『東京もチェルノブイリ第三区分入りが濃厚に』 は過大評価。きっと。

ちょっとした騒動を巻き起こしているブログ記事「文科省ようやくWSPEEDI予測値(広域汚染状況)の一部を公表:東京もチェルノブイリ第三区分入りが濃厚に http://bit.ly/k59JbN 」についての検証。 検証に用いたのは、東京都新宿区百人町での実測データ( http://bit.ly/g3eade )と、幾ばくかの「知恵」のみ。 得られた結論は、『少なくとも新宿区百人町はチェルノブイリ第三区分入りしてないっぽい』。
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Masato Ida, PhD @miakiza20100906

WSPEEDIの結果を元にした『東京もチェルノブイリ第三区分入りが濃厚に http://bit.ly/k59JbN 』。実測値を元にした僕の試算と比べると、Cs137の蓄積量は7.3倍も多い。僕の評価法は →  東… (cont) http://deck.ly/~QXkmp

2011-05-15 00:54:50

↑ リンク切れしてしまっている2つ目のURLは
  http://www.tweetdeck.com/twitter/miakiza20100906/~QXkmp
リンク先の内容は以下の通り:

WSPEEDIの結果を元にした『東京もチェルノブイリ第三区分入りが濃厚に http://bit.ly/k59JbN 』。実測値を元にした僕の試算と比べると、Cs137の蓄積量は7.3倍も多い。僕の評価法は →

 東京都健康安全研究センターが提供する東京都新宿区百人町での実測データ( http://bit.ly/g3eade )を元に、原発事故時から5月初頭までのCs137の積算降下量を試算してみる。あくまで大雑把に。

『都内の降下物(塵や雨)の放射能調査結果 http://bit.ly/ebNAao 』より、

◆ Cs137の積算降下量 6,986 Bq/m2
◆ Cs134の積算降下量 ≒ Cs137の積算降下量
 (※ 3/18朝から5/13朝までの蓄積)

示されるデータを見る限り、Cs137とCs134の降下量はほぼ同じである。したがって、以下では簡単のため、Cs137とCs134の降下量は「いつの時点でも同量」であったと仮定する。

残念なことに、このデータ( http://bit.ly/ebNAao )には最初の大降下があった3/15のデータが無い。したがって、何らかの方法でこれを補足してあげる必要がある。以下では、事故以前から取られている線量データ( http://bit.ly/i6rnT1 http://bit.ly/ek4ZrX )を用いて補足してみる。

用いる線量データは以下の3つ:

◆ 各日時での線量データ
・平常時 約 0.034μSy/h (a)
  → 事故前の線量
・3/20夜 (0.045-ε)μSy/h; ε> 0 (b)
  → 3/21未明に線量が再上昇する直前の最低線量
・5月初頭 約 0.067μSy/h (c)
  → 短半減期核種がほぼ十分に減衰したと思われる時期の線量

これらの内、(c)と(a)の差をとれば「Csの全蓄積量」からくる線量上昇をおおよそ求めることができる:

・(c)-(a)=0.033μSy/h (e)
  → Csの全蓄積量からくる線量上昇

また、(c)と(b)の差をとれば降下量データの存在する「3/21以降のCs蓄積量」からくる線量上昇をおおよそ求めることができると思われるが、3/20夜の時点では3/15に降下した短半減期核種が十分に減衰しておらず、Csからくる寄与を過大評価する可能性が高い。そのため、(b)には ε(> 0)を入れてある。(c)と(b)の差は:

・(c)-(b)=(0.022+ε)μSy/h (f)
  → 3/21以降のCs蓄積量からくる線量上昇

ここで一旦整理:

◆ Csの全蓄積量からくる線量上昇が 0.033μSy/h
◆ 3/21から6,986 Bq/m2ずつ蓄積したCs137とCs134からくる線量上昇が (0.022+ε)μSy/h

