エンター・ザ・ランド・オブ・ニンジャ #7

日本語版公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
0
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「アアアア!」ヴォルケイノーが力を振り絞り、全身から炎を噴き出させた!マグマ・ニンジャ・クランの秘伝、マグマ・バーニング・ムテキ!だが、ナムサン!赤黒の火にひととき覆われたニンジャスレイヤーのトビゲリは、マグマの炎の守りを破り、巨体の喉笛を、脊髄を、過たず貫いたのであった!  0

2019-06-30 21:06:42
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

KRAASH!ヴォルケイノーの首が、頭が、砕けた!そして背後のモミジの樹が爆発するように粉々に砕け、横倒しとなった!「サヨナラ!」ヴォルケイノーは爆発四散した! ニンジャスレイヤーはかろうじて着地に成功し、深く、深く息を吐き、ザンシンした。鮮やかなモミジの葉が渦を巻き、散っていった。 0

2019-06-30 21:07:52
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

【エンター・ザ・ランド・オブ・ニンジャ】#7

2019-06-30 21:08:41
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

眼前の道が開け、粗末な風車小屋があらわれた。人里が近いか。ヘラルドはニンジャ第六感を研ぎ澄ませる。小屋を見やると、家の前の木につり下がった影がある。首を括った死体だった。「フン」彼が歩きながらチョップを繰り出すと、ロープは風圧によって切断され、死体が転がった。 1

2019-06-30 21:14:47
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

死体を蹴り転がし、そして小屋の中へエントリーする。「イヤーッ!イヤーッ!」荒っぽいカラテで、机を、調度を破壊する。入る前からわかっていた。ここにニンジャ存在はない。その破壊は腹立ちまぎれのものだった。だがやがて彼は部屋の中央に移動し、しゃがみ込み、床に指を当てた。 2

2019-06-30 21:17:28
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ヌウウウ……」ぼんやりとした輪郭が、彼の周囲に蠢く。半ばトランス状態に入ったかれの口から、呟きが漏れる。「まだ……そう昔の事では……ない……宿を……貸したな。そして……」輪郭が薄れ、意味を為さなくなる。ヘラルドは立ち上がり、椅子を蹴り飛ばした。「……だが、奴だ。間違いない」 3

2019-06-30 21:21:06
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

足跡は二人分。外へ向かい、そして……!「……!」彼は唸りをあげた。バイク痕が浮かび上がる。あの夜の不覚の記憶が蘇る。ヘラルドはニンジャスレイヤーを見つけ出し、追い詰め、アイサツした……しかしそこへモーターサイクルに乗った女が割って入り、ニンジャスレイヤーを、連れ去ったのだ! 4

2019-06-30 21:24:44
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

彼はその目を憎しみに燃やし、胸を押さえた。彼の胸には黒い石が埋め込まれている。エメツの塊だ。エメツは彼の心臓と融合し、おぼろであった肉体を現世に繋ぎ止めている。ザイバツのニンジャ達はキョート城へ帰ったが、彼はそれを拒否したのだ。ヌケニン行為である。 5

2019-06-30 21:27:28
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

胸のエメツは憎しみに応え、脈打つ。もはや彼の心臓そのものだ。彼は仮面めいたメンポに触れる。おお、ニンジャスレイヤーのカラテで砕かれし、顔の傷。己の情けなさの烙印だ。顔を失い、オナーを失い、心臓を失った。すべてニンジャスレイヤーのせいだ。「やつが、いなければ!」 6

2019-06-30 21:30:03
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……ヤツとは、誰だね?」背後から声が投げかけられた。「イヤーッ!」振り向きざまに彼はスリケンを投擲した。スリケンは地面に突き刺さり、コヨーテはその横で口を歪めて笑っていた。「オイオイ!あぶねェな。助言者を殺しちまうところだったぜ、お前……だいぶ切羽詰まっているのかい」 7

2019-06-30 21:34:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「くだらん」ヘラルドは容赦なきカラテを構える。「正体をあらわせ。その手のヘンゲなど、私は見飽きている。私をそこらのくだらぬサンシタと同じに見ぬ方が身のためだぞ」「誇り高いニンジャかね!なかなか面白い……」コヨーテの姿が歪み、痩せた男が現れた。「ドーモ。フィルギアです」 8

2019-06-30 21:38:23
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ヘラルドは顔をしかめ、アイサツを返した。「ドーモ。ヘラルドです。貴様、この国の者ではないな」「ヒヒヒ、仰る通り。俺っていかにもネザーキョウが肌に合わない感じがするだろ……」「何が目的だ。蛇め」「蛇?なぜわかった?」フィルギアはからかうように舌を出した。「蛇の言う事は聞くものだ」9

