[R-18]「六等分の花嫁」ってヤンキー六人兄弟が女を共有妻にする話かと思ってました

いや思うよなあ!? え、何その目…え…おっちゃんだけ? いや、だって…だってさ…。
26
帽子男 @alkali_acid

六等分の花嫁って まじめな弟がやっとのことで家族に紹介した女を、ヤンキー兄貴達がよってたかって共有の肉便器妻にする話かと思ってました。

2019-04-27 21:10:25
帽子男 @alkali_acid

ひどいよね。悪魔かよ。 弟の気持ち考えたことある?

2019-04-27 21:32:18
帽子男 @alkali_acid

悪魔。まあ悪魔ならやりかねんな。 最近はなんかヤンキーの悪魔もはやってるらしいしね。 でもそもそも悪魔の兄弟いるって知ってるところにのこのこ来る女おる?

2019-04-27 21:34:36
帽子男 @alkali_acid

おるわ。 おる。 愛する人の命がかかってれば来るわ。 取引しに来る。 あげくが肉便器ですわ。 かわいそう。

2019-04-27 21:35:19
帽子男 @alkali_acid

しかしまあそんな下半身節操なしのヤンキー悪魔なら神々とか聖仙とか豪傑とかがなんか封じ込めてるはずじゃん。 そうね。だから自分では動けない。 七体の偶像にそれぞれ一柱ずつの悪魔とかがつなぎとめてある。 いや多い。七等分の花嫁になってしまう。

2019-04-27 21:37:41
帽子男 @alkali_acid

あれ?像に閉じ込めてあるやつに願いを捧げるやつも最近はやりだよね? ほらなんか産まれてくる子供を生贄にするやつ。 まあいいや。 はい舞台を考えましょう。はるか遠い国の小さな島。大引き潮の時のみ本土と細い道でつながる、常人には禁足の地。

2019-04-27 21:41:18
帽子男 @alkali_acid

巌(いわお)の屏風のごとく水平を遮る環状山脈の内懐には外では死に絶えた猛獣と猛禽、怪魚に妖木があまた栄える。 かつては噴気を上げる火口であったろう中央の丘には、いつの世に建ったのかも定かならぬ古い石積みの、とほうもなく巨きな祭殿がある。

2019-04-27 21:46:54
帽子男 @alkali_acid

十人は並んで登れそうな広く長い階(きざはし)を進み、おとなの丈の十数倍はありそうな高さの穹窿の下へ踏み込むと、ゆるやかな円弧を描く壁龕に収まった七つの異形の像が出迎えるように姿を見せる。 社の奥は昼でも冥々と暗いが、像の口や目には鬼火が灯り、妖しくゆらめく明りを投げかける。

2019-04-27 21:49:52
帽子男 @alkali_acid

女はやってきた。二頭の水牛とともに。片方に愛する男の骸を乗せて。 「悪魔よ悪魔…古に戦いに敗れ、今はこの地に眠る七兄弟よ…どうか私の言葉が聞こえるならば…答えておくれ」 呼びかける声はもう若くはない。昔は美しかっただろう面立ちも頬がこけ、しみが浮き、瞳は積年の苦悩に濁っていた。

2019-04-27 21:53:30
帽子男 @alkali_acid

このあたりでドラマチックな効果があれこれ決まるところだが割愛する。 文字でぐちゃぐちゃ書いても皆さんには興味のないところだろうからだ。 ともかく悪魔は答えた。 「アッコラ?人間なめてんのかコラ?」 「何気軽に話しかけてんだテメー」 「ぶっ殺すぞ常命!!」

2019-04-27 21:55:11
帽子男 @alkali_acid

さっきも言ったがヤンキーの悪魔だった。 最近はやりのね。 はやりの。 はやりだからしょうがない。 女はおののいたが、逃げようとはしなかった。 北関東出身ぐらいにはヤンキー耐性があった。 「私の願いを聞いて下さい」 「は?ざっけんな」 「悪魔なんだと思ってんだこら?」

2019-04-27 21:57:16
帽子男 @alkali_acid

こえーこえーわ。 皆ヤンキーとかかわいいと思ってるかもしんないけど実際に相対したら普通に怖いから。北関東出身じゃなきゃまずちびる。 雷は光るし、風は唸るし、地は鳴るし、豪雨が祭殿の外を滝のように流れ落ちる訳。どこかで足音を立てず獲物を狩る忍び山猫が雄叫びを上げる。

2019-04-27 21:59:49
帽子男 @alkali_acid

「やめなよこの人すごい疲れてんじゃん」 不意にずっと黙っていた七つめの像が急に喋る。さばさばっとしてるけど女の声だね。ちょっとかわいい。 「ってゆーか女のひと脅すとかサイテー」 「あ?てめえ兄貴に口の利き方なってねえんだよ」 「まじ調子こいてんじゃねえよ」 だが静かになる。

