『塗仏の宴』と後期クイーン的問題

京極小説と探偵小説とは別物であって、『絡新婦の理』と後期クイーン的問題とはあまり関係ないというお話
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@quantumspin

まとめを更新しました。「『暗い越流』と後期クイーン的問題」 togetter.com/li/1264837

2018-09-10 23:03:39
@quantumspin

『魍魎の匣』と後期クイーン的問題|琳@quantumspin @quantumspin|note(ノート)note.mu/quantumspin/n/…

2019-04-16 18:04:52
@quantumspin

唐突に過去の論考をひっぱりだしてしまいました。最近『絡新婦の理』は後期クイーン的問題というつぶやきをみかけたのですが、それはどうも京極夏彦を読み違えているように思えるので、そのあたりをつぶやいてみようかと思い立った次第です。

2019-04-17 08:10:39
@quantumspin

そもそも探偵小説にしても後期クイーン的問題にしても「真実はいつもひとつ」を目指すという自明の前提条件がある事はご承知の通りですが、他方京極小説は最初からこれを目指していませんね。京極小説と探偵小説とは骨格がかなり異なるわけです。

2019-04-17 18:14:08
@quantumspin

では京極小説では何を目指しているかというと、これは『自律』と言えるのではないかと思います。『姑獲鳥の夏』にしても『魍魎の匣』にしても、操られた人物の自律性を取り戻す行為を『憑き物落とし』と呼んでいました。

2019-04-17 19:11:27
@quantumspin

言い換えると、京極小説は最初から操りテーマを取り扱っているわけです。むろん『狂骨』も『鉄鼠』もみな操り物語です。この操りの糸を裁ち切る行為を京極堂は『憑き物落とし』と呼んでいるわけです。

2019-04-18 17:33:03
@quantumspin

操りの糸を裁ち切るという行為と、唯一無二の真実を探求する行為とは全く違っていますし、だから探偵小説ではなく京極小説なのでしょうが、両者の結末の違いを京極さんは巧みに描き分けているように見えます。『魍魎の匣』や『鉄鼠の檻』にはそれが顕著に現れていると思います。

2019-04-18 17:40:52
@quantumspin

実際、『魍魎の匣』でも『鉄鼠の檻』でも、操りと殺人事件とが意図的にずらされています。どちらの作品も、例え殺人事件を解決しても、それだけでは操りの糸まで裁ち切れない構図になっています。

2019-04-18 17:49:13
@quantumspin

ただ両者の大きな違いは操りと殺人事件との関係性にあって、『魍魎』の場合それが上下の位置関係にあったのに対して、『鉄鼠』は並列の位置関係に変わっています。憑き物落としと謎解きとが、『鉄鼠』では横並びになっているわけです。

2019-04-18 18:09:12
@quantumspin

これをもって『鉄鼠』と後期クイーン的問題との関係を論じたがる方が多いわけです。彼らによると、憑き物落とししえない殺人犯人を描く事で、京極さんは形式体系の自壊を描いた、これこそ後期クイーン的問題だ、というような話になぜかなるみたいです。

2019-04-18 18:15:37
@quantumspin

しかし私によく理解できないのは、京極堂はいつのまに『真実はいつもひとつ』と語り得ない探偵になってしまったのだろうか、という点です。『鉄鼠』がそんな話といわれても、私などは困惑してしまうばかりです。そもそも陰陽師と探偵とを同一視している時点でついていけていない

2019-04-18 18:23:03
@quantumspin

逆に、京極堂が憑き物落としの意味に立ち返らさせられているのは、たぶん『塗仏』なんじゃあないかと、私にはそう読めました。あれは京極版後期クイーン的問題というか、陰陽師が自問自答させられそうな事件ですね。

2019-04-18 18:29:02
@quantumspin

ここでようやく『絡新婦』に戻ってくるわけで、『絡新婦』は『塗仏』の序論のような話だと思うのですが、ようは京極堂と同じく呪い落とせる能力者を彼と対峙させた話ですね。探偵と操り主という構図では決してない。

2019-04-18 22:00:50
@quantumspin

『絡新婦』のラストはそういうスペックホルダー同士が互いに呪いをかけあうような展開になっていて、結局は京極堂が払い落としてしまうわけですが、しかしこれは『塗仏』の始まりに過ぎなかったわけです。

2019-04-18 22:06:22
@quantumspin

『塗仏』ではこのスペックホルダーが宴のごとく現れます。京極堂もその中の一人に格下げされてしまい、しかもそのスペックホルダーを量産する上位概念まで現れます。

2019-04-19 08:07:38
@quantumspin

こうなってくると、他人の他律、自律を操作する陰陽師自身の「自律性」が疑わしくなってしまいそうです。陰陽師は自己言及的な懐疑を抱いてしまうわけですが、この構図は後期クイーン的問題を想起させられるものです。

2019-04-19 08:11:26
@quantumspin

だから、榎木津は後期クイーン的問題を解消する装置という言論が如何に意味不明なものか、一連の議論を踏まえると明白でしょう。京極堂はいつ手掛かりの真偽に苦悩し、榎木津にその真偽判定を依頼したのか。そうした場面があったとは私には読めませんでしたかね。

2019-04-19 21:48:35
@quantumspin

逆に、『塗仏』には後期クイーン的問題の解説が作中に描かれており、本作がこの問題に自覚的であった事は作中でしっかりと明示されていたわけですが、これは皆さんご存じでしたか?

2019-04-19 22:07:13
@quantumspin

当初はこんな感じの京極論を推協書評に応募しようと構想していたのですが、むろん原稿用紙十枚になど収まる筈もなく、大幅カットして上のような代物になったわけですが、それでもまだ窮屈なわけで、十枚は短いです。

2019-04-20 07:06:02
@quantumspin

「虚構本格ミステリと後期クイーン的問題」をトゥギャりました。 togetter.com/li/1492592

2020-04-11 16:22:14

コメント

ティルティンティノントゥン @tiltintninontun 2019年4月20日
この人、いろんな推理小説作品と後期クイーン的問題を考察しているけど、怪談語りの人にも参考になることが多いと思う。
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Chariot @BLACK_RX_24 2019年4月20日
なるほど、「真実はいつも一つ」という推理モノのお約束とでもいうような憑き物が落ちておられない方がいらっしゃると
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@quantumspin 2020年4月11日
まとめを更新しました。
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