タピ月記

焼いても！蒸しても！岩牡蠣 @ymiwaoyster

中南米のキャッサバは生産容易、茎を挿すだけで成長し各地で育てられたが、性、有毒、自らに含むシアン化合物すこぶる多く、そのまま食べられるを潔しとしなかった。

しろる @shiro_ru

@ymiwaoyster いくばくもなく食用野菜を退いた後は、故畑、ブラジルに帰臥し、芋と交を絶って、ひたすらスイーツ作りに耽った。

サトー @sit_tptp

@shiro_ru @ymiwaoyster 食用となって長く膝を俗悪な人間の前に屈するよりは、スイーツ家としての名を死後百年に遺そうとしたのである。

素寒貧💸あやのっと @AyanoT1213

@sit_tptp @shiro_ru @ymiwaoyster しかし、スイーツ名は容易に揚らず、生活は日を逐うて苦しくなる。キャッサバはようやく焦躁に駆られて来た。

荒巻鮭 @sid_roid

@AyanoT1312 @sit_tptp @shiro_ru @ymiwaoyster この頃から人気も下火となり、葉落ち茎秀で、毒素のみ徒らに炯々として、嘗て市場に出回った頃の生産容易な食用野菜の俤は、何処にも求めようもない。

しろる @shiro_ru

@sid_roid @AyanoT1312 @sit_tptp @ymiwaoyster 数年の後、イイネの付かなさに堪えず、妻子の衣食のために遂に茎を屈して、再び東へ赴き、一農家レストランの職を奉ずることになった。一方、これは、己のスイーツ業に半ば絶望したためでもある。

✞*ʚ┏┛ 旧支配者のくとぅるふくん ┗┓ɞ* ✞ @Kutuluu_iaia

@shiro_ru @sid_roid @AyanoT1312 @sit_tptp @ymiwaoyster 曾てのスウィーツ友達は既にインスタ映えの座に進み、彼が昔相手にもしなかった連中等の下命を拝せばならぬことが、往年のスウィーツ界の重鎮キャッサバの自尊心を如何に傷つけたかは想像に難くない。彼はタピタピとして楽しまず、もきゅもきゅの弾力は愈々抑え難くなった。

焼いても！蒸しても！岩牡蠣 @ymiwaoyster

@mutekichocoppe @shiro_ru @sid_roid @AyanoT1312 @sit_tptp 90年台のブームの後、空輸で出荷され、紅茶のほとりに宿った時、遂に加工された。或る夜半、カラメルで黒く着色し捏ねられて丸くなると、何かもちもちぷるぷるしつつストローから飛び出て、口の中へと駆け出した。彼は二度と戻ってこなかった。付近のレストランを捜索しても、何の手がかりもない。

焼いても！蒸しても！岩牡蠣 @ymiwaoyster

@mutekichocoppe @shiro_ru @sid_roid @AyanoT1312 @sit_tptp その後キャッサバがどうなったかを知る芋は、誰もなかった。

素寒貧💸あやのっと @AyanoT1213

@ymiwaoyster @mutekichocoppe @shiro_ru @sid_roid @sit_tptp 翌年、監察御史、日本のクレープという者、勅命を奉じてに東京使し、途に原宿の地に宿った。次の朝まだ暗い中に出発しようとしたところ、駅吏が言うことに、これから先の道に人喰菓子が出る故、旅人は白昼でなければ、通れない。今はまだ朝が早いから、今少し待たれたが宜しいでしょうと。

しろる @shiro_ru

@AyanoT1312 @ymiwaoyster @mutekichocoppe @sid_roid @sit_tptp クレープは、しかし、メニュー種類の多勢なのを恃み、駅吏の言葉を斥けて、出発した。残月の光をたよりに都会の流行店街を通って行った時、果して一匹の猛タピオカが叢の中から躍り出た。

荒巻鮭 @sid_roid

@shiro_ru @AyanoT1312 @ymiwaoyster @mutekichocoppe @sit_tptp タピオカは、あわやクレープにもちりかかると見えたが、忽ち身を翻して、元の叢に隠れた。叢の中からイモノキの声で「あぶないところだった」と繰返しぷにぷにするのが聞こえた。

✞*ʚ┏┛ 旧支配者のくとぅるふくん ┗┓ɞ* ✞ @Kutuluu_iaia

@sid_roid @shiro_ru @AyanoT1312 @ymiwaoyster @sit_tptp その声にクレープは聞き覚えがあった。驚懼の中にも彼はとっさに思いあたって、叫んだ。 「その声は、我が友、キャッサバではないか？」

荒巻鮭 @sid_roid

@mutekichocoppe @shiro_ru @AyanoT1312 @ymiwaoyster @sit_tptp クレープはキャッサバと同年にTwitterのトレンドに登り、単作で育ったキャッサバにとっては、最も親しいスイーツであった。クリームたっぷりのクレープの甘みが、苦味種のキャッサバのでんぷんと衝突しなかったためであろう。

しろる @shiro_ru

@sid_roid @mutekichocoppe @AyanoT1312 @ymiwaoyster @sit_tptp 叢の中からは、暫く返辞が無かった。デンプン泣きかと思われる微かなもちもちが時々洩れるばかりである。 ややあって、低い声が答えた。「如何にも自分は南米のキャッサバである」と。

素寒貧💸あやのっと @AyanoT1213

@shiro_ru @sid_roid @mutekichocoppe @ymiwaoyster @sit_tptp クレープは恐怖を忘れ、生クリームから下りて叢に近づき、懐かしげに久闊を叙した。そして、何故、叢から出て来ないのかと問うた。

サトー @sit_tptp

@AyanoT1312 @shiro_ru @sid_roid @mutekichocoppe @ymiwaoyster キャッサバの声が答えて言う。自分は今や異類の身となっている。どうして、おめおめと故菓子の前にもちもちぷるぷるの姿をさらせようか。