2019-04-27 22:02:03
帽子男 @alkali_acid

悪魔の末妹は尋ねかける。 「なになに?どんなお願いか一応いってみ?うちらも消えかけだしもうあんまできっことねーけどさ」 「…夫の命を救ってほしいのです」 女は希(こいねが)う。 「でもさーその人もう死んでっとおもーんだけど」 「どうか…いまいちど命をお与え下さい」 「無理かもー」

2019-04-27 22:03:57
帽子男 @alkali_acid

「人間テメーまじあつかましいな」 「キレんぞまじ」 「今すぐ残り少ねえ天寿削ってやっか」 「はいはいやめー!」 兄達が脅すのを妹はまた制する。 「聞くけど、なんで旦那さんの命助けたいの?」 「…愛しているから…」

2019-04-27 22:05:55
帽子男 @alkali_acid

女は低く答える。 「そんだけ?」 「はい」 偶像の群は鬼火を踊らせる。 「ざっけんな!!」 「愛とかまじしらねーんだよ!」 「どたまかちわんぞ常命!!」

2019-04-27 22:07:34
帽子男 @alkali_acid

「しずかにー」 だがまたしても末妹が兄達を黙らせる。 「めっちゃいいじゃん…まじ…そのためだけにここ来たの?怖くなかった?うちらやべー悪魔って評判だと思うんだけど」 「あの人のいないまま死ぬ方がずっと怖い…」 「泣けるんですけど…」

2019-04-27 22:09:14
帽子男 @alkali_acid

一柱の女悪魔は同胞である六柱の男悪魔に告げた。 「まじさあ何とかしてあげらんない?」 「できる訳ねーだろ!」 「人間の生死はクソ閻王のシノギだからよお」 「あ?てめえあの紅縄野郎にビビってんのか?」 「だっせえ」 「ビビってねえし!」 「いつでもやってやんよ!!」

2019-04-27 22:11:38
帽子男 @alkali_acid

女の頭上にわだかまる闇を悪魔の声なき声がゆきかい、相談する。 「うっし、おら常命。テメーの願いを叶えてやんよ」 「ただし!悪魔はタダじゃそゆことやんねーから!」 「テメーは代わりに産むガキを俺に捧げんだよ!」 「何オメーが全部もらうみてえな話にしてんだこら」 「あ?やんのかテメー」

2019-04-27 22:14:20
帽子男 @alkali_acid

兄達ではらちがあかないので末妹が説明する。 「あのぉ!なんかー救えるには救えるんだけどー…うちの兄貴の誰かが旦那さんの体に入って?活入れるみたいな?でもそれも一年しか保たないみたいな?」 「…一年…それでも…かまいません」 女はきっぱりと応える。

2019-04-27 22:16:52
帽子男 @alkali_acid

「あとそん時に絶対赤ちゃん産んでもらうみたいな?できる?」 問いかけに、人間の女ははじめてたじろぐ。 「私は…石女(うまずめ)なのです…」 「え。まじ?」 「はい。最初の夫とはそれを理由に離縁されました。それでも一緒にいたいと言ってくれたのが今の夫です…」 「あでも、いけると思う」

2019-04-27 22:18:50
帽子男 @alkali_acid

七つの偶像のうち最も大きな一つがゆっくりと揺れ、女が連れてきた二頭の牛がおびえて鳴く。 「俺がやってやんよ長男だからよお!!」 「何勝手こいてんだてめえ!」 「すっこんでろうすら馬鹿はよお!」 「しきってんじゃねえよ!」 めっちゃ仲悪いな兄弟。

2019-04-27 22:21:02
帽子男 @alkali_acid

斜めに走った雷が像を打ち据え、粉々にすると中に入っていた宝石が男の骸にめりこんだ。 ゆっくりと起き上がる死者。頬はしかし薔薇色を取り戻している。 壮年らしい体躯はみずみずしさを取り戻し、まるで成人を迎えたばかりの若者のようだ。 「ここは…」 「あなた…あなた!!」 「おまえ…」

2019-04-27 22:23:06
帽子男 @alkali_acid

蘇った夫はあたりを見回し、像にけげんな眼差しを向けてから鼻をおしつけてくる二頭の牛を撫で、次いで妻に向き直る。 「僕のために…何かまた無茶をしたのではないね」 「いいえ…いいえ…あなたのためにすることは何一つ無茶などではありません」 「お前はいつもそうだ…」

2019-04-27 22:24:45
帽子男 @alkali_acid

二人は抱き合い、幸せなキスをして終了。 めでたしめでたし。

2019-04-27 22:25:08
1 ・・ 12 次へ