日向倶楽部世界旅行編第81話「強き者ども」

三隈グループ @Mikuma_company

「モガミン、そんな…！」 「一気に畳み掛けるのじゃ！」 「趨勢は決まったと言えるな…」 「油断、しましたねぇ…！」 「まだ何かあるんじゃないのか？」 「空気が、甘い…」 「我輩は今、何を前にしておるのだ？」 日向倶楽部、この後21:00！ pic.twitter.com/Ls0Ed73rzJ

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【前回の日向倶楽部】 扶桑です。 大変な事になりました…決勝戦、激しい戦いによって最上さんがやられてしまったのです。利根、あの娘がとても強いのは私も知っていましたが、私が留守にしてる間に物凄く力を付けていた様です。喜ばしいのは確かなのですが、複雑な気持ちですね。このまま押し切ってい

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【前回の日向倶楽部その2】 横須賀利根姉妹とWヴィーストの試合が始まった。奇襲を虎視眈々と狙うべく慎重な戦闘を開始した最上だったが、それを打ち破る利根の奇襲と強襲によりプランが崩壊、彼女は早々に撃破されてしまう。 開幕から荒れた試合、残った足柄は一人、利根姉妹と対峙する。

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日向倶楽部 〜世界旅行編〜 第81話「強き者ども」

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〜〜 「決勝戦は開始早々大きく動きました！横須賀利根姉妹、Wヴィーストの最上を怒涛の攻勢で撃沈、一気に流れを引き寄せたァッ！」 熱の入った実況が放送席に響く。達人同士の対戦は一瞬という言葉があるが、決勝戦で起きたこの攻防はそれを表す様だった、それ程に早かった。

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ボルテージの上がる実況の一方、狼狽えたのは三隈だ。 「ああっ、モガミン、そんな…！」 彼女は解説者としての役目を思わず忘れ、浮き袋に浮く最上を見て動揺する。 最上は強い艦娘であった、普段は物腰柔らかな調子で居つつも、土壇場で逆転し、最後には勝つ、そんな艦娘だった。

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その最上が呆気なく負けたのだ、準決勝で日向が敗れていた事もあり、仲間である三隈は大きなショックを受ける。 そしてこの結果には、武蔵すらも目を細める。 (ふむ…もう少し粘ると思っていたのだが) 最上の実力は、地図にない島の調査を日向達に依頼した時に見ていた。あれは確かなものだった。

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利根も確かに強かったが、それと互角に渡り合える程の力を最上も隠し持っている、武蔵はそう睨んでいた。 (これは、準決勝の時がピークだったと見るべきか…どちらにせよ、趨勢は決まったと言えるな…) 試合はまだ終わっていない、足柄が残っている。しかし、逆転は無いと武蔵は見る。

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(あの足柄という艦娘…どの試合でも全力を出し切っていた、恐らく隠し球の様なものは無いだろう…) 多くの参加者が勝ち進むにつれ、様々な奥の手を出す中、足柄の動きは同じだった。 武装構成は爪付き主砲「灰狼爪」に、飛翔機構「アポロ∞」、他はスタンダードな魚雷や主砲だ。

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対する利根は、勝ち進む毎に新たな動きを繰り出していた。決勝でもなお新たな一手がある、そういう風に思わせる凄みがあった。 加えて数的な優位もある、足柄の勝機は無に等しい、武蔵含め多くの者がそう思っていた。 会場の空気が利根姉妹の勝利に傾く中、試合は続く。 〜〜

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〜〜 最上が倒れ、一人となった足柄は利根姉妹と対峙する。戦況は足柄に極めて不利、最上が居なくなった事で制空権は喪失、利根の艦載機は完全フリーとなって彼女を狙える。 (空気が、甘い…) 足柄は艤装を動かし、対空戦に備える。利根はすぐに攻めてくる、彼女はそう確信している。

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その予想通り、利根は攻勢に出る。 「この空気…雨が近い。なら、艦載機を使えるのは今しかあるまい、行くぞ筑摩ッ！」 「ええ、任せて姉さん！」 姉妹は速度を上げ、足柄へ向かう。 艦娘の艦載機というのは、雨天下では使用不可か、そのパフォーマンスが大きく低下する。

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だから天気が変わりそうな今、利根が艦載機を使うタイミングはここしかなかった。相手の航空戦力がゼロの、最高の性能を発揮出来るこのタイミングなのだ。 無論、足柄はそれを読んでいるし、利根は読まれている。しかし、読みがなんだというのか、予想がなんだというのか。

