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ギア・ウィッチクラフト #8

ネオサイタマ電脳IRC空間 http://ninjaheads.hatenablog.jp/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「辞める?ハハァ、それで救援要請を渋っていたというわけか。フェイタル=サン」コルヴェットの言葉に、フェイタルは曖昧に頷いた。「さあな。ま、色々と考えてはいたさ」「味方と考えていいのだな、ブラックヘイズ=サン」今度はブラックヘイズに尋ねる。「少なくともこの件を片付けるまでは?」1

2019-05-18 18:14:45
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「味方の意味にもよるが、協力はしよう」ブラックヘイズはカタナの企業戦士を見た。「カタナ・オブ・リバプールはヤクザのゴロツキではない。退職意志を示した者にいきなり攻撃を仕掛けるような不粋なマネはするまい。そうだろう、シュルツ=サン?」「強行偵察隊の事情はあずかり知らぬが……!」 2

2019-05-18 18:18:33
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

『辞表は私のほうで預かっておこう、ブラックヘイズ=サン』IRC通信が届いた。ブラックヘイズは眉一つ動かさない。「預かるとは?」『急な話ゆえにな。君のサイバネティクスは高度にシャナイ管理下にある。"鷲の捕獲" は月のアマクダリ・ウェポンであり、所有権が……』「受け取れ、シュルツ=サン」3

2019-05-18 18:22:27
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「なワッ!」シュルツの手の中に、投射機構ごと外されたオリハルコンの網が無雑作に放り出された。「困りますぞ!」「お前を男と見込んで預けておく。短い同行だったが、お前は気持ちのいい男だ、シュルツ=サン。戦う理由もない。このまま中立の立場で場を収めるとしよう」「ムム……!」 4

2019-05-18 18:27:59
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「隊長」「隊長、どうしたら……」ギンカクの破滅的エネルギーによって相当に疲弊した企業戦士たちは不安げにシュルツの指示を仰いだ。シュルツはシュルツブレードをわななかせた。『フランク・シュルツ=サン。これは高度なマターだ』IRC通信は彼のアカウントに投じられた。『彼を捕獲してほしい』 5

2019-05-18 18:31:19
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「然り……カタナにフランク・シュルツあり。シュルツ家の家督を継ぐ騎士にして企業戦士。それが私だ」彼は俯き、呟いた。ブラックヘイズは油断なきカラテ姿勢をとる。企業戦士は銃口をブラックヘイズに向ける。シュルツは……片手を挙げた。「この地の指揮権は現在、私にある。私が現場のトップよ」6

2019-05-18 18:33:30
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

『……』IRCの沈黙。シュルツの言葉は正論である。強行偵察隊は独自行動の権限を持つ社内エリートであったが、こうした時に弱い。カタナ企業戦士たちの銃口は一斉に上を向いた。ブラックヘイズは頷いた。「……賢明だ。全滅する事になる。そこの元ヤナマンチのニンジャは俺以上に容赦がなく残忍だ」 7

2019-05-18 18:36:30
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ギンカクとやら、私の見立てでは破滅と破壊を専ら引き出す呪物。ギュンター博士なる胡乱者の甘言に囚われ、第一部隊を襲った事態、まこと取り返しのつかぬ、いたましき惨劇と言えよう。報告書をまとめねばならぬ」「……その認識、間違ってはおらんよ。本当にな」コルヴェットが言った。 8

2019-05-18 18:41:38
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

もとより、これは作戦行動中に偶然見出されたレリックだ。ギンカク搾取を積極的に推し進める主体がぽっかり消えたのが今のカタナ社だ。コルヴェットはそうした事情は知らぬが、彼らの消沈したありさまに何かを感じ取った。「やめておけ。犠牲多く益無し。デジ・プラーグとして親書を書いてもよい」 9

2019-05-18 18:45:20
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

……かくして、空洞からの撤収が始まった。被害の大きさと得られた利益の乏しさに、少なくとも現場のシュルツ隊長は極めて慎重な姿勢をとった。ひとまずは良し。だがカタナ・オブ・リバプールという巨大な暗黒メガコーポが、このギンカクに関する報告書を前に、素直に手を引いてそれきりとは思えぬ。10

2019-05-18 18:50:50
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

真に面倒なのはこれからだろう。デジ・プラーグの<無限遠>はEURO戦闘領域であるこの場所に、どこまで関わる事ができるか。そして、あのヴィジョン。極めて不吉な数々の記憶断片。コルヴェットはその場に残り、撤収する企業戦士を最後まで見届けながら、暗澹たる気持ちであった。 11

