ア・デッカーガン・イズ・マイ・パスポート #8
SMAAASH!KRAAAASH!カゴン!カゴン!カゴン!ムギコは震えながら身を起こそうとして、また倒れ、這いずった。「今のは実際、手加減が足りてねェ」上からアゾットの声が降って来た。「殺すつもりはねえよ。なるべくはな」「グ……」ムギコは倒れかかりながら廊下を進む。非常階段が前方に……! 0
2019-04-06 13:33:29外へ……外へ出れば!這いずり、外へ……!……ムギコはそのままうつ伏せに倒れ、動かなくなった。アゾットが気を失った彼女を見下ろした。「……」彼は非常階段の方向を見た。うずくまるニンジャの影。着地姿勢。影はゆっくりと立ち上がる。アゾットはその者の顔にクロスカタナの刻印を見る。 0
2019-04-06 13:34:30「ソウカイ・シンジケート……貴様は……」アゾットは呟いた。クロスカタナのニンジャはその目をギラリと光らせる。彼らは同時にオジギした。「ドーモ。ガーランド=サン。アゾットです」「ドーモ。アゾット=サン。ガーランドです」非常階段の外からから風が吹き抜けた。 1
2019-04-06 13:41:26「何の用だ?ソウカイヤ」アゾットはふてぶてしく問う。ガーランドは答える。「宣伝の礼を言いに来た。そして貴様をラジコンにしているカイシャの事も教えてもらいたい」「それは、それは」アゾットは顎をさすり、目を細めた。アナーキ・ドーの構えをとった。「ならば相手をしよう」 2
2019-04-06 13:44:51「イヤーッ!」「イヤーッ!」ガーランドの手がしなり、クナイウィップが渦を巻いて繰り出される。アゾットは最小の動きで螺旋突きを弾き逸らした。ムチを打ち払った右手には鋭利なブレードが沿うように生えている。彼が身を沈めると、くるぶしに白い輝きが灯り、蒸気が噴いた。「イヤーッ!」 3
2019-04-06 13:51:24アゾットは瞬時にガーランドの眼前へ接近した。「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」たちまちワン・インチのカラテ応酬が始まる。ガーランドはムチを引き戻しながら素手のカラテに切り替え、短打で応じた。アゾットは関節部から圧縮空気を吐き、凄まじく加速した。 4
2019-04-06 13:52:57「イヤーッ!」「イヤーッ!」ショート・コンビネーションからのケリをアゾットは斜めに飛んで回避。足裏からスパイクを生やして壁に突き刺し、真横になりながら両手を突き出す。両手の甲がスライドし、ショットガンの銃口が露出した。BBLAMNN!ガーランドは転がって回避!追う弾をムチで弾く! 5
2019-04-06 13:54:39「イヤーッ!」アゾットは壁から離れ、空中から回し蹴りで襲いかかる。ガーランドは防御に用いたムチをそのまま攻撃に転じる!BOOOM!アゾットは人体にあり得ぬ挙動で瞬時に後退した。胸部サイバネが展開し、スラスターが露出。ガーランドが目を見開く。BOOOM!今度は前に加速接近!「イヤーッ!」 6
2019-04-06 13:58:28「グワーッ!」ガーランドは突進突きを喰らって怯む。そこへ続く致命振り下ろし斬撃をムチで受けた。こちらの攻撃が本命と見抜いたのだ。BOOOM!スラスター推進の圧力でガーランドは下方向に押し付けられる。二者は得物を挟んで睨みあう。「このクセ、アダナスのフレームだな」ガーランドは呟く。 7
2019-04-06 14:01:48「気持ち悪りィな、お前」アゾットはニヤリと笑う。「詳しく把握してンのか?」「それが仕事なんでな」ガーランドは眉一つ動かさず答える。アゾットは押し付ける力を強めた。「そうか。ここで派手に殉職しな」背部スラスターが火を噴く!BOOOM!「イヤーッ!」 8
2019-04-06 14:08:24DOOM!DDOOOM!オイランドロイド素体の身体がフォースキャノンのエネルギー射出を受けて吹き飛び、跳ね飛ばされて飛び散った。「エネジィ」銃が悲しげに告げた。「そりゃそうだ」シンゴが呟き、タバタと位置取りを交換する。BLAM!BLAM!タバタは倒し漏らしたオイランドロイドを撃っていく。 10
