ギア・ウィッチクラフト #4

ネオサイタマ電脳IRC空間 http://ninjaheads.hatenablog.jp/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(これまでのあらすじ:シュヴァルツヴァルトの夜に怪奇現象あり!巨人騎士と亡霊が徘徊し、カタナ・オブ・リバプール社の兵士が犠牲になっている。これは森の地下空洞に眠る「ギンカク」への物理干渉に端を発しているという。ゆえに今、ギンカクを目指す者、2方向より有り)

2019-05-03 22:06:22
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(一方はコルヴェット……チェコはデジ・プラーグの魔女に要請されてこの地を訪れた詩人、作家、冒険魔術師だ。彼は道中、フェイタルという名のニンジャと行動を共にした。彼女はヤナマンチ社の傭兵であり、部隊全滅の中で更なるキンボシを求めていた。もう一方は……カタナ社のブラックヘイズである)

2019-05-03 22:08:36
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(本社より強行偵察任務として派遣されたブラックヘイズは早くも現地部隊の救援と合流を果たす。シュルツ部隊長は事のあらましを報告するとともに、全滅した第一発見部隊が「ギュンター博士」なる人物を同行させていたと伝えた。彼は何者なのか?重要人物と思しき彼の保護が最優先か……!)

2019-05-03 22:12:58
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……で、お前はヤナマンチの保護を求めている、と」「……ヤー(はい)。その通りです」初老の痩せた男は、ややおびえた様子で視線を彷徨わせた。「これ以上、カタナ社の非人道行為に加担するわけにはいかない」フェイタルとギュンター博士のやり取りを、コルヴェットはじっと見守っている。 1

2019-05-03 22:17:05
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「非人道行為ね……」フェイタルは鼻を鳴らした。「ウチも大概だぞ?給料も渋いしな」「雇ってもらいたいという事ではないのです」ギュンター博士はフェイタルの皮肉をそのまま受け止めた。「私が彼らのもとに居れば、利用される。我が故郷の土を、このような形で踏みたくなかった」 2

2019-05-03 22:20:46
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

フェイタルとコルヴェットは無言で視線をかわした。続けて問うた。「お前はカタナ社の部隊に要請されて、この地の調査を?」「ヤー」「何が専門だ」「オヒガン理論です」「オヒガン」フェイタルは顔をしかめた。ギュンター博士は己の学問の正当性をアッピールする機会だからか、前のめりになった。 3

2019-05-03 22:27:08
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「オヒガンがオカルトの手慰みであった時代は月破砕と共に終わりました。古代よりその存在が認知されている人類の集合無意識野、これは現代テクノロジーの礎であるインターネットと相似し、それゆえ今や分かち難く融合しており……」博士は咳払いし、赤面した。「エントシュルディゲ(すみません)」4

2019-05-03 22:31:53
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「社会性ってやつも持っている博士だな、お前」フェイタルは笑った。博士は繰り返し咳払いした。「学問自体は新興で、いまだ異端の誹りをうけます。しかしこの分野を研究してゆかねば、激変する世界に人類は対応しきれなくなります。エメツ経済がこれほど急拡大してしまうと、もはや待ったなしです」5

2019-05-03 22:35:04
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ギンカクだな?貴殿を連れたカタナ社の目的とは」コルヴェットが口を挟んだ。単刀直入であった。その言葉を耳にするや、ギュンター博士は蒼ざめた。「何故そのタームを……?ま、まさか貴方がたは実際カタナ社の……!」「違う、違う。早とちりするな」コルヴェットは遮った。「魔女の伝説よ」 6

2019-05-03 22:38:03
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「魔女……!ではチェコのジプシー・ウィッチの!」「成る程、オヒガン理論の学者殿というのは間違いなしといったところか。いや、試したわけではないがね」「そうか、無限遠から!ではやはり、カタナ社のギンカク搾取を危惧されて!?」「全くその通り、その通りだ」「トール(すごい)!」 7

2019-05-03 22:41:11
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

フェイタルが(私が訊き役だぞ)という目でコルヴェットを睨んだ。コルヴェットは肩をすくめた。ギンカク搾取、という言葉が引っかかった。こちらから言わせた言葉ではない。事態は相当に深刻そうだった。彼は続けて問う。「では貴殿はカタナ社のギンカク調査の部隊に組み込まれ、そして……逃亡を」8