2019-05-18 18:53:46
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ブラックヘイズ=サン。貴公の事をさほど知らぬが、まずは感謝したい」コルヴェットはブラックヘイズに声をかけた。「貴公があの場でカタナ側に立ち続けておれば、カタナは私の警告など聞きはせなんだろう。胡乱市民の抵抗など、踏みつぶせばよいだけだからな。危ない橋を渡ったわ」「だろうな」 12

2019-05-18 18:58:41
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……平気かね」「何がだ」「簡単に辞められるものなのか、傭兵とは?」「ああ、だからこそ傭兵をやっている。給料分の働きはした」ブラックヘイズは挑戦的に言った。コルヴェットではない何者かに語り掛けているようだった。「俺の雇用契約はそもそも瑕疵が多い。従う義務など、はなから無いのだ」13

2019-05-18 19:01:13
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「本当か?甘いな、お前」フェイタルは鼻を鳴らした。「私はお尋ね者扱いを覚悟しているがな。知った事ではないが」「この後どうするつもりだ?」コルヴェットは尋ねた。フェイタルは肩をすくめた。「さあな。バカンスでもするか、マンチ社の敵対企業に移るか。デルタ・シノビなんてのもある」14

2019-05-18 19:06:23
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

しんがりの企業戦士達と共に、三人のニンジャは地下空洞を後にした。シュルツ隊長は厳めしくブラックヘイズに頷き、別れのアイサツをした。シュルツの表情は複雑だった。だが、その別れは穏便で、ある種のリスペクトを伴っていた。コルヴェットはカタナ社の撤退を見送り、残った二人を見比べた。 15

2019-05-18 19:11:15
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

なにやら旧知の二人、間に入るのも不粋であろう。彼は帽子の鍔を傾け、さりげなく下がった。空洞の入り口を振り返ると、そこにはユーレイめいて朧な姿があった。赤黒の影を揺らめかせる女のニンジャの幻は、コルヴェットになにかを伝えようとしたが、それは彼の耳には届かず、やがて薄れ、消えた。16

2019-05-18 19:14:12
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

リバプール本社オフィスの個室には自社UNIXデッキが鎮座し、蛍光色のライトを明滅させ、静かな呼吸を繰り返す。モニタは四基。スパゲティじみたケーブルが絡まり、キーボードには無意味なエメツ・コーティングが為されて漆黒だ。彼は体重を包み込む低反発カタナ上級チェアにかけ、机の上で手を組む。1

2019-05-18 19:18:52
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

骨ばった手には青い血管が浮かんでいる。力がこもっているのだ。不愉快ゆえにだ。「実に残念だ」『なるべくしてなったと考えるがいい』ブラックヘイズのIRCが返って来た。「カスミガセキ・ジグラットで君の身に何が起こったのか、誠意をもって調査しているというのに、踏みにじるのかね?」 2

2019-05-18 19:22:06
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

『アンタのユーモア・センスが羨ましい』ブラックヘイズが答える。『本気でやってその有り様なら、驚きだ。自分で調べたほうがどう考えても早いからな。……ま、見たところ、俺がこうなった事自体、カタナのお前達の行動が絡んでいるといったところだろう』「そのような物言いは身をほろぼすぞ」3

2019-05-18 19:25:53
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

『俺は不義理はしたくない』と、ブラックヘイズ。『契約書の内容を確認し、残債についても調べさせた。俺が雇った弁護士は結構な守銭奴だったが、仕事は確かだったよ』「弁護士だと?そんな事を?」『とうに完済して、その守銭奴に大盤振る舞いして、なお余るようだ。感謝する』「……!」 4

2019-05-18 19:29:49
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

『知恵が回るので驚いたか?』「記憶が……戻っているのか?」『うむ』ブラックヘイズは端的に認めた。『ま、お互い良いパートナーシップが築けていたと言えるだろう。俺も曖昧なままこのケオスの世界に放り出されれば往生していた事だろう。なかなかいい経験が出来た』「……後悔するぞ」 5

2019-05-18 19:34:35
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

『いや、後悔はせんよ』「君はカタナを、そして私という人間を甘く見ている。残念だ」彼は溜息をつき、キータイプを行った。「残念だよブラックヘイズ=サン。私の見込んだ英雄が……君がそのように近視眼的な存在であった事がね」モニタに映し出されたのは、ブラックヘイズのワイヤフレーム三面図。6

2019-05-18 19:38:14
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