ギガベース日誌 ACT07「CREATED VICTIMS」08

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燃え落ちる輸送艦。 絶叫の金属音を放ち倒れるクレーン。 血に染まる海。 とある軍港が辿った末路は、どこかの戦場のありふれた光景。　#ギガベース日誌

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ネクストのようにも見えながらその歪なシルエットで周囲を威圧する巨人は、腕部から生成されたコジマブレードの刃で地上施設を薙ぎ払っていく。 防衛側のノーマル部隊も、その獲物の一つだった。 「何だってんだ、あのネクストは！」 「自律型だ！レイレナード製の！」　#ギガベース日誌

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「どうして過激派風情がそんなもの！！」 恐怖に呑まれ惑う命は、海上からの砲撃によって砕かれる。 防衛側の艦娘が全滅したのだ。 「こちらゴトランド。基地側の海上戦力の全滅を確認」 「つっかれました～」　#ギガベース日誌

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空と海の青の境界のような髪色の艦娘ゴトランドの報告を受け、資源強奪を主目的とした作業機部隊が次々に上陸する。 真横にいる重巡は、立っているのもままならない様子で項垂れていた。 「ゴット、あれ言わないと、あれ」 「ああ、そうだね。……それじゃ」　#ギガベース日誌

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「リリアナ万歳！すべては人類未来のために！」 「ばんじゃ～い！かんぱぁぁ～～～い！！！」 掛け声と共に取り出した酒瓶を、重巡ポーラはその場で開けた。　#ギガベース日誌

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「なん……で……」 引揚用のチェーンにしがみついた瀕死の最上が、怒りを宿した眼で2隻を睨みつける。 「あれ？撃ち漏らしじゃない」 「どうしてリリアナに……ギガベースの艦娘が……」 「なんでわかったんです～？」 「ポーラ、私たちが艤装から何出して戦ってるかわかってる？」　#ギガベース日誌

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「酒気？」 「それはあなただけだよ、この酔っ払いが。それより、まだ沈んでない船がいて良かった。ちょっと我慢してね、すぐ終わるから！」 反撃する気力すら残されていない最上に近づいたゴトランドは、艤装とは別に着用したポーチから金属製の器具を取り出した。　#ギガベース日誌

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最上の喉を専用のコンバットナイフで潰し発声機能を奪った後、ゴトランドの作業は本番へと突入する。 それを眺めながら2本目の瓶の蓋を開けようとしたポーラの艤装が、味方からの通信を受信した。 「はぁ～い？」 「こちら司令。ゴットが通信を切っているのでそちらにかけた」　#ギガベース日誌

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「あぁ～。今、あれ！大事なアレの最中ですから～」 「そんな事だろうと思ってはいた。ゴットの作業が済み次第、至急司令船まで帰投してくれないか」 「このまま海上で警備を続けなくても？」 「そうして欲しかったんだが、緊急なんだ。なるべく早くな」　#ギガベース日誌

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十数分後。 ゴトランドとポーラの2隻は、攻撃部隊の司令船、その艦橋にいた。 「ゴトランド、ポーラ、ただいま戻りました」 「緊急のお話ってなんですか？」 右手に酒瓶、左手にチーズを携えたポーラの醜態を咎める事もなく、司令の男は神妙な趣で口を開いた。　#ギガベース日誌

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「君達の派遣主……第二艦隊の指揮官代理から連絡があった。至急、君達の拠点へ帰還しろとの事だ」 「……え？」 「1時間以内に荷物をまとめ、あちら側が指示した座標へ向かって欲しい。現時点を以て君達以下4隻の艦娘はリリアナから脱退となる」　#ギガベース日誌

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「そんな……こんな急に皆さんとお別れなんて。私ちょっと悲しい」 「急すぎる異動～！！飲むしかねぇ～～～！！！」 「その……なんだ。こちらとしても君達には是非残ってほしいんだが、協定を不意にするわけにもいかない。我々の理想の為、今までよく戦ってくれた」　#ギガベース日誌

