『野望の王国』感想 その2

かあかばあど@(12/30(日)東ポ42b)「GTR」 @kakhabad

そして『首切り朝』の感想を探してネタ帳を漁っていたら、ちょうど1年前の『野望の王国』感想の補足が出てきたので、こっちを先に投下しておきます。例によって長いゾ。

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去年の『野望の王国』感想のまとめはコチラ。togetter.com/li/1217224

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教会のアホカップルによって柿崎の計画が狂うくだりは、ここまで天運すら味方につけて生きのびてきた柿崎がついに天にも見放されたということでもあり、同時に柿崎が散々バカにしてきた「愚かな大衆」によるしっぺ返しでもある。＃野望の王国

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疋矢さんは、嬉しすぎてガッツポーズとかしちゃうくらいに喜怒哀楽を表に出しちゃう人なのに、この漫画で一番腹芸を要求されるポジションにつかされるのが本当に気の毒。でも、そのポジションでやらなければならなかったミッションはほぼ完遂しているのでぐう有能。＃野望の王国

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だいぶ前に「悪役の食事シーンは描いてはダメ」という意見がバズったことがあったけど、それが成立しないことは『野望の王国』を読めば一発で分かる。＃野望の王国

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立馬の甘い物と酒、大河原のスシ、赤寺の朝食と、どれもそのキャラを際立たせるのに有効であった。 #原作者である雁屋哲のこだわりなんかもあったのかもしれないが　#野望の王国

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征五郎は自分が踏みつけている相手の痛みには鈍感なんですが、松山にテレビ司会者を依頼するシーンや八港組へのコメントを見るに、征二郎は自分たちが踏みつけている者の痛みを察知し、相手の面子を立たせて痛みを和らげることができる人物なんですよね。＃野望の王国

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こうした征二郎の陽性は要所で描写されていて、大洪水時に救援の陣頭指揮を執る征二郎を見て征五郎が「天が味方したとはいえ おれたちだったら こんなことが出来たろうか……」というセリフにも顕著に表れている。＃野望の王国

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組員一同を集めての「俺のために命を預けてくれ」「勢いにまかせず一旦家に戻ってじっくり考えてから返事を聞かせてくれ」みたいなやり取りも、黒幕ムーブに徹している主人公ズにはできない陽性ならではの言動と言えそう。＃野望の王国

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このように征二郎は人徳により周囲を動かす仁者なんですが、その上でヤクザとして容赦なく相手を踏みつぶすこともできる人物でもある。その辺は、征四郎の家族まで皆殺しにする場面や、新たに松山を取り込む時の手口で見てとれる。＃野望の王国

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でも情が深い人なので、五十人衆の飯野を始末しなければならなくなった時には涙を流すし、後悔を見せる征四郎を始末した後にショックを受けたような表情を見せる。＃野望の王国

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なお、飯野がらみのシーンは、この時点で既に天星教団の浸透工作が進行していることへの伏線でもあり、終盤の展開的にも結構重要な描写だったりする。＃野望の王国

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人徳によって部下たちをけん引する征二郎、巧みな弁舌によって場の風向きを操作する柿崎、黒幕として恐怖と実利で相手を釣る大河原、人脈のトク、狂信でもって信者をコントロールする天星と、この漫画はカリスマを様々な形で描き分けている。＃野望の王国

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征二郎のポジションはいわば裏街道にして陽なんですが、自分はあくまでヤクザであると規定して決して表に出ようとしない。表立ってヤクザに頼った野田を見限ったり政府からの表彰を断るのも、自分で一線を引いているから。＃野望の王国

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でも、そのポジションは、小じんまりとした現状に満足してそこから上を目指そうとしない花岡組の組長（疋屋さんの元ボス）と同じとも言える。ヤクザとして自組織を拡大することはできても、その枠より先には決して出ようとしないのだ。＃野望の王国

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これは暴力を隠ぺいし偽善に満ちている現状の追認であり、その現状に我慢ならず破壊しようとしている征五郎にとっては、何時の日か絶対に衝突することを意味する。そのため、どれだけ兄弟愛に苦悩しても倒さなければならない敵となるわけだ。＃野望の王国

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ここで皮肉なのが、野望をかなえる手段として陰謀に頼らざるを得なかった征五郎たちは、表に立つことができないフィクサーにならざるを得ないということだ。そしてフィクサーは表に立ってはならないことは、小田と大河原という形で繰り返し描かれている。＃野望の王国

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そして「醜悪な人間に裏から操られるままになっているこの社会」をブチ壊しても、支配者として表舞台に立ってしまったら、フィクサーとして最大の武器（影に隠れることで周囲から実力を過大評価させる）も失われてしまう。＃野望の王国

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つまるところ、偽善によって隠された暴力をむき出しにさせるという片岡と征五郎の目的は、その世界で支配者として君臨することとコンフリクトしまくっており、野望の王国を手に入れた征五郎自身も何時の日か野望を燃やす誰かに倒されることになるだろう。＃野望の王国

かあかばあど@(12/30(日)東ポ42b)「GTR」 @kakhabad

それが嫌なら大河原や小田のようなフィクサー（裏街道にして陰）として、社会を裏から操る醜悪な人間として支配しなければならない。そして、その選択肢は征二郎の破壊しようとしていた欺瞞と偽善に満ちた社会に他ならないという。＃野望の王国

かあかばあど@(12/30(日)東ポ42b)「GTR」 @kakhabad

征五郎は最後の最後まで征二郎を撃つことができなかったように、片岡のことも撃てなかったのだな。征五郎という男は、どこまでも心の友を切れない男であり、そして彼ら全員を犠牲にして空虚な野望の王国を手に入れたのか……＃野望の王国

かあかばあど@(12/30(日)東ポ42b)「GTR」 @kakhabad

この辺の絶望的な孤独というのは、征五郎の人脈形成力の乏しさにも起因しているところはある。というのも、連載中に（ちゃんとした描写をしたうえで）自分たち自身の力によって獲得した真に信頼のおける仲間というのが疋矢さんしかいないんですよね。＃野望の王国

かあかばあど@(12/30(日)東ポ42b)「GTR」 @kakhabad

トクと片岡は連載開始時には既に同志、天星も初登場時には仲間扱いされていたのでカウントせず。それ以外の浜岡、松山、棚森には裏切られたので信頼のおける同志とは言えず。＃野望の王国

かあかばあど@(12/30(日)東ポ42b)「GTR」 @kakhabad

暴力と恐怖による支配は、目先の別の暴力によってカウンターが取れるんですが、救国教団は生き神様の神通力と天国への切符という究極の空手形によって無効化している。そこが天星の強みなんだけど同時に弱みでもあり、教祖と天星を失ったことで教団は一気に瓦解してしまった。＃野望の王国

かあかばあど@(12/30(日)東ポ42b)「GTR」 @kakhabad

野望の王国のキャラ考察や感想なんですが「疋矢」「征二郎」「征五郎」は検索できるんだけど、別作品などの人物名とかぶるせいで一番反応を見たい柿崎のことを追いかけられない悲しみ。＃野望の王国