日向倶楽部世界旅行編第80話「決勝戦開幕」

三隈グループ @Mikuma_company

「勝利するのは果たして、どちらかッ！？」 「二年ぶりじゃな、最上ッ！」 「会えて嬉しい…とは言いませんよ」 「姉さんの邪魔はさせないわ！」 「奴から目を話すんじゃない！」 「もう遅いッ！」 「ピンチはチャンスの裏返しだ…！」 日向倶楽部、この後21:00！ pic.twitter.com/IWUYLTYHgE

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【前回の日向倶楽部】 ブルネイ泊地の武蔵だ。 ブルネイ泊地水上スタジアム、その門出を数多くの激闘で飾れた事、ブルネイの者として嬉しく思う。どのチームも素晴らしい戦いを見せてくれた、私も混ざりたくてウズウズしてしまったよ。 今日、その頂点が決まる、この二週間あまりの頂点がね。

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【前回の日向倶楽部その2】 生憎の曇り空だが…ここまで残った者達だ、そんな事気にもせんだろう。 さて、あまり長く話しても仕方ない、私も早く見たいのだ。力を振り絞り、それが尽きても戦う、そんな戦い…心躍る死闘を期待している、以上だ。 (武蔵のスピーチ)

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日向倶楽部 〜世界旅行編〜 第80話「決勝戦開幕」

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〜〜 放送席 「さあ始まりました、ブルネイ泊地海上スタジアムオープン記念タッグマッチ、決勝戦！対戦カードはどちらもここまで負け無しの横須賀利根姉妹対Wヴィースト！勝利するのは果たして、どちらかッ！？ここからの放送は、ノーカットでお送りしますッ！」 〜〜

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【Wヴィースト】 トラック泊地の最上、足柄のチーム。 最上は横須賀鎮守府巡洋艦杯優勝、足柄は同大会ベスト4と、二人は戦友でありライバルであるという間柄。 敵としても味方としても互いを知っている二人の連携は、派手さこそないが細かな部分に現れており、総合力の高さで優勝を目指す。 pic.twitter.com/hNqndmRD26

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【横須賀利根姉妹】 横須賀鎮守府親衛隊の隊長利根と、副長筑摩のチーム。 二人は戦友であると同時に姉妹であり、強い絆で互いに結ばれている。姉妹である事が一目で分かる鮮やかな連携は、見る者を圧倒するだろう。 利根は巡洋艦杯にて最上に敗れており、決勝戦は彼女にとって雪辱戦でもある。 pic.twitter.com/M8YKWtNzHy

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〜〜 試合が始まった、最上と足柄は快速で前進する。互いに無言、もうどうするべきかは分かっているからだ。 利根姉妹には、利根の操る大量の艦載機がある。その量、質ともに、最上のものでは到底太刀打ち出来ない、遠距離戦ではジリジリと追い詰められる。

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だからこそ彼等と対峙したチームは距離を詰めて来たし、詰めなかったチームは脱落した。 しかし利根姉妹は近接戦に滅法強い、むしろそちらが本領。このジレンマを相手に押し付けるのが利根姉妹の持つ強さだった。 距離を詰めた利根姉妹に勝てたチームが居ない事が、その強さを物語っている。

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なら、最上達はどうするのか？ やはり答えは正道にして王道、距離を詰める事だ。 最上達も利根姉妹同様、近い間合いが得意なのだ。日向や伊勢よりも更に近く、しかし利根姉妹よりは少し離れた絶妙な間合い、一瞬で有利不利が変わる、そんな位置が彼等のフィールドだった。

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実力のぶつけ合いは必至、決勝に相応しい戦いが予想される。 だが、わざわざ実力勝負などという不安定な戦いを好んでするほど、最上は熱い艦娘ではなかった。 自分の実力を10として、相手の実力が9と分かっているなら正面から行っても良い、勝つ事は分かりきっているのだから。

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だが相手の実力が8から12、およそしか分からないなら、正面からの戦いは避けるべきだ。8なら勝てても、12なら負ける、それは博打だ。 (一度勝ってるけど、実力は向こうが上…簡単にはいかないだろう…) 横須賀鎮守府巡洋艦杯、初の艦娘同士による大規模な大会にて、最上は利根に勝利している。