2019-06-30 21:42:02
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

フィルギアは笑顔を深めた。「アンタ、誰かのこと……探してるんだろ。当ててみようか?まあ待て、俺を殺したらきっと後悔する……」「……!」ヘラルドは思考の後にチョップを降ろした。フィルギアは肩をすくめた。「赤黒のニンジャなら、確かにこの辺りを移動しているぜ」 10

2019-06-30 21:45:27
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「何故その者を私に対して挙げてみせた。交渉材料に何を企んでいる」ヘラルドの殺気が深まった。「殺すべきだな」「ア?俺、何か間違った事言ったかい?参ったな」「イヤーッ!」チョップが切り裂く!フィルギアは斜め後方の枝の上に座っていた。フクロウの羽根がモミジに混じって散った。「よせ」11

2019-06-30 21:49:31
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「次の言葉には気をつけるがいい」ヘラルドは言った。「誰であろうと、私を阻み、謀る者には死を以て報いるぞ」「アー……アンタは誰かを探してここに来た。で、俺は、ネザーキョウに入り込んだ赤黒のニンジャを見ている。そうなりゃ、アンタの目当てがそいつだって事は自明じゃないか」「続けろ」12

2019-06-30 21:53:17
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「赤黒のニンジャの名はニンジャスレイヤー。で、俺は過去に……ニンジャスレイヤーに酷い目に遭わされた事があって……アンタもそのクチじゃないか?って思ってね」ヘラルドはフィルギアを睨んだ。その目を凝視する。瞳孔の収縮から嘘を見破ろうとした。だが、深淵に呑み込まれる心地が返るばかり。13

2019-06-30 21:55:59
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「私に追わせようというのか」「そういう事」フィルギアは枝から飛び降りた。「見ての通り、俺はアンタみたいな雄々しい戦士じゃない。ニンジャスレイヤーは……イヒヒヒ……恐ろしいからね……」「奴はどこにいる」「この先さ」フィルギアはヘラルドに近づいた。「ときにアンタは何故、奴を追う?」14

2019-06-30 21:59:24
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「貴様が知る必要はない」ヘラルドは無慈悲に拒絶した。「だが、貴様の望みは果たされると言っておこう。私に力を貸すのならば」「それは素晴らしい」フィルギアは目を細めた。「ならば追え。奴はウキハシ・ポータルでネオサイタマに帰ろうとしているぞ。南……バンクーバーのポータルが最も近い」 15

2019-06-30 22:02:23
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」ヘラルドの手が閃いた。残像を伴うほどに速い、怒りによって高められたカラテだった。フィルギアは首を掴まれた。「……!」彼のこめかみを汗の粒が流れ落ちた。しかしその笑みはより謎めいて深まった。「信じるかどうかは、アンタが決めなよ。だが、俺を殺すのは得策じゃないな」 16

2019-06-30 22:05:51
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「この感触をおぼえておけ」ヘラルドはひらききった目でフィルギアを凝視する。「お前の命が今、私の手の中にあったのだ。お前が真実を口にしていようが、いまいが、どちらでもいい。どちらにせよ、私はニンジャスレイヤーの元に至る」ヘラルドはフィルギアを吊り上げ、やがて解放した。  17

2019-06-30 22:07:41
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……バンクーバーはこの先の分岐路を右だぜ」フィルギアは指さした。「アンタとは、また会う事になるだろうな」「……」ヘラルドは踵を返し、歩き出し、やがて、走り出した。フィルギアはその背を見送った。 18

2019-06-30 22:10:23
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

遥か頭上の牢天井から染み出した水滴が落下し、水溜りに跳ねると、囚人は神経質そうに距離を取った。「ンンッ!おお、おお嫌だ!」彼は横を見た。朽ちた骸骨が錆びた鎖に繋がれている。「おお、おお嫌だ!こんな人生は極めて不本意だ。そうだろう、ヤモリ君」壁に張り付いたヤモリに話しかける。 20

2019-06-30 22:17:23
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ヤモリはススス、と上へ這いあがり、囚人の手の届かないところまで逃げてしまう。「クキキキ……なんとつれない」彼は壁に背中をつけ、溜息をついた。「……」しかしその目はギラリと輝いた。彼のニンジャ聴力は、牢通路の石段を下りてくる足音を捉えていた。 21

2019-06-30 22:20:07