知識より観察 「すいえんさー」から学ぶアクティブ・ラーニング

アクティブ・ラーニングはどうしたらよいか分からない人が多いと思う。「すいえんさー」の大学対決は、格好の材料だ。
43
shinshinohara @ShinShinohara

「アクティブ・ラーニング」最高の教材と思えるのが、Eテレの「すいえんさー」大学対決編。アイドルを目指す女の子たちが、東大、京大などの名だたる大学生たちを打ち負かした。もう数年前になる特番だったが、ぜひ再放送してほしい。できれば繰り返し放映してほしい(負けた学生はかわいそうだが)。

2019-03-27 10:13:03
shinshinohara @ShinShinohara

なぜ女の子たちは、知識の豊富な大学生たちに勝ったのだろうか?それは、「観察」だと思われる。 二階から紙を落として、滞空時間を競うという競技。京大生は豊富な知識を駆使し、構想を自慢しあい、いきなり工作を始めた。 すいえんさーガールは、何の構想もない。とりあえず紙を落としてみた。

2019-03-27 10:19:52
shinshinohara @ShinShinohara

すると、地面に水平の姿勢の時は滞空してるのに、翻って縦になると、急速落下することに気が付いた。「翻らずに水平姿勢を維持できれば、滞空するのでは」という仮説に気が付いた。翻りさえなければよい。その単純な開発目標でできたものは、なんと角を折っただけというもの。

2019-03-27 10:25:31
shinshinohara @ShinShinohara

京大生は、羽のある種子やUFOのような形など、技巧を凝らした紙細工を開発した。落下するときの姿は興味深かったが、比較的速やかに落下。他方、すいえんさーガールの作った、いや、作ったなどともいえない、角を折っただけの紙は、驚異の滞空時間を誇った。

2019-03-27 10:28:35
shinshinohara @ShinShinohara

東大生との対決は直接見ていないが、これも大変興味深い。A4の紙で橋を作り、どれだけの重量物を支えられるかという競技。 東大生は建築学の知識を駆使し、力を分散させる、技巧の粋を尽くした構造物を作り上げた。

2019-03-27 10:32:10
shinshinohara @ShinShinohara

かたや、すいえんさーガール。何の構想もない。とりあえずめいめいに、紙を折ってみた。すると、きつく巻いた紙は非常に丈夫な棒になることに気が付いた。その棒を使って試行錯誤を重ねるうち、東大生を圧倒する結果を出し、勝利。

2019-03-27 10:34:53
shinshinohara @ShinShinohara

知識の豊富な東大生、京大生はなぜ敗れたのだろう?すいえんさーガールは、何の知識もなかったのに、なぜ勝てたのだろう? 私が思うに、前者は「観察」を軽んじ、後者は「観察」を軸に据えたことが、大きな違いとなったのだろう。

2019-03-27 10:37:17
shinshinohara @ShinShinohara

京大生は、航空力学や生物学の知識が豊富であったが、彼らは「落下」という現象をろくに観察しようとしなかった。知識を形にすることにこだわり、目の前の現象を観察し、学ぶことを怠った。

2019-03-27 10:40:00
shinshinohara @ShinShinohara

他方、すいえんさーガールは、知識も構想もないがゆえに、まずはA4の紙のまま落として、「落ちる」という現象を観察することにした。その結果、「翻りさえしなければ、紙は広い方が滞空時間は長い」という法則に気づき、翻りを抑えることにフォーカスした開発目標を立てられた。

2019-03-27 10:42:59
shinshinohara @ShinShinohara

東大生も、変に建築学の知識があることが災いし、「観察」がおろそかになった。彼らは紙が材料であるのに、紙を観察することを怠った。頭の中にある構想を実現することに熱中し、紙の性質を知り尽くそうとする「観察」を怠った。このため、豊富な知識も「木に竹を接ぐ」ような格好になってしまった。