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しかしその勝利はギリギリの賭けを通した勝利、利根に"勝った"とは言い難かった。 あれから自分も少しは強くなっているが、それで利根に勝てるかは未知数、向こうだって一度負けてるのだから、強くなってる可能性もある…それも相まって正面からは避けたいのだ。

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博打というのは自分の窮地、土壇場で仕掛けるからこそ活きる。初めからする博打はただの考え無し、これは最上の中で培われてきた戦いの基本だ。 だがしかし、いくら彼女がそう思っていても、今回の初動ばかりは正面以外の選択肢が無かった。 理由は簡単、利根の存在だ。

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利根姉妹と戦うにあたり、付け入る隙は筑摩である。彼女が利根に比べ実力や精神面で劣る事は、目の良い艦娘ならすぐに分かる。 しかしそれを利根は完全にカバーする、彼女は筑摩の側を決して離れない。更に有効射程は艦載機を操る利根の方が長い、筑摩が突出する事はそう起きない。

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中遠距離からの砲撃で筑摩を仕留めようにも、彼女はあくまで"利根に比べれば格下"というだけ、防戦に徹する程度は造作もない。 そして利根を狙ったところで、中距離以遠で彼女に手を出すのは極めて難しい。何せ彼女には攻守に優れた艦載機群だってあるのだ。

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故に、有効なのは奇襲攻撃、陣形を乱し、早急にどちらかを仕留めるのだ。 だが、それには正道を外れる必要がある、奇襲攻撃というのは、行う側も大きな隙を見せるものなのだ。 だから、今回の初動は正面を選んだ。最上と足柄は奇襲のリターンより、互いの持つ実力を信用する事にしたのである。

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(向こうは否が応でも接近戦に持ち込む必要がある…つまり、攻めなくっちゃあいけないんだ。) 最上は正面を睨み、思案する。 (だから、粘っていれば隙が、綻びが必ず出来る…。そこを突いて形勢をひっくり返す…) 彼女は考えを復唱し、気持ちを改めて整える、間も無く利根達が見える頃だ。

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そう思った矢先、偵察に出した瑞雲でしか捉えていなかった利根達を、最上達は視界に捉えた！ 「来た…！」 最上が呟くと、彼女を視界に捉えた利根も声を上げる。 「二年ぶりじゃな、最上ッ！」 利根は懐かしむ様に言うと、身体に力を込める。

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そんな彼女に最上も答える。 「会えて嬉しい…とは言いませんよ、今回はしっかり勝たせて貰います！」 彼女がそう言うと、利根はニヤリと笑った。 「そうか…じゃがあの時の様には行かんぞ、今回は一気にカタをつけてやろうッ！」 その言葉と共に、利根は戦意を示すように身構える。

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そして一言、筑摩に言った。 「筑摩よ、まずは奴を仕留める…手助けは任せるぞッ！」 そこへ筑摩は、飛甲剣を構えて答える。 「任せて姉さん…私、やれるから！」 「…うむ！」 それを見て利根は頷くと、最上を視界の中心に捉えた！ 「さて…始めるとするかのうッ！」

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対する最上と足柄は砲撃を敢行、それが戦闘開始の、合図となった！ 利根は砲撃を素早く回避、最上達の狙いは正確だが、これに当たる程利根は甘くない。避けた砲弾が背後で爆発する中、彼女は勢い良く最上の方へと進む！ 「来るか…！迎え撃つ！」 最上は主砲で弾幕を張り、距離を維持する。

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優れた艦娘同士の戦いにおいて、正面からの撃ち合いは基本当たらないものというのが通説である。 しかし距離が近くなれば話は変わる、近くなれば回避までの猶予は減り、被弾する確率は跳ね上がっていく。最上と足柄は砲撃を行う事で利根の接近を抑制し、隙を伺っているのだ。

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(回避っていうのは、思ったより神経と体力を使う…疲れるんだ。そして疲れっていうのは気付かないレベルで、だけど致命的に人間のパフォーマンスを低下させる…) 日向によく言われた事を最上は思い返す。深海棲艦相手の時は自分の事だったが、艦娘相手ならこの理屈は相手にも適用出来る。

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疲弊させる、それが第一だ。 だが利根は確かに言った、今回は一気にカタをつける、と。 そしてそれを実行出来る力を、彼女は持っている！ 「森羅の光、命の輝き、無縫の衣となり我を護り給え…」 利根はそう言って腕を交差させ、全身に力を込める。 そしてそれを、強く解いた！