ドイツの詩を解釈するシリーズ「Bei einer Linde」(菩提樹の下で) Interpretation, Analyse
- GedichtTan
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菩提樹のもとで(Bei einer Linde)の解説をするよ。 詩へのリンク: textlog.de/22684.html もう一度貼っておくね。 pic.twitter.com/psiVTL88oP
2019-05-03 21:50:38ここから3つのスレッドにわけるよ。 1つ目は語彙、2つ目は修辞技法や形式についての分析。3つ目は内容の解説だよ。
2019-05-03 21:51:21語彙
とりあえず、辞書をひいても分かりづらいだろう単語ばかり書いていくね。他にも質問があったら迷わず訊いてね!
2019-05-03 21:52:05Trieb: 1.衝動 2.(木の)芽 Liebe: 1. 愛 2.恋人(俗語) Bug: おそらく「腕」か「曲がり方」という意味。 verwachsen: (傷が)閉じる。傷跡は残っている場合と消えている場合とがあるよ。消えてないという意味だと解釈する人もいる。 Stamm: 木の幹
2019-05-03 21:52:48Zug: 「筆跡」とか「文字のライン」という意味もあるよ。 weilen: とどまる zuwachsen: (傷が)閉じる。過去形: wuchs zu wachsen: 大きくなる、発展する、成長する、など wohl: ここでは「きっと、おそらく」 niemals mehr: もう〜ない hienieden: この世
2019-05-03 21:53:14あとはこれも載せようかな。 wiedersehen: 再会する(Seh ich dich wieder? = 私はおまえと再会しているのか?)
2019-05-03 21:53:37形式
形式と修辞技法について。 この詩は、それぞれ4行からなる3つの詩行連(Strophe)からなっている。 Kadenz(それぞれの詩行の最後の音節の抑揚): 揚抑揚抑(mwmw)の繰り返し。 Kadenzが交互になっていることをドイツ語でalternierende Kadenzenとか、 alternierend angelegte Kadenzenとか言うよ。
2019-05-03 21:55:32Metrum(韻脚。リズムのこと): Jambus(抑揚格) 備考: ◡— このリズムはドイツ語に合っているみたいで、抑揚格で書かれた詩はとても多いよ。
2019-05-03 21:56:48いわゆる"Volksliedstrophen"。
修辞技法・レトリック
上2つ、順序が逆のほうがよかったね。 ドイツ語では詩行をVers(複数: Verse)と言うよ。 V.1なら「一行目からの引用」を示し、 V.1fなら「一行目から次の行までからの引用」 V.1ffなら「一行目から二行以上にわたり引用した部分が続いている」 ということになるんだ。
2019-05-03 21:57:55疑問(修辞疑問ではない)V.1ff メタファー V.3 "Traum"(夢) Exclamatio V.5 メタファー V.11 "Wunde" (傷) アンチテーゼ V.6 verwachsenと V.11 wuchs nicht zu 他にも愛の象徴「菩提樹」とか「春 V.3」とかがあるよ。
2019-05-03 22:00:15「菩提樹のもとで」は、ロマン派の詩人ヨゼフ・フォン・アイヒェンドルフによる詩だよ。 アイヒェンドルフはロマン派の詩人の中で一番有名な人の一人で、彼の詩を一編も読んだことのない高3なんて一人もいないんじゃないかな。
2019-05-03 22:01:13アイヒェンドルフの代表的な詩には、Mondnacht(月夜)などがあるよ。声楽が好きな人なら、これのシューマンによる歌バージョンを聴いたことがあるかも。 彼の詩の特徴は使う言葉の素朴さと形式の簡単さかな? で、それは「菩提樹のもとで」でも同じだよ。
2019-05-03 22:02:52とりあえずロマン派の典型的なテーマやモチーフを列挙するよ。 ・愛 ・自然(との繋がり) ・死 ・音楽 ・憧憬(遠いものなどへの) ・現実⇔夢 ・幻想 ・(理想を目指す)旅 ・不安 ・永遠 この中のいくつかは今回紹介する詩にも登場するよ。
2019-05-03 22:04:04内容
詩の要約: 1.語り手は一本の菩提樹を前に、「これは昔自分が付き合っていた初恋の女性の名前を彫り付けた、あの愛する木なのか?」と疑問に思っている 2.木に付けた傷は、癒えてあの女性の愛のように消えてしまったようだ。木の見た目も随分変化した。
2019-05-03 22:04:353.「自分自身も当時から何もかも変わってしまったが、失恋による心の傷は癒えない(むしろ広がった)。そしてこの世で癒えることはないんだろう」
2019-05-03 22:04:51