[R-18]「六等分の花嫁」ってヤンキー六人兄弟が女を共有妻にする話かと思ってました

いや思うよなあ!? え、何その目…え…おっちゃんだけ? いや、だって…だってさ…。
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帽子男 @alkali_acid

ではない。 悪魔の取引には裏がある。 蘇った夫は禁足の地を離れられない。悪魔の力が世の理をねじまげて死から守っているのだから当然だ。 幸い夫は狩るのも漁るのも耕すのも得意。 雌雄の牛の助けを借りて、祭殿のまわりに畑を作り、小屋を立て、猛獣や猛禽にも打ち勝って矢羽や毛皮を得る。

2019-04-27 22:27:49
帽子男 @alkali_acid

妻も薬草を採り、糸を紡ぎ縄を縒り網を編んでとまめまめしく働く。 島の不思議な鳥獣草木魚虫について、解らないことがあれば祭殿に参り、気さくな女悪魔から託宣をたまわる。 「なんかー、その実は人間が食べたら死ぬ?みたいなー?」

2019-04-27 22:32:04
帽子男 @alkali_acid

夜には夫婦が睦み合うと、まるで男の若々しさがうつっていくかのように女の褐色の肌も張りとうるおいを取り戻し、髪は以前より黒く太くなり、骨や節の痛みは薄れて溌溂とした気持ちまで蘇る。 やがてさらなる奇跡が。 懐妊である。

2019-04-27 22:32:51
帽子男 @alkali_acid

「子供など縁なきものと思っていた私が」 「お前…なんと嬉しいのだろう。お前の子をこの手に抱けるなら、僕は次の日に死んでも悔いはない」 「やめてください。そんなことをおっしゃるのは」 なおめっちゃ元気な胎児でマミーの腹を乱打してくる。 んが無事に十月十日を迎えまして。 初産ですわ。

2019-04-27 22:35:42
帽子男 @alkali_acid

妻はすごく苦しむが何とか夫の懸命な介助のもとでひりだす。 スポーンとね。 産まれた赤ん坊はがじがじとへその尾をかみ切って、よじよじと母の足からはいのぼり、おっぱいにかぶりつく。 「これが…お前の子」 「はぁ…はぁ…あなた…どんな子ですか…」 「うむ。か、かわいい、と思う」

2019-04-27 22:37:21
帽子男 @alkali_acid

かわいいかどうかは知らんが。額の右にこぶがある。 ダディはベイビーを抱き上げ、ほほえみかけるが、すでに歯が生えてるちびはなんかめっちゃ泣く。すげー鼓膜がやぶれそうな泣き方。 あと子が父の指とかぎゅって掴むと折れそう。 「いだだだだ」 「あなた?」 「いや、元気な子だ」

2019-04-27 22:38:45
帽子男 @alkali_acid

夫はそれでも嬉しそうだ。妻も産褥の苦しみに耐えて無事で、子もめっちゃパワフルだしいう事なし。 ハッピーやね。 そして死ぬ。

2019-04-27 22:39:19
帽子男 @alkali_acid

「どうして…あなた!どうして…やっと…私達やっと…」 慟哭する妻。もの言わぬ夫。なきがらのほっぺをぺちぺちし、さらに蹴ったり殴ったりして起こそうとする子。乱暴。 母は子を抱いてよろめきながら祭殿に昇る。 「あんまりです…あの人を…今更奪うなんて」 「てか一年たったし」

2019-04-27 22:40:54
帽子男 @alkali_acid

「あ?テメー話聞いてなかったのか人間こら」 「まじ悪魔との取引なめてんのか?」 「今すぐ後追わせてやるかああん?」 六つの偶像の威迫に、疲れ切った女が膝をつきそうになる。だが腕の中の餓鬼が泣きわめき、のしかかる重い気配を押し返す。 母は我に返る。 「この子のために…せめてあと一年」

2019-04-27 22:43:11
帽子男 @alkali_acid

「おーしおし!じゃ次は次男の俺がやっからよお!!」 「はあ?テメーはひっこんでろつったろが!」 「やんのかおら!」 「てめえ粉々にスッゾ」 「スッゾ!」 だがななめに走る雷が別の偶像を打ち据え、粉々にする。 女が子を守るように抱いてうずくまっていると、背後から足音。

2019-04-27 22:44:46
帽子男 @alkali_acid

「お前…雨が降っているのに…子供と一緒にこんなところまで…二人して風邪を引いたらどうするんだい」 「あな…た」 振り返ると夫は心配そうに腕を伸ばしている。 妻はそこにそっと収まる。 二年目の暮らしが始まった。男女は一年目よりさらに強く麗しく生き生きとして、子もぐんぐん育つ。

2019-04-27 22:46:41
帽子男 @alkali_acid

そして即懐妊。 あ?避妊とかねえから悪魔の島じゃよお。 そもそもヤンキーは避妊しねーの!(します)。 悪魔のヤンキーはしない。うるせえなとにかく孕んだの。 長男が早くも立って走り回り、肉食の野生鶏とかと殴り合いで勝つ頃には、次男が誕生する。