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誰もが分かる程完璧なタイミングの攻勢、それは読んだところで避けられない理想なのだから！ 「筑摩、一気に畳み掛けるのじゃ！」 「はいッ！」 利根は瑞雲と晴嵐、全ての艦載機を足柄へ差し向け、筑摩と共に突撃する！出し惜しみはない、ここで一気にカタを付け、勝利へと邁進するのだ！

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「来る…」 彼等の操る無数の艦載機を前に、足柄の表情が険しさを帯びる。彼女に迫るのは信じ難いマッチアップ、誰が見ても勝ちの目は薄い戦い。 しかし足柄の険しい表情に、恐れという要素は何一つない。 (この程度…この程度を越えられなければ、私は"本物"になれないッ！)

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足柄の目がカッと見開かれる！そして彼女は主砲を構え、迷わず突撃を敢行した！ 「何ィィィッ！？足柄、利根達に向かっていきます！何をするつもりだ！」 実況、そして観客達は目を疑う。ここで突撃すれば艦載機と利根姉妹の両方から攻撃を受ける、火中へ飛び込む様なものだ！

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確かに艦載機だけを迎撃しても、消耗し、ジリ貧になる可能性はある。 だが、それでも突っ込むよりはマシなのだ！誰の支援もない孤立無援、勝てるはずがない！ 「自棄を起こしたか…ちょうど良い、ここで仕留め切ってやろうッ！」 利根は身構え、筑摩と共に距離を詰める！

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「乱戦になれば艦載機を封じられると思っておるのかもしれぬが…甘く見るでないぞッ！」 使役された艦載機群が足柄を襲う、無数の爆撃と機銃が彼女を狙う！ それらを足柄は落とす！落とす！落とす！的確な艤装操作、主砲の狙い、しなやかな回避、次々と撃ち落として行く！

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されどこの程度、実力ある艦娘ならこなせるレベル、序曲に過ぎない！ 「集えよ蛍火！晴嵐、波紋弾ッ！」 利根が放つ赤い光弾、追撃として真っ直ぐ足柄へ迫る！これに対し足柄、艤装で対空射撃を継続しつつ回避！ しかしそこへ！ 「唸る波紋が汝を揺さぶる、晴嵐、波紋掌底ッ！」

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あっという間に距離を詰めて来た利根が、波紋掌底を狙う！ これに足柄は砲撃で応戦、狙いやすい利根の胴体と、当たれば致命打の脚を狙い撃つ。だが利根はこれを素早く回避、その隙に艦載機を差し向け、多角からの同時攻撃を敢行する！ それは、息をつかせぬ猛攻、猛攻！

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それでも足柄は屈しない！艤装による的確な対空射撃で艦載機を迎撃し、主砲の弾幕で利根に応戦する！ 一発の弾丸すら虚空に消えぬ精密な射撃は、利根の猛攻を捌き続ける。その様相は不沈艦、今の彼女には一撃として与える事は出来ない、そう思わせる凄みがあった！

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しかし忘れてはならない！利根には妹がいる、絶大な信頼と愛情を注ぐ、妹が！ 「でやあァァァッ！」 足柄の砲撃を避けた背後から、飛甲剣を構えた筑摩が迫る！彼女は飛甲剣で弾丸を防ぎ、そのまま巨大な得物を薙ぎ払う！ だが、それも足柄は避ける！しなやかな動きと機敏な方向転換でいなす！

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そこへまだ追撃は続く！相手を抑える者のいない孤独な戦場、利根姉妹のフルパワーは足柄を逃さない！ 「晴嵐、波紋弾ッ！」 足柄の進路に迫る赤い光弾、そしてその後ろから突っ込んで来る利根！光弾を避ければ艦載機と利根が来る、光弾を迎え撃てば筑摩が来る、何もしなければ全てが当たる！

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四面楚歌、それでも足柄は、眉一つ動かさない！ 彼女は光弾の進路を避けつつ、四連装魚雷を利根へと射出！その動きの流れで一丁の主砲を筑摩へと向ける！ 艤装は対空射撃を継続、艦載機を撃ち落とし続け、彼女は残る一丁の主砲を利根へと向ける！ 「その程度の射撃、当たるものかッ！」

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跳躍し、魚雷を飛び越えた利根！彼女は空中を蹴り飛ばし、変則的な軌道で足柄を狙う！ 対する足柄は後退しつつ射撃を継続、だがその進路は、筑摩の方へと近付くもの！ (彼奴、筑摩の方へ…！？) 艦載機も波紋技も、利根の攻撃は精密なものだ。しかしそれでも、巻き添えのリスクがある！