2019-03-27 10:47:50
shinshinohara @ShinShinohara

しかしすいえんさーガールは、何の知識も構想もないが故に、まずは紙から学ぼうとした。紙をいろいろいじっているうち、きつく巻いたら非常に丈夫な棒になることを、紙から「教えてもらった」。次には、紙の棒の組み上げ方を、紙から教わった。対象物を観察することで対象物から教えてもらったのだ。

2019-03-27 10:52:24
shinshinohara @ShinShinohara

アクティブ・ラーニングで最も重要なコツ、それは「観察」である。観察は、目の前の対象物から、どうすればよいかを教えてもらう行為。教えてもらうためには、いろいろいじってみる。いろんな角度から対象物を観察してみて、「お前は一体どういうものなの?」ということを教えてもらう。

2019-03-27 10:55:16
shinshinohara @ShinShinohara

どういう材料、現象なのか、観察から見えてくれば、自然と解決策が浮かんでくる。京大対決では「翻りさえしなければよい」、東大対決では「きつく巻けば丈夫な棒になる」だ。 東大生、京大生は自身の知識に溺れ、目の前の材料や現象から「教えてもらう」こと、すなわち「観察」を怠った。

2019-03-27 10:58:29
shinshinohara @ShinShinohara

実は「すいえんさー」には後日談がある。大学対決で連戦連勝だったのだが、次第に勝てなくなったのだ。原因は「アイディア」で競おうとするようになったこと。 連勝するうちに、彼女らは「斬新なアイディア」を賞賛されるようになった。そのために、自分たちの強みはアイディアにあると勘違いした。

2019-03-27 11:01:31
shinshinohara @ShinShinohara

連戦連勝だった頃は、アイディアの前に、紙を落としてみた。紙を折ってみた。いろいろ試行錯誤しながら「観察」を続けるうちに、欠点を克服する方法を、現象やモノ自体から「教えてもらって」いた。 ところが彼女らが、アイディア勝負に頼ろうとしたとたん、弱体化した。現象から学ぶ姿勢が失われた。

2019-03-27 11:04:53
shinshinohara @ShinShinohara

知識があることは悪いことではない。アイディアが豊富なことも悪いことではない。しかし、現象や対象を「観察」することを怠る原因になるのなら、「悪い」ことに転ずる。目の前の現象や対象をより深く「観察」するために知識が用いられるなら、それはむしろ望ましい。

2019-03-27 11:07:19
shinshinohara @ShinShinohara

大学対決を繰り返すうち、大学生たちは、アイディア倒れになってはいけないことを学んだようだ。だんだんと、与えられた課題の材料、現象を詳しく観察し、そこからヒントを得て、開発目標を立てるという手続きをとるようになった。すいえんさーガール達が観察をやめてしまったのとは逆に。

2019-03-27 11:09:32
shinshinohara @ShinShinohara

私が研究者として大切にしてるのも、「観察」だ。そしてより深く観察するため、様々な角度から観察しようと、いろいろいじってみる。その試行錯誤と観察から、突破口が次第に見えてくる。そうしたら仮説を立て、実験してみる。それの繰り返し。

2019-03-27 11:11:27
shinshinohara @ShinShinohara

すいえんさーガールは、自らの強みに自覚がなかったので、「斬新なアイディア」を出そうとし過ぎて、観察を怠るようになった。もし、自分たちの強みを自覚し直すことができたら、再び活躍できるようになるだろう。 逆に言えば、「観察」さえ怠らなければ、創意工夫は誰にでもできるということだ。

2019-03-27 11:14:02
shinshinohara @ShinShinohara

「観察」の重要性を知るためにも、「すいえんさー」の大学対決編を、再放送してほしい。繰り返し放映してほしい。アクティブ・ラーニングの、格好の教材となるだろう。

2019-03-27 11:15:20
shinshinohara @ShinShinohara

「世界をアップデートする方法 哲学・思想の学び方」x.gd/MWrKc 食糧問題の本x.gd/oV2Ol 思考法の本x.gd/a1X4i イノベーション本x.gd/G6TT0 子育て本x.gd/dN0Ej 部下育成本x.gd/6gSZb

note.com/shinshinohara