東京になぜ人口が集中するのか・・・地方を活性化させる一仮説
- ShinShinohara
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朝比奈一郎氏「日本の「地方創生」がさっぱり進展しない理由」 jbpress.ismedia.jp/articles/-/566… に刺激を受けて、私なりに、なぜ東京に人口が集中してしまうのか、試論を展開してみようと思う。
2019-06-10 17:18:53日本の大企業は軒並み、東京に本社を置く。大阪の会社だった朝日新聞も、私が学生の間に東京に本社を移してしまった。「大阪から本社を動かさない」と、初代・松下幸之助が約束していたはずの、旧松下電器、現在のパナソニックさえ、本社機能を東京に移してしまった。
2019-06-10 17:21:05「地方には仕事がない」として、若者がみんな東京に行ってしまうのも、多くの企業が本社機能を東京に移してしまうことに大きな原因がある。もちろん地方にも支社がある。しかしバリバリ大きな仕事をしたいなら、本社のある東京の方が活躍しやすい。結果、多くの若者が東京に行ってしまう。
2019-06-10 17:23:11大企業をはじめとして、多くの企業が東京に本社をおく。地方にあるのは支社、支店のみ。会社機能の末端しか携わらせてもらえず、腕を振るいたい若者はどうしても東京に行ってしまう。結果、地方は過疎化し、東京にばかり人口が集中してしまう。
2019-06-10 17:24:59大企業にしては珍しく、ギリギリまで東京に本社を移さなかったパナソニックは、なぜ2017年になって東京に本社を移すことになったのだろう?当時の記事によると、「お客様の(たくさんいる)ところに行こう」という理由が述べられている。だが、私はまともに受け取れない。sankei.com/west/news/1707…
2019-06-10 17:30:29東京に本社機能が集中する理由。知人は「許認可権限が東京に集中しているから」と指摘する。卓見だと思う。 許認可権限をもつところ。それは、経済産業省や総務省、金融庁など、監督官庁のことだ。それらは当然、東京に集中している。ではなぜ、監督官庁が東京にあると企業は本社を東京に移すのか?
2019-06-10 17:33:14監督官庁が、業界のルール(規制)を決めようとするとき、当然、業界の人間から事情を聞こうとする。遠くから来てもらうと悪いから、東京に本社のある企業に声をかける。すると、業界のルールづくりに、東京に本社のある企業が関与できる。すると、いち早く規制にあわせて業務を変更することができる。
2019-06-10 17:35:37業界のルール(規制)作りのお手伝いをしていると、当然、監督官庁との関係も深まる。風向きの変化にも敏感になりやすい。行政の方針が変わり、指導が厳しくなるといううわさも耳にしやすくなる。指導が入る前に是正し、問題を未然に防ぐことも可能になる。
2019-06-10 17:37:29地方に本社を置いたままだと、これが難しくなる。業界のルール作りに呼んでもらうこともできない。行政指導の風向きが変わりそうだといううわさも聞こえてこない。で、地方でのんびりしていると、指導の対象になって大慌て。場合によっては企業の存続が危うくなりかねない。
2019-06-10 17:39:10まだ、昭和の時代のころ。当時働き盛りの人たちが、「また関西系の企業だけ狙い撃ちか」と愚痴っていたのを、子どもながらによく憶えている。「一罰百戒」で、業界を震え上がらせるには、どこかを生贄にしなきゃいけない。その生贄に、関西企業がよくターゲットにされたというお話。
2019-06-10 17:41:27昭和の時代は、まだ大阪は元気だった。ジャイアンツと東京を目の敵にし、「東京、何するものぞ」という気概を持っていた企業もまだまだたくさんあった。そういう鼻息の荒さも手伝ってか、中央官庁の人も面白くないのだろう。経済犯罪で槍玉にあがりやすいのは、関西の企業だったという。
2019-06-10 17:45:13どこの企業もやっていたことが、行政指導の変化で規制の対象になる。東京に本社のある企業は風向きの変化をいち早く察知し、体制を変更するけれど、関西企業は東京への反感もあって、やり方を変えない。結果、経済事件で槍玉に上がるのは関西企業、ということになっていたらしい。