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「いや理想とかはどうでもいいんだけどね仕事だし。単純にいい人が多かったから……貴方も含めてね」 「あのドイツ野郎のところに帰るなんてやだやだ～～～！！！！！」 「……グラーフからメッセージを預かっている。私が見るわけにもいかないから、君達だけで確認してくれ」　#ギガベース日誌

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端末を受け取ったゴトランドは、艤装の認証キーを読み込ませロックを解除。真横で床を転がりながら泣き叫ぶポーラを無視し、リーダーたるグラーフからの伝言に目を通した。 その顔が時間とともに狂喜を湛える様に、司令やリリアナの構成員達は恐怖を抱かずにはいられなかった。　#ギガベース日誌

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「はっ、はははっ、そう、やっとなのね」 「……ゴット？」 「ありがとう司令。すぐに出るわ。私、提督に会えるみたいなの。楽しみだわ！ここで築いてきた戦果、ようやく見せられる時が来たのよ！」　#ギガベース日誌

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「ふぇ？提督って？あの提督？」 「他に誰がいるってのよこの素っ頓狂が！こんな所さっさと出るわよ！瑞穂とイヨも連れてきなさい！」 ポーラから酒瓶を奪い取ったゴトランドは、足早に艦橋を後にし、残された司令は安堵の息を漏らした。　#ギガベース日誌

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「良かったのですか？行かせてしまって」 「……あのギガベースの連中に逆らえるわけもないだろう」 反体制勢力リリアナ。 ラインアークをすら追われた過激派の武力集団である彼等とギガベース鎮守府を結ぶ糸。それは、他ならぬギガベース鎮守府提督DfJである。　#ギガベース日誌

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彼らは、古くはパックス・エコノミカの時代におけるマグリブ解放戦線に由来するテロリスト集団である。企業の選民思想の体現たるクレイドル体制の終焉という彼らの切望は、人類種の天敵とすら呼ばれた3人のリンクスによって齎された。　#ギガベース日誌

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リリアナが輩出し、ORCAへと潜り込んだクレイドル襲撃の首謀者オールドキング。彼はカーパルスにおける決戦で散り、僚機の片割れであったストレイドは消息を絶った。残ったのはDfJただ1人。 故に、リリアナは彼を恐れた。 その狂気が、力が、何かの拍子で自分達に向くことを恐れた。　#ギガベース日誌

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そして交わされた密約。 ギガベース鎮守府は、リリアナにネクスト技術を満載した艦娘戦力を提供する。 その特恵に対する報いとして、リリアナはギガベース鎮守府“第二艦隊”の設立及びその隠匿に協力する。 リリアナは、これを承諾した。　#ギガベース日誌

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クレイドル体制が終わりを迎えた今でさえ、企業が持つ力は依然強く、リリアナが持つ力はそれにまともに抗えるものではない。 覚悟のみでは未来を紡げないと悟った思想家達は、派遣された4隻の艦娘を快く迎え入れた。　#ギガベース日誌

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あるいは、それは銃口が向けられる順番を後回しにする為の足掻きだったのか。 掠れた夢は、力を前にしてあまりにも心許無く。 リリアナの人間達は、去っていく4つの保証の背をただ見送ることしかできなかった。　#ギガベース日誌

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ギガベース前方、開放されたままになっている帰投用ハッチに、血飛沫に塗れた利根と、その肩を支える高波が駆け込んだ。 「大丈夫ですか！？利根さんは？！」 「ジェネレータに被弾してるかもです！早くドックに！」 妖精達に利根の身を預けた高波は、後方の海に目を峙てた。　#ギガベース日誌

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深海棲艦の圧倒的物量と深雪の介入により、防衛網は掌を返すように崩壊した。 高波に続き、防衛にあたっていた艦娘達が補給や修復を求め雪崩れ込む。 「やっばいなーマジで。今度ばかりはアレな感じかねー。うひー」 「妖精さん、私と北上さんの分のコジマ魚雷をお願い。迅速にね」　#ギガベース日誌