『さらざんまい』10話考察 ～エンタの性的指向と時代の流れ、レオマブと心臓と欲望、最終回まで引っぱるループ世界説～

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togetter.com/li/1364984 『さらざんまい』10話予告考察 ～芥川の『河童』との関係、なぜカッパは「カエル」と呼ばれると怒るのか？～

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youtube.com/watch?v=tBAcaE… 「さらざんまい」予告｜ 第十皿（ノイタミナ）

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テレビアニメ『さらざんまい』10話の感想考察。「これからこれをやります」。

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10話、ものすごい密度が高い回。後半ダレずに、どんどん加速していく、ジェットコースター展開。毎回、予想を上回って来る、クオリティの高さ。個人的に、「さら」は、今期の良作の筆頭だと思う。

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最終回、一話手前の十話。イクニアニメの真骨頂だけど、情報密度が高すぎて、もう何から話していいか分からない。そこで、本当に仕様もないんだけど、ここは話しやすい小ネタから、入らせていただきたい。

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まず、カワウソのセリフ多いけど、イケボだなあと改めて思った（小並感）。『幼女戦記』冒頭の鳩もイケボだったけど、「人外イケボ」って、最近の流行りだろうか？　釘ボイスのマスコットキャラをよく見るし。

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そのカワウソは、変身できる（だからウッソー＝嘘なんだろう）けど、カズキに変身して、精神世界でエンタを誘惑している。性的指向の視点で見ると、ここが少し興味深い。

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序盤のカズキは、女装でトオイを誘惑してた。サラ誘拐計画に誘うために。一方、今回、精神世界でエンタを誘惑するシーンでは、エンタに対して、素の男のカズキが誘惑してる。

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エンタは、寝ていた女装カズキにキスするけれども、それは気の迷いだった。女装カズキにショックを受けてたし、序盤でエンタが妄想してたカズキは、「さらっと」のポーズを取るイケメンだ。

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エンタは男のカズキが好きだということが、よく分かるようになっている。今はBLアニメがたくさんあるから、今さらな話ではあるけど、ここら辺が、昔のアニメとだいぶ違うところだと感じた。

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昔のアニメ、たとえば『らんま1/2』では、良牙が誘惑されるのは、あくまで「おさげの女」であって、らんまの女装（正確には一時的な性転換）だと気づいてはいない。あくまで女だと錯覚しているだけだ。

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しかし、「さら」では、女装したカズキに誘惑されたエンタの方が、一時の気の迷いとして表現されている。つまり、同性愛／異性愛とその錯覚の仕方が、両者では逆転している。

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なお、これは『らんま』への批判とかではない。『エヴァ』とかと並んで、私の中でトップクラスに好きなアニメなので。ただ、同性愛の表現に対する、時代の流れが分かりやすい例だとは思う。

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さて、10話の（影の）主役とも言える、レオマブについて。これは、物語技法的に言うと、序盤のカズキとハルカの関係を反復している。というのもまず、「レオなんか嫌いだ」というマブがそう。これは気づくだろう。

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そしてさらに、「一番近くにいながら、本当のつながりではない」、というモチーフを反復している。カズキはサラの女装で自撮りしていたし、マブは本心をレオに伝えることを、カワウソに禁じられていた。

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そして、カッパ化したレオと、カパゾンビ化したマブとの戦闘。これがもはや、戦闘ではない。マブは最初から後ろを向いており、自分の尻子玉＝秘密を、漏洩することを目的としている。

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このシーンには、ちょっと感銘を受けた。「さら」序盤では、なんでこんな戦闘を茶番っぽくするんだろう、とも思っていたが、「王様の耳はロバの耳」みたいに、秘密を打ち明けたい、という欲望が人間にはある。

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ふり返って、序盤のカパゾンビとの戦闘から、そういう秘密を漏らしたい欲望というのは、あったんだろう。バンクだし、お約束感があったけど、わざとそういう演出にしてていたのが分かる。

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それから、本作における「尻子玉」というものが何なのか、分かってきた気がする。愛がハートで、欲望が尻子玉、という対比なんじゃないか。まあこれは、ネットで序盤から言われてた気もするけど。改めて。

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だけど、尻子玉が欲望のメタファーと言われても、正直ピンと来ないのではないか？　そこをさらに突っ込むと、尻子玉というのが性器や性欲のメタファーだと解釈すると、スッキリする。

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ハート＝愛（アガペー）のラインと、尻子玉（性器）＝欲望（エロス）のラインが物語上で交差する軸で、それを「愛か、欲望か」と言っている。

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ただ、これは急いで補足しておきたいのは、もちろん、「プラトニックな愛こそ、真実の愛」というのは、大昔からある物語の一大パターン。

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それから、誤解されやすいけれど、エロスとかリビドーは、本来は性欲に限定されない。分かりやすいから、通俗的な解釈ではそう捉えられがちなだけで。そういうのが「○○は性器の象徴」みたいな古典的な解釈になる。

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フロイトが何でもエロに結びつけたというのは、彼への通俗的な誤解の最たるもので、むしろ、夢の中では性を避けて、より原初的な欲望へ向かう、というような話も彼はしている。地味だから普及しないだけで。

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「さら」本編の方も、序盤では性的フェチみたいな話が多いけど、マブの欲望は性欲ではなくて、「愛を伝えたい」「相手に認められたい」といったものだから、純粋な他者への欲望になっている。