これらより、Cs137の全蓄積量は

・6,986×[0.033/(0.022+ε)]
  = 10,479 Bq/m2 (ε=0の時)

ε> 0であることから、10,479 Bq/m2以上にはならない。よって、

◆ Cs137の全蓄積量 10,479 Bq/m2以下

というのが実測値を元にした僕の評価。

この値は、先のブログで示される(最悪の場合の)評価値 77,000 Bq/m2 の『1/7.3 以下』で、Ci/km2単位に直すとおおよそ『0.28 Ci/km2』以下。これはチェルノブイリ第三汚染区分とされる1~5 Ci/km2( http://bit.ly/k59JbN )よりは低い。

以上、あくまで大雑把な見積もり計算として。

※ 計算や考え方に間違い等ありましたらtwitterでご意見くださいませ。
※ ここで示したのは、あくまで東京都新宿区百人町での話。
※ 安全厨ではないですので、念のためw

以上

Masato Ida, PhD @miakiza20100906

東京都新宿区百人町の実測値から得られた推測・結論は 【1】Cs137の全蓄積量は 10,479 Bq/m2以下; 0.28 Ci/km2以下; ブログに示される最悪値の1/7.3以下。 【2】チェルノブイリ第三汚染区分(1~5 Ci/km2)には入らない。 #genpatsu

2011-05-15 05:01:49
Masato Ida, PhD @miakiza20100906

なお、ここで示した結果は独力によるもので、まだ誰の検証も経ていないものであることに御注意 マジで。 ただし、少なくとも「大きくは外していない」と思っています。その理由は次の通り:

2011-05-15 05:04:41
Masato Ida, PhD @miakiza20100906

(1) 3/21からの実測積算値 6,986 Bq/m2(Cs137)が存在すること。 (2) 線量プロファイル( http://bit.ly/i6rnT1 )を見る限り、事故時(3/11)からの積算量が 6,986 Bq/m2 の何倍にもなるとは到底考えられないこと。

2011-05-15 05:06:04
Masato Ida, PhD @miakiza20100906

そもそも、このWSPEEDIによる計算結果( http://bit.ly/mcmNJo )は「どういう条件を『仮定して』行われたものか」すら満足に明かされていないもので、今のところ、そして恐らくこの先も、信用するに値しません。

2011-05-15 05:16:53
Masato Ida, PhD @miakiza20100906

 《 何故このような誤解を招くシミュレーション結果を満足な説明もなしに公表したのか 》  そこが一番の謎。

2011-05-15 11:43:56
Masato Ida, PhD @miakiza20100906

僕が行った検証について、計算や考え方に間違いを見つけた方がおられましたらお気軽にご連絡ください。 @miakiza20100906

2011-05-15 11:58:27
Masato Ida, PhD @miakiza20100906

考え方について、ちょっと解説: ポイントは赤矢印と青矢印の長さ http://bit.ly/kJS289 (← このグラフ http://bit.ly/i6rnT1 の縦横比を変え、編集したもの)

2011-05-15 15:41:01
Masato Ida, PhD @miakiza20100906

「3/21日からの降下分 6,986 Bq/m2」からくる線量上昇を赤矢印のようであるとすると、「3/15~20の降下分」からくる線量上昇は青矢印のように表される。青矢印は赤矢印より短く、したがって、全蓄積量は6,986 Bq/m2の2倍や3倍などにはなりえないと考えられる。

2011-05-15 15:45:04
Masato Ida, PhD @miakiza20100906

さらに、3/20夜の時点ではまだ短半減期核種が減衰しきっていないはずなので、Csの寄与だけを抽出する場合には、(b)線をもっと下に引かなければならない。すると、赤矢印はもっと長く、青矢印はもっと短くなる。そして、全蓄積量の推定値は10,479 Bq/m2よりさらに小さくなる。

