私が艦娘部隊に志願した頃……そう、当時は少なくとも形式上は志願の形を取られていた。あの頃はまだ、フリートガール・プログラムに志願する軍人は少なかった。 合衆国でも運用が始まったばかりの新兵器は、当然帝国でも問題が多くて、艦娘になった軍人の大半はいわくつきだった。
2017-12-29 00:25:03致命的な失敗をしたものや、不倫のような不祥事をしたもの、技術面や経験面に不足があって、他プログラムから弾かれたもの。 望んでなるものは少ない。私はその少ないうちの1人だった。
2017-12-29 00:25:03私は小さい頃から戦艦に乗ることを夢見ていた。女の子らしくない夢だ。地元に戦艦が広報に来たときは、大喜びで見に行った。乗り気でない母を家に置いて、父と一緒に。
2017-12-29 00:25:04父も好き者で、これがどんな戦艦でどれ程凄いのか聞かせてくれた。ほとんどよくわからなかったけど、海に浮かぶ勇ましい姿に胸がときめいた。世界最大の41cm連装砲塔が4基、そこだけはまだ覚えている。
2017-12-29 00:25:05巨大な戦艦の中を冒険するのは楽しかった。あちらこちら駆け回って、案内に付いた水兵を困らせた。格好良く決まったセーラー服を見て、私もいつか着てやるんだと思った。艦橋で舵輪を回して、戦艦を動かすのはどのような気分なのだろうと想像した。
2017-12-29 00:25:05女学校に上がる頃、戦争の遠くで戦争が始まった。たくさん軍艦が造られるようになって、ほどなくして女も軍隊に入れるようになった。 皆は「女を戦争に行かせるなんて」と怒っていたが、私は嬉しかった。戦艦に乗って、戦争の一翼を担えるのだと。
2017-12-29 00:25:06軍もまた、女を戦争に行かせるのは抵抗があったのだ。女が行ける部署はほとんど地上で、艦艇部隊でも戦闘に行かない、補助艦艇に限られた。私が配属されたのも後方の試験部隊で、電子兵器の試験を行う部隊だった。戦争とは無縁で、私が実際に行える仕事も、肝心の電子兵器とすら無縁のお茶汲みだった。
2017-12-29 00:27:21だからフリートガール・プログラムの話が来たとき、迷わず志願した。得体の知れない新兵器だったが、艦艇部隊だし、戦争に貢献できる。
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