2019-06-10 17:47:32こういうことが続けばどうなるか。経営者としては、東京に本社を移したくなるのではないか。いつ行政の指導方針が変化するのか、いち早く察知し、規制の対象にされないように予防しなければならない。何しろ、指導を受けたら企業の浮沈に関わる。背に腹代えられない。
2019-06-10 17:48:50昔、宋の大臣、子罕(しかん)が、君主にこう言った。「褒美を上げたり勲章を授けたりするは国民が喜ぶものです。逆に、刑罰は国民が嫌がるものです。刑罰を行う悪役は私が引き受けますから、主君は、褒賞の方を行ってください」。えらい大臣やないか、と、私は思った。ところが。
2019-06-10 17:52:24刑罰の権限を奪われた君主のことを怖がる国民はいなくなってしまい、刑罰の権限を掌握した子罕には、様々な人間が挨拶に来るようになり、事実上、権力がすべて集中した。実権を失った君主はやがて追放され、子罕が国を乗っ取ってしまった。
2019-06-10 17:54:50監督官庁による行政指導は、子罕が掌握した刑罰の権限に相当する。これが東京に集中していれば、子罕のもとに多くの人々が挨拶に来るようになったように、企業は東京に本社を置き、足しげく監督官庁に顔を出し、風向きの変化をいち早く察知しようとするだろう。
2019-06-10 17:56:57つまるところ、東京に人口が集中してしまうのは、「許認可権限が東京に集中しているから」ではないか、というのが、私の仮説。許認可権限が東京にある監督省庁に集中し、そのせいで多くの企業が東京に本社を移転し、そのせいで仕事が東京に集中し、仕事を求めて人口が集中する。
2019-06-10 17:58:25もしこの仮説が正しいとするなら、許認可権限を東京から地方に移してしまうほかない。・・・というと、中央省庁の地方移転の話を思い出す人が多いだろう。文化庁は京都へ、消費者庁は徳島へ、という移転の話。でもこれは、一部機能の移転でしかないからあまり効果があると思えない。
2019-06-10 18:01:32財務省や経産省、総務省や文科省、ありとあらゆる省庁の機能、許認可権限を、地方自治体に移すのが、もっとも効果的だろう。そうなれば、企業は東京に本社を置く必要はなくなる。それぞれの自治体で許認可を得ればよいわけだから。
2019-06-10 18:03:32江戸時代は、各藩に独立性があった。許認可権限も各藩に委ねられ、幕府は全体にゆるい規制をかけていただけで、細かな口出しはしていなかった。藩札の例を見れば分かるように、金融行政でさえ、藩ごとに許認可権限があった。
2019-06-10 18:05:29明治大正でも、藩の独立性に影響を受けてか、県知事には、今とは比較にならない権力があったという。その権力の源泉は、許認可権限だ。県の独立性が高かったから、戦前は、現在と比較すれば、地方に活力があった。
2019-06-10 18:07:29ところが戦後、中央集権化が加速する。もちろん、中央集権化の動きは戦中からあり、野口悠紀雄氏「1940年体制」に指摘されているように、大政翼賛体制が、戦後の復興のモデルになった。地方の独立性は失われ、許認可権限は国、つまり東京に集中した。
2019-06-10 18:09:28戦後、急速に東京一極集中が加速したのは、許認可権限が東京に一極集中したためではないか。それが私の仮説。ならば、許認可権限を地方に明け渡すことこそ、企業の、そして人口の東京一極集中を解決する最高の手段となるのではないか。
2019-06-10 18:11:24これを現役官僚の人たちに話すと、多くの場合、次のような答えが返ってくる。「国が行っている許認可権限を担える人材が、地方にはいない」。地方の公務員は頼りないから、とても任せられないということらしい。しかし、果たしてそうだろうか。
2019-06-10 18:13:24私は以前、「指示待ち人間はなぜ生まれるのか?」という文章をまとめたことがある。togetter.com/li/895830 あれこれ細かく指示し、指示と違うことを部下がしたら厳しく叱る。そうすると、部下は指示町人間になってしまう、という指摘をした。
2019-06-10 18:15:07