2011-05-15 15:45:53
Masato Ida, PhD @miakiza20100906

もう一つ補足( http://bit.ly/jIrHtE 図)。 ここでは半減期の長いCsが地面に落ちた量だけを問題にしているので、半減期の短い核種の影響(緑矢印)や、風に乗って通過していっただけの浮遊物からくる影響(濃い青矢印)は可能な限り排除するようにしています。

2011-05-17 19:42:25
Masato Ida, PhD @miakiza20100906

ついでに、WSPEEDIの技術面に関する疑問: これ( http://bit.ly/mcmNJo )の3ページ目の結果を見ると、(計算上の)放射性物質密度の値は100から10,000,000までの非常に広い範囲に渡っている。しかし、

2011-05-18 21:20:00
Masato Ida, PhD @miakiza20100906

こういう密度分布が現れるケースの場合、流体計算で精度良く解くのは大変なはず。何故かというと、密度の大きい領域で発生した「小さな」計算誤差が数値拡散によって低密度領域に伝わると、その領域では非常に「大きな」計算誤差になってしまうから。

2011-05-18 21:20:57
Masato Ida, PhD @miakiza20100906

例えば、密度1,000,000の領域で発生したわずか0.01%の誤差(100)は、密度100の領域に伝わると100%の誤差(100/100だから)になってしまう。これは計算格子を使ったオイラー的手法でも、粒子を使ったラグランジュ的手法でも同じなはず。

2011-05-18 21:22:29
Masato Ida, PhD @miakiza20100906

というわけで、、低密度領域での計算精度は保証されてるんだろうか? もしかして、放射性物質密度ρではなく、logρの時間発展を計算するようなことをしてるのかな?

2011-05-18 21:30:33
Masato Ida, PhD @miakiza20100906

一応、数値シミュレーションは専門の一つなので、こういう技術的なところも気になる訳ですよ。。

2011-05-18 21:31:10
Masato Ida, PhD @miakiza20100906

(忘れかけた頃に)百人町での放射線測定について 【1】測定方法など http://bit.ly/iQU0Dy ← 一番下に測定高さの影響についての解説アリ!

2011-05-19 19:33:37
Masato Ida, PhD @miakiza20100906

(忘れかけた頃に)百人町での放射線測定について 【2】『都内各地の測定結果を同じスケールで比較.百人町はむしろ高め http://bit.ly/jYFw2r 』 by 早野教授

2011-05-19 19:34:41
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Masato Ida, PhD @miakiza20100906

でも、都内でもどこかにホットスポットが出来ていないか、少し気になるよね~。

2011-05-19 19:36:03
Masato Ida, PhD @miakiza20100906

教えてもらった日本分析センター千葉本部(千葉県千葉市)のデータ http://bit.ly/eADK6Y 良いな。最初の大降下があった3/15の分も含まれてる。こちらだとCs137の積算降下量は、5,069.7 Bq/m2 。

2011-05-24 20:22:50
Masato Ida, PhD @miakiza20100906

チェルノブイリ事故の汚染区分についての分かりやすい資料 『土壌汚染問題とその対応 河田東海夫 http://bit.ly/kTznHR 』の14ページ。

2011-05-28 21:48:48
Masato Ida, PhD @miakiza20100906

37,000~185,000 Bq/m2 (1~5 Ci/km2) ― 「『汚染地域』 キエフなど大都市を含み、500万人以上が住んでいる。欧州でも、スウェーデン、ノルウェイ、フィンランド、スイス、オーストリアの一部で37 kBq/m2以上の汚染が発生」

2011-05-28 21:50:30

↓ リンク切れしている下の2つはこれ: http://www.jaea.go.jp/jishin/kaisetsu03/kaisetsu03.htm

Masato Ida, PhD @miakiza20100906

『福島第一原発 事故発生後2ヶ月間の日本全国の被ばく線量を暫定的に試算 (原子力機構) http://t.co/qBHEUwp 』 WSPEEDIによるシミュレーション。解説付き。 #genpatsu

2011-06-15 20:05:51