2019-04-27 22:48:12
帽子男 @alkali_acid

尻のつけねにこぶがあるけどキニシナイ。 夫は嬉しそうに抱きあげる。妻は今回も耐えきった。 なお二人ともちょっと慣れた。 そんで男は死ぬ。すぐにな。

2019-04-27 22:49:57
帽子男 @alkali_acid

「悪魔よ…三年目を…三年目を与えてください…私はどうなってもいい…だから…」 「いいけどー。大変じゃない?」 「どれだけ大変でも構いません。あの人が…子供等を抱いて笑ってくれるなら…」 そう。女は一年、また一年と悪魔から男の命をあがなってゆく。 腹に子を宿し産むの徒引き換えに。

2019-04-27 22:52:03
帽子男 @alkali_acid

かくして実り多い六年が過ぎた。 子は六人。いずれも凶暴。仲は悪い。だが両親にはなつく。二人をいつも笑わせ、はらはらさせ、怒らせ、抱きしめさせる。 だが時間は過ぎてゆく。どれだけとどまってほしいと願っても。 「…お前やこの子等と一緒に…暮らした六年はどれだけ豊だったか」 「あなた…」

2019-04-27 22:54:29
帽子男 @alkali_acid

「僧侶も武家も、平民も奴隷も、三界のどこであれ僕ほど幸せな男はいない。だがお前に負担を強いていることだけが心苦しい」 「負担などありません」 「だが産みの苦しみに立ち会うたび、今度こそお前が命を落とすのではないかと恐ろしいのだ…六人もの子宝に恵まれれば十分だ。もう」 「でも…」

2019-04-27 22:57:00
帽子男 @alkali_acid

男は死んだ。 ここへ来て何とか延長という訳にもいかない。 悪魔の力は悪魔の力。奇跡を起こす類のあれではない。 女は泣くまいとした。伴侶の言う通り。地上のほとんどの人間よりも満ち足りた日々を送れたのだ。これ以上は求められようか。 「いや…いやです」 だが愛とは。

2019-04-27 22:58:43
帽子男 @alkali_acid

愛とは理屈や道徳で縛れるものではない。 狂気や渇望に近いものなのだ。 「あと…せめて一年…どうか…どうか…」 祭殿をのぼる。六男を抱き、ほかの五人の子は周囲を猿の如く跳び回ってついてゆく。 「あと一年…どうか」 「あー…でも兄貴達全員もう消えちゃったんだよねー」 「消えた?」

2019-04-27 23:00:44
帽子男 @alkali_acid

「うん。旦那さんに命を与えるかわりに消えちゃった感じ?」 「そんな…どうして…私は…そんなつもりでは」 「いいっていいって。うちらも言ってねーし」 「でも…あなたひとりだけを残して」 「あ、どっちにしろうちら滅びかけ?みたいな?だから最後で?こう頼られてちょっとやる気になった的な?」

2019-04-27 23:02:32
帽子男 @alkali_acid

「ほら、うちらも?戦に負けて民失って封じられるまでは人間の神様的な?あれだった訳じゃん?なんかそういうの懐かしいかなって」 「悪魔よ…いいえ女神よ…私は…私は身勝手な望みのために…あなたがたに…」 「ちがくて!まじ!めっちゃ感動したし!旦那さん愛してるだけで来ないから普通!」

2019-04-27 23:04:36
帽子男 @alkali_acid

「うっし!じゃうちがね。最後やるから?まあ女の悪魔が男の人間に入ってもうまくいくかわっかんねーケド」 「いいえ…おやめください…真実を知ったうえは…」 「いいっていいって!」 ななめに走る雷が最後の偶像を打ち据え、粉々にする。

2019-04-27 23:06:11
帽子男 @alkali_acid

夫が階(きざはし)をのぼってくる。 「おやじ」 「父ちゃんまじパネエ!」 「ぱね!」 「おゃぅじ」 「とっじゃ」 長男~五男までが父にしがみつき、六男もぐーぱーしながら喜ぶ。

2019-04-27 23:07:40
帽子男 @alkali_acid

男は皆を順に抱いてやってから、とまどうような、しかし愛しげな面持ちで女に告げる。 「またここへ来ていたのか。いつもひどい雨の日に限って。ああ…ここの神々の像はすべて砕けてしまったんだな…僕等の信じる神々ではないにせよ…どうか安らかに憩われますように」

2019-04-27 23:09:38
帽子男 @alkali_acid

幸せな一年が過ぎた。 もちろん母は第七子を懐妊した。一方、父は持てる知と技のすべてを子等に伝えた。 長男は額から角を、次男は尻から尾を、三男は息から香気を、四男は手から鋏を、五男は足から棘を、六男は腹に甲を生じさせたが、些末な話だ。

2019-04-27 23:19:54
帽子男 @alkali_acid

第七子が生まれる直前に、父は全員を集めて告げた。 「お前達は喧嘩も多いが、みな優しい母の子だ。どうか仲良く、どんな幸せも喜びも全員で分け合って…そうしておくれ」 「は?」 「ありえねーし」 「こいつらとなかよくとか」 「ねえから」 「ねーかりゃ」

2019-04-27 23:22:28
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