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コトブキの相槌を待たず、フィルギアは天井を見ながら言った。「"これ" の名はギンカク。その末端が、地球に幾つかある。一つはネオサイタマ。もう一つはドイツ。で、悪い事に、もう一つ発見されてるんだけどさ」「悪い事に?」「ああ。ネザーキョウに、ひとつ」「この国に……?」
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「そう。タイクーンの御膝元」フィルギアはコトブキに視線を戻した。彼はコトブキをじっと見た。「ギンカクの事は、俺もそこまで詳しくは知らないけど……今まで把握されてた二つは、ずっと静かだった。ニンジャスレイヤーが存在していなかったこの十年の間も、ずっと静かだった」
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「そう簡単にいじれる代物じゃないッてこと。だけど、今回は嫌な予感がしてならないんだ。妙な事をしそうな奴が居るんだよね」「……」コトブキは瞬きした。じっと考える。フィルギアは呟く。「だから、心配なんだ」
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【エンター・ザ・ランド・オブ・ニンジャ】#4 pic.twitter.com/QhKOq85ICe
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空が光り、雨が降り始めた。「通り雨さ……」「どうするべきだと考えているのですか?」「べき、というか……そうだなァ。俺個人の考えとしちゃ、ギンカクはそっとさせておきたいよね。さっきも言ったようにさ。……ニンジャスレイヤーの力を以て、ギンカクを制す、それが一番だとは思う」 1
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「ギンカクはこの国のどこに?」「悪い。まだはっきりとは」フィルギアは苦笑した。「出土の知らせと来訪者の噂。今はそれだけ。俺としてももっと調べてから来たかったが、あまり自由に動けなくてさ。五重塔にはニンジャが居て睨みを利かせてるし。君らが協力してくれるなら、もう少し深く調べるよ」2
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「……」コトブキはカップに口をつけたが、すでに空だった。フィルギアは首を振った。「無理にキミらを動かす事は、俺にはできない。柄じゃないし。俺、ホントはフラフラ遊んでいたいだけのニンジャなんだ。ああ、俺の事は余計だな。キミらはここに居てもいいし……俺は別の手段を探す。それだけ」 3
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「マスラダ=サンと話をします」少し考えてから、コトブキは言った。「ああ。それがいい。……ちゃんと話をしなよ。悪い事は言わない。面会謝絶もいいが……話をするのは、大事だぜ」コトブキは肩を落とした。「貴方が邪悪な存在でない事は、わかったように思います」「はは、即断は止めときな」4
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フィルギアは席を立った。「お茶をありがとう……ア、そうだ」思い出したように尋ねる。「で、ニンジャはどうするんだ?」「え……」「ごめんね。村の連中の話、小耳に挟んじゃってさ。揉め事、あるんだろ?タイクーンのニンジャが殺られて、どうのって。別の奴が来るんだろ?で、キミも関わってる」5
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「……」コトブキは決断的表情で、フィルギアを見た。「戦います」「キミが?」「はい」「正気かい?」フィルギアは驚いて見せた。「マジに面会謝絶なのか?本当に?」「苦しい戦いの中で、マスラダ=サンはひどく傷つきました。敵は、わたしが倒します。今日、村の皆さんと作戦会議を行う予定です」6
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「そうは言ってもなァ。キミは当然ニンジャじゃないしさ……」「知恵と、決意と、力です」コトブキは断固として言った。「イヒヒヒ……いや、すまねえ」むっとしたコトブキに、彼は詫びた。「悪意はないんだ……大それた事を考えるもんだと思って、びっくりしちまってさ」 7
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「頑張ります」「アイツの回復を待ったら?」「……」「あのさ」フィルギアは真顔になり、コトブキをじっと見た。「アイツを戦わせたくないッて気持ちはわかったが……それは……アイツの意志なのかな」コトブキの決断的表情は緊迫し、唸り声を上げそうだった。フィルギアは肩を叩き、出てゆく。 8
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……フィルギアは濡れた地面を踏み、木造りの家を振り返った。二階窓に明かりは見えない。ほんの数呼吸。やがて彼は再び歩き出した。コヨーテは木々のあわいに消えた。 9
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二階、マスラダは去ってゆくフィルギアを目で追っていたが、やがて窓辺を離れた。そして部屋の隅に向かう。等身大の物体を覆う布に手をかけ、引き剥がす。木人だ。彼はいまだ光沢の残るその表面に手を触れる。 10
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「スウーッ……」深く吸い、「フウーッ……」そして吐く。指先に、チリチリと赤黒の熾り。すぐに消える。彼は不満げにそれを見る。突き出した木人の腕部に手を当て、何度か動かす。少し考え、頷き、木人を離れる。彼はベッドの上でアグラをかき、呼吸を繰り返す。「スウーッ……フウーッ……」 11
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タイクーンがインターネットを禁止し、ゲニントルーパーやスモトリトルーパーに巨大木槌によるUNIX破壊を行わせて以来、村のデータセンターはがらんどうとなり、催し事や決め事の際に使われる場所となっていた。今そこに、責任ある者たちが男女問わず集まっていた。 13
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当然、思慮深いジェイソン翁も居た。乳飲み子を抱えた母親の姿もある。カラテビーストに片目を抉られた狩人や若い衆、乙女、曖昧な老人も居る。誰もが、何か言葉を口にしようとしては、躊躇い、俯き、あるいは、わけもわからず頷き合って、時が過ぎるのを待っていた。「遅くなりました」そこへ一人。14
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声にならない感嘆の呻きが誰ともなく聞こえた。入って来たコトブキは妖精郷の住人じみた白い正装であった。「ドーモ。コトブキといいます。沢山の助けを頂いて、感謝しています」彼女は礼儀正しくオジギした。「連れの方は、状態はどうだね」「治しています」「そうか……」 15
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暗い目を見交わす者もいた。マスラダのカラテを目の当たりにした者は、その武力を当然期待していたのだ。「心配いりません」その者らの雰囲気を察し、コトブキがきっぱり言った。「わたしの力で事足ります。皆さんの協力は必要ですが、危険は最小限です」「しかしねえ」「アンタに頼り切るわけにも」16
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「もう沢山だ」態度を決めかねる村人達を見て、ジェイソンは目を血走らせた。「……正直、そう思っていたところだ。……皆はどうだ」彼らの視線が集まった。「そうではないか?」「……」他の者らは互いの顔を見たが……反対意見も、出なかった。誰かが呟いた。「そりゃそうだよ」と。「限界だ」 17
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「ジーンを忘れてはおらんな、お前ら」「ああ……」「勿論だ」「ジーンは笑顔のかわいい娘だったよ」子を抱えた女がコトブキを見て言った。「アンタは可憐だね。思い出してしまうねえ」「そうだ」「ジーン=サンは今は?」コトブキは尋ねた。ジェイソンは首を振った。「おらん。親も、命を絶った」 18
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婚礼の日の午後に現れたのが、ヘヴィフィードと、その兄だ。前日に付近を夜通し警備して回り、その帰りに村に寄った。兄弟はジーンを見初め、花婿をテウチにすると、ジーンを召し抱えた。翌日、遺体が川を流れて来た。誰も反抗できなかった。怒りは諦めに塗られ、だが、澱のように沈んだままだ。19
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「ヘヴィフィードの兄は、ヴォルケイノーという」ジェイソンはその名を口にするとき、声をひそめる。ニンジャの耳は千里に渡るという伝承が遺伝子に刻まれているからだ。「奴には誰も逆らえない。ヘヴィフィードは斧のタツジンだった。ヴォルケイノーは……ニンポを使うからだ」「ニンポですか」 20
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