonari

ツイッター小説「つぶやく人々」第23回:「だから文学はどうするの?ツイッターに文学は守れるの?」妻は顔を真っ赤にして抗議する。「いや、俺は俺の文学を守るって言ったまでで、文壇を守るつもりはないよ「言い訳よ、今更、守りなさいよ、え!」「父ちゃん、ひもじいよー」まいったね。つづく

2010-03-06 23:39:30
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