エッジ・オブ・ネザーキョウ #7

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

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【エッジ・オブ・ネザーキョウ】#7 pic.twitter.com/AEEKGkVTiW

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「タノモ！」逆光を背負い、威勢よくタマカのガレージに現れたのは、コトブキである。「シグルーンを預かっていただき、ありがとうございます！万事解決です！」「何！？」タマカは仰天した。「どういう事だね？」「最新のドライバをここに入れてあります」コトブキは得意げにこめかみを指差した。　1

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「エッ、嬢ちゃん、それは」「こういう事です」コトブキはガレージの隅に置かれたシグルーンまで歩き、LAN直結した。UNIXライトが明滅し、電子マイコ音声が告げる。『再起動重点。オヤスミナサイ』「あとは３分間待つのですよ……」「どこでドライバーを？」「闇のビジネスですよ。知りたいですか？」2

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「闇……まさか」タマカは察した。コトブキは微笑んだ。「しかもわたし、取引に用いたメガデモが高価だったので、追加サービスで……」「それぐらいにしておけ」マスラダが入ってきたので、コトブキは口をつぐみ、プロキシの内部回路の一部を体内に移植した事を秘密にした。DIYが得意なのだ。 3

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『オハヨ。理解を完了しました』そうこうするうちにシグルーンは再起動プロセスを完了した。「元気ですか」コトブキが尋ねると、『内部の混乱は0％です』という答えが返った。「地図データを呼び出せますか」『ネザーキョウ。前線都市ヤマザキ。UCA名、プリンスジョージです』「やりました！」　4

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「た、大したもんだぜ」タマカが驚嘆した。マスラダはシグルーンにまたがり、エンジンに火を入れた。タマカはタオルで汗を拭った。「駆動のリズムも心なしかタイトになってやがる。そういうものか」「ブッダ像を彫り、魂をこめないのはダメ……。そういうコトワザがあります」コトブキが言った。　5

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「含蓄がある」タマカは感心した。「それでアンタ達、この大層なバイクで、どこまで行くんだね」「トップシークレットです」コトブキは答えた。マスラダを一瞥し、「強いて言うならばネザーキョウをこのまま東へ……」「なんと！それじゃホンノウジに行くのか！？まさかゲニン志望か」「いいえ」　6

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コトブキは首を振った。「わたし達は友達のツテを……」「それぐらいにしておけ」マスラダが遮った。コトブキは頷き、キンチャク袋からアケチ銭の素子を掴んで出した。「修理代はこれで大丈夫でしょうか」「お、おう、問題ないぜ」タマカは笑顔になった。「アンタら戻ってくるか心配だったがな……」 7

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「踏み倒す事になってしまうところでしたね」「そういう時は預かったバイクの現物を売ればいい。ガハハハ！」「ウフフ」「……しかし、東ねェ」タマカは考えを巡らせる。「ッて事は、ロッキー山脈越えをするワケだ。牛車や装甲バスを使うところだが」「過酷な旅は覚悟の上です。手で押したり……」　8

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ドルルッ。マスラダがバイクをターンさせ、促した。「行くぞ」「お世話になりました！」コトブキはタマカの手を握った。タマカは笑った。「旅の幸運を祈ってるぜ、風変わりなお二人さん。くれぐれもニンジャとカラテビーストに気をつけてくれな」「ハイ！」コトブキは後ろに飛び乗った。　9

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そのまま二人はヤマザキの街路を遅めの速度で走り始めた。建物がひらけ、右手に夕日を受けて輝く川が見えた。「ザック＝サンは無事に南へ行けるでしょうか」コトブキが言った。「さあな」マスラダは素っ気なく言った。コトブキは表情を曇らせる。「止めるべきだったでしょうか」「何をだ？」10

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「密出国の手引きがアケチ水軍で、危険だと思うんです」「そうだろうな」「ザック＝サンが、騙されたり、ひどい目に遭う可能性も」「そんな事は、あいつも承知だろう。止めてどうする。お前があいつのかわりに決めるのか」マスラダは低く言った。「……いいえ……」コトブキは首を振り、黙り込んだ。11

