ストレイトロード：ルート140（41周目）
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Rista_Bakeya
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Rista(化屋月華堂)
@Rista_Bakeya
同じ高さの屋根ばかり並ぶ平坦な街で、住民達が巨大な影を見上げる。移住を推進する施策によって集まった人々らしい。「水害も怪獣も来ないと言うから引っ越したのに」藍が導く風に乗って侵略者は去っていく。「できるだけ遠くに送るからもう戻ってこないはず」何もない土地と認識してくれればよいが。
2019-03-26 18:54:02
Rista(化屋月華堂)
@Rista_Bakeya
ある怪物の解剖写真が出回っているとの話は藍も把握していた。「さっき送ってもらった、これでしょ」端末を見せられた。新発見を謳う画像には魚類のような背骨が写っている。功を焦る者が見たら空の侵略者を脊椎動物の一種と断定しそうだが。「これが丸呑みした魚の骨だったら、それはそれで大変よね」
2019-03-27 18:50:22
Rista(化屋月華堂)
@Rista_Bakeya
出版社は読み手が減った時代を生き抜くのに必死なのだろう。私達がメールで届いた原稿に目を通す間にも制作は進んでいた。「君のおかげでいい本が出来た」藍に装丁の見本を差し出した編集者はもう完成したような口振りだ。翼の形をした雲の写真は美しいが、中身が釣り合わないと彼女はいつ言い出すか。
2019-03-28 18:44:29
Rista(化屋月華堂)
@Rista_Bakeya
道路上からは箱型の建物に見えたが、裏に回ると外壁の一部を残して無惨にも破壊されていた。住民によれば何年も前、巨大な生物がひたすら体当たりを繰り返してこうなったという。「羽は生えてた？」「それっぽいものは一応」「他に特徴は」「なんか硬そうで、その……」詰め寄る藍に住民は怯えていた。
2019-03-29 19:37:29
Rista(化屋月華堂)
@Rista_Bakeya
車に積んできた怪物の部位を引き渡した。藍が保存用の液体に浸した皮を見て、顔をしかめた。「これ、縮んでない？」「そういうこと」研究員が同じ皮の入った袋を手にした。真空パックの中身には別の変化が起きているらしい。「縮む条件を探す間にも新発見が盛りだくさんだろうな」獲物を見つけた顔だ。
2019-03-30 19:19:44
Rista(化屋月華堂)
@Rista_Bakeya
伏せていたはずの目的地に深紅の女が待ち構えていた。「理解ある人が教えてくれたの。危険な戦いに挑む気だって」「ホテルの従業員に彼女の支持者が紛れていたようです」解説すると藍の声が冷たくなった。「あの話が全部筒抜けってこと？」話した内容は忘れてよさそうだ。魔女はもう計画を変えている。
2019-03-31 18:45:03
Rista(化屋月華堂)
@Rista_Bakeya
岩と霧ばかりの山道を藍は突き進む。人の家の令嬢に何かあればと心配するのは私だけだった。「見て」霧が晴れた。雲を纏う山の斜面を日差しが照らし、白い花の絨毯が現れた。「天国ってきっとこういう場所だと思うの」流れる雲の端に麓の村が見えた。道を教えてくれた人々の和やかな表情を思い出した。
2019-04-01 19:23:43
Rista(化屋月華堂)
@Rista_Bakeya
140文字で描く練習、2019。天国。 数え間違いがなければ、話数が西暦に追いつきました。しかも歴史に大きく刻まれるこの日に。 というわけで新元号「#令和」の意味から拾った2文字も加え、三題として書いてみました。
2019-04-01 19:23:43
Rista(化屋月華堂)
@Rista_Bakeya
風に煽られ谷底へ落ちた個体が空に戻らず村に近づいている。調査を頼まれた私達はそれが凶暴でないと確認すると、藍が招く風で飛翔を促してみた。だが翼を広げようともしない。「震えてる」近年知られるクリーチャーの中では特異と言うべき性質を見つけた瞬間だった。「あの子、冷たい風に弱いみたい」
2019-04-02 19:00:44
Rista(化屋月華堂)
@Rista_Bakeya
あの大きな飛行生物を何と呼ぶか。出現当時から様々な提案が飛び交ったことは知っていたが、記録にまとめられた候補の数は想像以上だった。「これなんてペットの名前みたい」「それは特定の個体に名付けたもののようです」私が脚注を読むと、藍は記録の制作者を見た。「数を増やせばいいと思ってる？」
2019-04-03 19:08:26
Rista(化屋月華堂)
@Rista_Bakeya
「例えば、さっきから吹いているこの風」刺客は前髪を固めているのか、彼の周囲だけ何もなびかない。私の眼前に突き出された刀の先端も全くぶれない。「偶然を自分の手柄にするのは簡単」藍の吐息に苛立ちが表れている。「いつからこれを彼女の仕業だと認識している？」「答えたらクビよ、ゼファール」
2019-04-04 18:58:14
Rista(化屋月華堂)
@Rista_Bakeya
避難所には定期的に物資や支援が届くが、皆の顔は暗い。別種による二度の襲撃を経て、ある種の諦めがシェルター全体に根を張っていた。「あげる」幼い子供が食料を配っていた藍の袖を引いた。一粒の種が魔女の手に渡る直前、後ろで叫ばれた。「それが何になるの」振り向くと子供の親が泣き崩れていた。
2019-04-05 20:21:51
Rista(化屋月華堂)
@Rista_Bakeya
制止を振り切り階段を下りた先で藍は足を止めた。熱帯魚を入れた無数の水槽を青白いランプが照らしている。「避難しなかった理由はこれ？」発電機も無数のボンベも今なら説明がつく。「友達のも、います。逃げ場ないから」熱帯魚の鰭は輝くが、秘密基地の主の顔は暗い。飼育放棄も盗難も人間の仕業だ。
2019-04-06 18:48:49