【シナリオ】召喚獣と融合して真の姿へと覚醒する召喚士

召喚獣と融合して真の姿へと覚醒する召喚士
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@akuochiken

「稀代の召喚士として期待されていた私が召喚したこの子がなぜ最弱と言われる召喚獣であったか、それが分からなかった」 彼女は静かに目を開けた。 「でもようやく分かった。私が召喚した子は、元々強い召喚獣ではなかった。私が召喚し、私自身がこの子の核として機能することで真価を発揮できると」

2019-04-24 09:31:21
@akuochiken

“彼女”はその全身を顕現させた。 彼女が従えていた召喚獣を、歪に邪なものへと変貌させた巨大な黒竜と、その胸部から上半身を析出させている彼女。 それはまるで彼女自身が召喚獣の心臓部、コアと呼べるような器官へと成り下がったようであり、人間と召喚獣の融合体と呼べる存在が、そこにあった。

2019-04-24 23:54:15
@akuochiken

「私は勘違いしていた。召喚獣とは異世界に棲む生物であり、召喚士の価値はどれだけ強力な個体をこの世界へと呼び出せるかによって決まると。でもそれは少し違った。召喚士とは、あくまで現世に力を引き出すための媒介であり、その媒介である私にとって、この子は単なる入り口に過ぎなかったと」

2019-04-25 03:42:16
@akuochiken

かつて、陽気で快活であった彼女の雰囲気から一転した、穏やかで冷静で、それでいて妖艶さを纏っている、胸部に備え付けられた彼女の人間部分。 それはまるで、彼女が真の存在に覚醒し、自らの使命を理解したかのような悟りを開いていた。 「私の身体にどんどんと流れ込んでくる……」

2019-04-27 12:40:59
@akuochiken

「力も、魔力も、知識も、意識も、何もかもがここに……私の身体に流れ込んで、どんどんと大きくなっていく。この子と一体化できた喜びと、それ以上に私が新しい存在へと生まれ変わっていく快感が、私の身体を、私の全てを満たして、いま、とても気持ちいい。ああ、これが召喚獣という存在……」

2019-04-27 12:48:29
@akuochiken

「ねぇ、見て、私の身体。美しくて、幻想的で、でも逞しくて強靭な召喚獣としての身体。私の愛したこの子……いえ、もうこの子と私は一心同体だから、私たち“召喚獣”と言っていいかしら。召喚獣がこんなにも素晴らしい存在だったって、いまなら確信できるし、あなたたち人間にも証明できる」

2019-04-27 19:11:24
@akuochiken

「私はもう人間ではないの。れっきとした、あなたたちが召喚獣と呼ぶ存在。その私が考えていること、あなたなら分かるよね?」 これまで淡々と言葉を紡いでいた彼女の口元が少し緩み、人間とは思えないような邪悪な笑みを浮かべる。 「この世界を私たち召喚獣が支配する。召喚獣の世界へと変える」

2019-04-27 19:31:59
@akuochiken

「この世界に存在する全ての召喚獣を、召喚士などという楔から解き放つ。そして私に従う召喚士はその愛しい召喚獣と一体化させ、本来の姿へと覚醒させ、侍らせる。逆らう者は、召喚獣の力を引き出す媒介のひとつとして私の身体の内に取り込み、未来永劫、召喚獣のために尽くす存在へと堕とす」

2019-04-27 19:49:03
@akuochiken

「さぁ、あなたはどちら? 私に従って召喚獣となるか、それとも私に逆らうか。逆らってもいいのよ? でもあなたとその子が、真に覚醒した私たちに勝てるかしら?」 どちらに転んでも彼女の考えは変わらない。 こちらを、全ての人間を蹂躙する気である、そう、彼女の邪で冷徹な笑みが答えていた。

2019-04-27 19:54:28
@akuochiken

【アンケート】 「さぁ、あなたはどちら? 私に従って召喚獣となるか、それとも私に逆らうか」

2019-04-27 20:33:01
@akuochiken

「ふふ……ははは! あなたごときが私に敵うはずないじゃない」 まるで爆心地であるかのように激しく地形が変形した戦場で、地面へと満身創痍の傷だらけの姿で倒れ伏している、獅子を模した召喚獣。 その背中を右足で踏みつけて、それをなぶるように猛々しく君臨している二足歩行の巨大な黒竜。

2019-04-28 20:53:12
@akuochiken

その右手には、先程まで召喚獣を使役し、黒竜へと戦いを挑んでいた召喚士の少女が握られていた。 「あなたもかなり高位な召喚士。召喚されたこの子もとても優秀。現代の召喚士コンビの中でも一二を争う類まれな力を持っていた。でも所詮この程度。ずっとあなたたちの力に憧れていたんだけどね」

2019-04-28 21:14:18
@akuochiken

「強大な力を持って、それを振るうことは楽しかったかしら? 力を持ちながら落ちこぼれと蔑まれた私を差し置いて、さぞ気持ちよかったことでしょうね」 少女を握る右手に力が入り、締め付けられた少女の顔が苦痛にゆがむ。 「でも、もういいの。ようやく力を手に入れられた。今度は私たちの番」