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ピーヒョロ、ヒョロロロー。夕暮れ時のオハヤシのサウンドが響き、チョウチンに火が灯され始めた。モミジは空の色に溶けるようだ。彼らは川面の船やイカダの影を無言で見やった……。　12

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「ヒヒヒ」「ヘヘヘヘヘ」川岸、猥雑なジョークをかわすゲニン達は、土手を降りてくる子供を見て顔をしかめた。「アアー？汚えガキだな」「飴でもほしいか」「それともクスリ売りかァ？」「……」ザックは足を止め、唾を飲んだ。「ア……俺……」「何だコラァ。クスリか？俺らは品質には厳しいぞ」14

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「クスリ……エヘヘ、クスリ、違うよ」ザックは引きつった笑みを浮かべる。「怪しいモノじゃないよ……」「なァにィー？アベ一休？」ゲニンの一人がTシャツを掴んで引っ張った。「何だそりゃ？」「知らねえ。だけどデザインとかよォ、メッセージ性を感じて、なんかイラつくよな」「確かになあ」　15

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「ち、違うんだよ。これ、知らないよ」ザックは訴えた。「マジ、そういうのじゃないんだ。シツレイしに来たんじゃないんだよ」「アアー？」「ち、違うって。ビジネスの話なんだ」「ヒヒヒ、やっぱりか」ゲニンが目を細めた。「じゃ、いいからクスリよこせッてンだよ。まず試してから値段決めッから」16

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「クスリじゃないんです」ザックは抵抗した。「スピアフィッシュ＝サンに、折り入って話が！」「アアーッ？センシのスピアフィッシュ＝サンに、テメェのごときガキがだとォ？」ゲニンがジャックナイフを抜き、ザックの頬にピタピタと当てた。「身の程を知れェー……」「よせ！」野太い声が制止した。17

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「アッ……」「スピアフィッシュ＝サン？」「俺に、折り入っての話だと言っているのだろうが。そのガキが！」「ヘヘェ、さすがお耳がよろしく…」「イヤーッ！」「グワーッ！」スピアフィッシュはそのゲニンの頬を張った。キリモミ回転して倒れるゲニン！ザックは震え上がった。「アイエエエ……！」18

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「全く……俺まで上がってこない重大な話が今まであったかもしれんな」「スミマセン！」「申し訳！」他のゲニン達は120度オジギで静止！スピアフィッシュは身を屈め、震えるザックの肩を両手で押さえた。顔を近づけ、笑った。「ビジネスマナーがなっとらん連中で悪かったね、ボク」「ア……ア……」 19

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スピアフィッシュはザックを伴い、川辺の事務小屋に入った。簡素な机と無線機らしきもの、スピーカー、オイラン・ピンナップ、タイクーンが笑顔で赤ん坊を抱いているプロパガンダ油絵などを、ザックは恐怖に抗いながら見渡した。（落ち着け。落ち着け。ビジネスが通じた。絶対うまく行く）　20

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「さて……座りなさい」スピアフィッシュは椅子を回し、ザックを座らせた。「俺は年齢などのつまらぬ要素で人を判断したりはしない。誰もが一個の人格を持ち、センシたりうる勇気とカラテ可能性を秘めた尊い者である」「あ……アリガトゴザイマス」「さて。それではビジネスの話をしたまえ」　21

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ザックは唾を飲み込んだ。そして前のめりに切り出した。「川を渡って、UCAに連れて行ってください」「川……UCA？」スピアフィッシュはキョトンとした。「……」「ホー！ホー！ホー！」ニンジャはのけぞり、手を叩いて笑った。「言うに事欠き、俺相手に何というブルシットだ。UCAは敵だぞ、ボク？」 22

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「し、知ってます！だけど……」「ハッハッハッハ、しかもアケチ水軍はそのUCAと日々全力で戦う勇敢な戦士の集まりなんだ。俺もその末席に加わってはおるがね。勇敢だぞ！ハハハハ」「折り入った話ですよ！」ザックはすがるように言った。「知ってるんです！た、確かな筋の話で！」「……」　23