アニメ『さらざんまい』の「生存説/死亡説」の対立を考察 ~解釈の多重性と『星の王子様』との意外な関係~
togetter.com/li/1369355 アニメ『さらざんまい』に影響を与えた、芥川龍之介『河童』の考察 ~「僕は生まれてきたくありません」という視点と、社会問題との関係~
2019-06-25 20:29:47youtube.com/watch?v=9U-I7L… TVアニメ『さらざんまい』 劇中歌「さらざんまいのうた」PV(アニプレックス)
2019-06-25 20:30:31今日は、最近最終回を迎えた、テレビアニメ『さらざんまい』。そのとくに「生存説/死亡説」の対立を主に扱い、考察していきたいと思います。
2019-06-25 20:32:15「さら」最終回で、トオイが川に飛び込むラストシーンがある。ここで彼が死んでいる、と解釈するのが死亡説。なお、カズキとエンタも死んでいる、といった派生解釈も、ここではまとめて「死亡説」として扱いたい。
2019-06-25 20:35:19私自身は、基本的に生存説の立場を取る。「未来へ」ってテロップもあったし、死んでたら未来への「つながり」が絶たれてるから。だから、素直にトオイ(たち三人)は生きているだろう、と私は見た。
2019-06-25 20:37:20しかし、別にラストシーンが多重に解釈できても、何も問題ない。生存説か死亡説か、一方に決める必要もない。それだけの話だけど、それだけだと納得できない人がいるかもしれない。もう少していねいに説明しよう。
2019-06-25 20:39:30もし、これが「裁判」のようなものなら、事件を多重に解釈できるのでは困る。極端な例では、「人によって見方が異なるから、えん罪かもしれないけど、とりあえず死刑」にされたら、たまらないからだ。
2019-06-25 20:41:13だから、物証や証言を集めるなどの捜査や、鑑識が科学的な分析をして、有罪(無罪)判決が、かんたんに覆らないようにしよう、ということになる。これには異論ないだろう。
2019-06-25 20:42:39しかし、創作の分野で、フィクションの物語に、多重に解釈できる結末があっても、別に問題ない。べつに、結末が一意でないといけない、という決まりはないのだ。
2019-06-25 20:44:04「多重解釈できる結末」の前例をひとつ挙げれば、『さらざんまい』に影響を与えた、小説『河童』の作者・芥川龍之介が書いた、『藪の中』。文豪が書いた有名な古典だ。
2019-06-25 20:46:23さらに言えば、多重解釈できる今の結末で別にいいし、死亡説が出てこないような結末にした方が良い、とも別に思わない。多重性そのものが「つながり」の重要な性質だから。
2019-06-25 20:48:34「つながりの多重性(不確定性)」が大事だというのは、多重性がない強制的なつながりは、えてしてブラックなつながりだからだ。たとえば、カワウソ側のレオマブや、チカイに撃たれた彼の子分を見ればよく分かる。
2019-06-25 20:50:37『星の王子様』に、「象を飲み込んだ蛇(ウワバミ)」の話が出てくる。帽子の絵に見える絵があるが、これがじつは「象を飲み込んだ蛇」の絵のつもりだと言うのだ。
2019-06-25 20:57:47有名な話ではあるが、このエピソードだけだと、初見ではよく意味が分からないだろう。(原作に忠実というわけではなく)ここで言いたいことの文脈に沿って、簡単に解説しておきたい。
2019-06-25 20:59:07だれでも、「反転図形」を一度は見たことがあるだろう。検索すればすぐ出てくるが、「ルビンの壺」や「うさぎとアヒルのだまし絵」などがそうだ。「象を飲み込んだ蛇」の絵も、(無理やり)反転図形の一種だろう。
2019-06-25 21:02:29そして、どちらにも解釈できる、といった多重性もしくは不確定性があるからこそ、「信念」を持つことが可能になる。だって、目の前で雨が降っているのに、「雨が降らないと信じている」と言ったって、仕様がない。
2019-06-25 21:04:33もし、これがノベルゲームであれば、直接ルート分岐で、グッドエンドとバッドエンドに分けることも可能だ。しかし、「さら」はアニメなので、直接分岐で示すことができない。
2019-06-25 21:06:17「さら」最終回で、ハルカが「ぼくはぼくの選んだものを信じるよ」といった意味のセリフを言っていたと思う。この「信じる」という言葉がポイントなのだと思う。
2019-06-25 21:07:38「自分の選択が正しい」のではなく「自分の選択を信じる」。この違いは何かといえば、しばしば「他者への排他性」となって現れる。二択で自分が正しいなら、相手が間違っているとなる。
2019-06-25 21:08:42「自分の選択を信じる」というのは、「その選択が間違っているかもしれない」可能性は織り込み済みで、その上でなお信じようという態度を取っているのだ。
2019-06-25 21:09:39このことを理解すると、「さら」本編も理解しやすくなる。今のアニメにしては、空気を読まないような不穏なシーンが多いが、それは、最初から正解を示すより、どうあるか視聴者が考えることに意味があるからだ。
2019-06-25 21:12:19最初に戻って言うと、生存説と死亡説に別れていたとして、それは意味のある分岐なのかもしれない。必ずしも、どちらかに正解を決める必要はないかもしれない。
2019-06-25 21:15:14