2019-05-03 22:45:04
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「然り。もともと、学術的調査の名目だったのです。カタナ社の本質を知らず、意気揚々と参加した私が愚かなものでした。蓋を開けてみれば……彼らはギンカクから無尽蔵にエネルギーを引き出すすべを探っている……それを戦略兵器に転用する意図があるのです。嗚呼!私は恐ろしい!」「で、逃げた?」9

2019-05-03 22:50:10
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

二人がギュンター博士と鉢合わせたのはほんの数分前の事だ。戦闘地点からさほど離れぬ場所で、泥と草にまみれた彼がウサギめいて藪から飛び出してきたという寸法だ。「ギンカクは古代の物理的セキュリティ・システムによって護られていました。カタナの兵士は攻撃を受けた。その隙に逃げたのです」10

2019-05-03 22:53:02
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「例の神聖ローマ騎士やら亡霊やらだな」「既に遭遇しておいででしたか」ギュンター博士は目を伏せ、頭を抱えた。「冒涜がこの事態を引き起こした。罰なのです。そして私はそれに加担してしまった……!」「具体的には何をやったんだ?暴いただけか?」コルヴェットは注意深く掘り下げた。 11

2019-05-03 22:56:42
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ギンカクは……」ギュンターの声がか細くなった。「……人が触れてはならぬものです」「だろうな」「比喩の話のみならず、完全にそれが証明されたのです。悲劇によって」「もったいつけるなよ」フェイタルが急かした。博士は続けた。「石は電磁障害を引き起こします。近づくに従い、それは強まる」12

2019-05-03 23:02:21
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ふうん。機械の類がオシャカか」「数十メートル範囲内で、電子機器は全て破壊されます。しかしカタナの兵は危険を冒して接触を試みました。よろしいですか、ギンカクは黒い石碑で、銀の霧を周囲に発散している。その周囲1メートルに接近すれば、人は死にます」「死ぬ?」「即死します」 13

2019-05-03 23:06:12
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「何故」「原因を突き止める事すら難しいというのが実際のところです。果敢にも手で触れたカタナ社員は意味を為さない絶叫を発したのち、心停止しました。その後、石のサイズを測ったり、機器取付けを試みた作業員達四人が不調を訴え、15分ほどで死に至りました。……そして甲冑が……動き出した」14

2019-05-03 23:09:24
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「その手のレリックは注意深く取り扱うものだ」コルヴェットが言った。「そういう時はそれこそ、オヒガンによく通じたニンジャを連れて行くだとか……ああ、当然俺は違うぞ。俺はどちらかというと手品師寄りの魔術師であるからして……」「魔術師が独占する秘儀ですな」博士は非難がましく言った。 15

2019-05-03 23:13:21
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「彼らがその秘密を開示していれば、今回のような破滅的事故も起こらなかったでしょう。エメツ経済が拡大し、もはや秘密主義は弊害となっている」「見解の相違はあろうな」コルヴェットは言った。「野放図な濫用の呼び水とならぬよう、奴らは黙して語らんのだ。それはそれで世界に対する善意よな」 16

2019-05-03 23:18:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「で、暇を持て余したお前達がべらべら喋っているうちに、目印の石碑だ」フェイタルがやや前方でしゃがみ込むと、そこには苔むしたチュートン・オジゾウがあった。「ここから北東北方向に、ギンカクの地下空洞?」「はい」「お前は臆病なのか大胆なのかわからないな、ギュンター=サン」「臆病です」17

2019-05-03 23:24:08
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「しかしまあ確かに、このまま放置に任せるわけにもいくまいて。このシュヴァルツヴァルトが呑気な企業戦争の地から一転、闇のロンドンに匹敵する魔窟と化してしまう。俺も博士の決断は尊重したい。止める方法があるのだな?死なぬ程度の努力で?」「はい。引き金となった行いを遡れば、必ずや」 18

2019-05-03 23:28:07
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ロンドン・アイを見たことがあるか、詩人殿」「じかに目にした事はない。幸いにな」「私はある」「なんと!あの監視の魔眼をか!?ヤナマンチの仕事で?」「そういう事だ。愚かだろ」「愚かよ」「それが暗黒メガコーポだ。私もうんざりしていてな」「そうかね」コルヴェットはフェイタルを見た。19

2019-05-03 23:32:29
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

傭兵の言葉には、なにか含むものがありそうだった。コルヴェットは詮索しなかった。フェイタルがギュンター博士の示唆どおりヤナマンチの増援を呼んだのかも判然としないが……モータルの兵士が増えて混乱の元になるよりは、実際彼らニンジャ二人で解決してしまうのが、話が早い……。 20

2019-05-03 23:37:07