2019-04-06 14:11:59「短時間に撃ち過ぎてる。次、充填しても撃てねえかもしれねえな」シンゴが言った。タバタは蹴り飛ばし、素早くリロードする。「そうしたら白兵戦にくわわってもらいますよ」見渡す。素体はマリオネットじみて、顔より高く上げた肘先をだらりと伸ばし、内股で痙攣しながら向かってくる。 11
2019-04-06 14:15:20「上のアイツらから連絡あったか」「いいえ。貴方に来てなきゃ、ないですね」「いつまで待たせんだ」BLAM!BLAM!向かってくる素体を撃つ。狙うのは膝、足だ。もとから死んでいるものは殺せない。シンゴがさらにタバタに何か言おうとした……KRAAASH!その時、遠いビヨンボが引き裂かれた。 12
2019-04-06 14:17:59「シャーッ!」スピーカー叫びと、振るわれる鋼鉄のサメ!それは腕である!ボンサイを、マネキンめいて動かぬオイランドロイド素体を、動くオイランドロイド素体を、無差別にサメ腕で喰らいながら、サメムラが突進する!「シャーッ!」シンゴとタバタは警戒し、後ずさった。「サメムラ……!」 13
2019-04-06 14:24:03サメムラはトコシマ・シェリフ達からも恐れられる札付きの凶悪犯罪者であり、シンゴ社にもハント要請があった。狡猾で意外にも用意周到なサメムラはこれまで数度トコシマ・シェリフの作戦を出し抜き、ときにニンジャすらも手にかけた。「やっぱりライジンが要りました」「最悪だな」 14
2019-04-06 14:29:07「シャーッ!」KRAAASH!サメムラは両手で飛び掛かり、シンゴに喰らいつこうとした。転がって交わす二人のデッカー。サメムラは構わず、進行方向にあったUNIXデッキや工場機械にむしゃぶりつき、三列の鋭利な刃で引き裂きながら咀嚼した。「シャーッ……!」 15
2019-04-06 14:32:41BLAM!BLAM!BLAM!デッカーガンで撃ちながら二人は後退する。しかしオイランドロイド素体が後退方向から襲ってくるのだ!「イヤーッ!」「ピガーッ!」シンゴのケリ・キック!「イヤーッ!」「ピガーッ!」銃殴打!「運動させやがって!俺は診断の数値が!」 16
2019-04-06 14:35:50「よく言いますよ。この極限状況下で嘘つかないでください、ベンチプレス何キロですかシンゴ=サン」「今はそんな指摘をしている場合じゃねえぞタバタ!」「逃げ道作ってください、どこまで止められるか……!」BLAM!BLAM!タバタはサメムラの膝や足を狙い撃つ!「シャーッ!」 17
2019-04-06 14:39:59KBAM!命中弾がくぐもった音をたて、よろめいたサメムラがうつ伏せに転倒した。ブルズアイ!リロード時に仕込んだ炸裂弾である。「やったか」「来い、タバタ!」シンゴがオイランドロイド素体を殴り倒しながら叫んだ。しかしサメムラは止まらなかった。「シャーッ!」うつ伏せのまま、腕が! 18
2019-04-06 14:44:20陸上を泳ぐサメめいて、サメムラの両腕は貪欲に食らいつきながら前進!恐るべき匍匐前進でデッカー達を追う!「この程度で!この俺を止められるとでも!思ったか!」「ウワーッ!」ついにはタバタが尻餅をつくように転倒!シンゴはオイランドロイド素体の対応に手いっぱいだ! 19
2019-04-06 14:46:03サメムラの地獄のクロールが迫る!二秒もすればタバタは足から喰われて十秒もせぬうちにネギトロとなるだろう。BLAM!BLAM!転倒によって銃口が上向き、虚しく天井に向かって火を噴く。「AAAAARGH!」サメムラの左手の顎がタバタを、捉えた!KRAAAASH!「アバーッ!」 20
2019-04-06 14:49:06凄まじい衝突音に、シンゴは思わず一瞬後方を垣間見た。「タバタ……!」……サメムラはうつ伏せ状態で痙攣していた。胴体を貫通し縫い付けたのは、上から降って来た鉄骨であった。タバタが上を撃ち、鉄骨を吊るしていた固定ワイヤーを切断したのだ。ナムアミダブツ……! 21
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