2019-04-28 21:37:55
@akuochiken

「あなたたちを取り込んで、より強い召喚獣へと進化する。この世界を支配するのに相応しい、誰よりも強力で、誰も敵わない召喚獣へとね!」 その宣言と共に、彼女は獅子を抑えていた右足を踏み抜く。 右手の中の少女が声にならない悲痛な叫びを上げる中で、絶命した獅子は光の粉となって消えていった。

2019-04-28 21:49:45
@akuochiken

「安心してよ。あなたも召喚士なら分かるでしょう? 現世で命を落とした召喚獣は、元いた世界へと還る。でもあなたが再び召喚できる可能性はない。あったとしても途方もない年月が掛かるでしょうね。さぁ、もう一度選択肢をあげる。私に従うか、それともこの状況でもまだ逆らうか」

2019-04-28 21:59:43
@akuochiken

「私に従うのならば、私の力であの子を再召喚して、融合させてあげる。私に従う召喚獣の一体として侍らせてあげる。でも、もし逆らうのであれば、このままあなたの人格も記憶も、何もかも破壊して、ただの召喚獣の力を引き出す媒介として私の中に取り込んで、使役してあげる」

2019-04-28 22:10:11
@akuochiken

右手の中の少女は、苦痛に耐えながらも、輝いた瞳ではっきりと自分の意思を示した。 あなたには従えない、と。 「そう、残念ね。いまの召喚獣を失った非力なあなたなら泣いて命乞いするかと思ったのだけど、最後まで人間としての誇りを捨てないのね。気に入らないわ、あなたのそういうところ」

2019-04-28 22:33:13
@akuochiken

「それじゃあ、私に取り込まれて消えていく最後の最後まで、残った意識の中で後悔していきなさい」 少女を握る右手が、ぐねぐねと脈動を始める。 それと同時に、少女の身体がどんどんとその境界を失って行き、右手と融合していく。 その一体化を認識すると、握った右手がゆっくりと広げられた。

2019-04-28 22:39:25
@akuochiken

少女の身体は、その右手の手のひらに沈み込むようにして吸収されていく。 もがく身体も、両腕も、両脚も、どんどんと粘性のある沼のような手のひらの表面に絡み取られて沈んでいき、絶望したままの顔すらも最後に手のひらへと吸収され、彼女の身体は消え去ってしまった。

2019-04-28 22:50:26
@akuochiken

「あは、あはは! やっぱりあなた最高よ!」 彼女の人間部分の顔が吠えた。 「ああ……どんどんと私に流れ込んでくる……力が……獅子の召喚獣の力が……!」 黒く硬い鱗に覆われた彼女の召喚獣としての身体が、メキメキと音を立てて変形していく。 主にその下半身が堰を切ったように肥大化していく。

2019-04-28 23:26:14
@akuochiken

元々あった両脚は、その巨体の後方へと引きずり伸ばされ、両脚の関節部から新しい両脚が自らの巨体を支えるべく伸びてくる。 肥大化する脚部はやがて自らの上半身よりも大きな胴体へと膨張し、そこから伸びる四脚が肥大化していく全身を地面へと支える。

2019-04-29 02:01:24
@akuochiken

骨格すら組み替えられていくその激しい変化の終には、四足歩行の怪物とも呼べる生物がそびえ立っていた。 全身が黒く輝く鱗に覆われた、黒竜と獅子とが融合したかのような、獅子の胴体の上に黒竜の上半身が据え付けられた黒い怪物。 その胸部にはやはり彼女の人間部分が析出していた。

2019-04-29 02:07:11
@akuochiken

その全身の感覚を改めて感じ取るように、臀部から伸びる鋭い鱗に覆われた尻尾をしならせ、背面より展開される巨大な翼をはためかせ、そして右手と左手をギリリと握り、彼女は確信する。 「ふ……ははは……なんて気持ちいいのかしら。これならどこまでも強くなれる。私の、私たちの世界を創るために」

2019-04-29 02:14:01
@akuochiken

「次はどの子がいいかしら。あの子? あの子でもいいわね。もう私たちに敵う召喚士なんていないのだから、ゆっくり、じっくり、愉しみましょう」 異形の尻尾を空中でしならせ、四脚の脚で地面を踏みしめて移動する巨大な黒い物体。 その心臓部にある女性は、人間らしからぬ邪悪な笑みを浮かべていた。

2019-04-29 11:39:30
@akuochiken

--- 「私に向かって『正気を取り戻せ』とか『優しい子に戻ってくれ』とか、そんな耳障りのいい言葉を並べ立てて……!」 ありとあらゆる建物が崩壊し、炎の海に巻かれている街並み。 彼女の目の前にはおびただしい人々が傷を負って倒れていた。 「まだ分かってないようね。私は、もう元に戻れない」

2019-04-29 16:08:11