【スズメバチの黄色】このサイバーパンク俳句がスゴイ・有志の分析まとめ【ラオモト・チバ】

なんて……勉強になる小説なんだ。
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スズメバチの黄色

ブラッドレー・ボンド

のえさん@なつやすみのおわり @Nonamed_A

スズメバチの黄色のチバ=サンのハイクがガチに出来がいいので分解解説したいんですよね。 #njslyr #スズメバチの黄色

2019-08-04 08:52:58
のえさん@なつやすみのおわり @Nonamed_A

細火な/藤のあわいに/熾りけむ ささめびな/ふじのあわいに/おこりけむ これ一見してわかったと思うんですけど忍殺ハイクには非常に珍しいことに、俳句の定型をがっちり抑えてるんですよ。575音字余りなしの季語入り

2019-08-04 09:10:46
のえさん@なつやすみのおわり @Nonamed_A

この俳句は、手紙の末尾に添えられており、手紙の内容は隠された陰謀を暴き出し未然に防ぐ、あるいは解決の算段をつけるためのものです。細火って書いた時通常の読み方は「ほそび」で「ささめび」ではないんですが、この場合細雪と同じように考えていいかと思われます。細くちらちらした疎らな火ですね

2019-08-04 09:22:29
のえさん@なつやすみのおわり @Nonamed_A

細火な。 この「な」ここだけがたぶん忍殺文法です。格助詞でもない、助動詞的な使い方と終詞的な使い方と協調を兼ねる「な」。たぶん普通なら助動詞の「の」を使うところで、「細火の藤のあわいに〜」となるか、「細火が藤のあわいに〜」となるところなんですけど、前者はのが2つ重なってリズムが悪く

2019-08-04 09:29:09
のえさん@なつやすみのおわり @Nonamed_A

後者では強調の意味が少なくなりすぎて流しちゃうんですよ。 そこから次の「藤」なんですけど、忍殺は時代を表す時平安時代が全ての引用に出てきますけど、藤の花はガチに平安時代やその前から好まれた花で、基本的にはめでたいものです。で、密集して垂れ下がるように咲く。

2019-08-04 09:33:59
のえさん@なつやすみのおわり @Nonamed_A

かつ、藤波って言葉があるように、藤は揺れるもの、波うつもの、かき分けるもの、向こう側を透かして見るのが難しいものなので、そのあわい「細火」「熾りけむ」、この「けむ」なんですけど

2019-08-04 10:12:36
のえさん@なつやすみのおわり @Nonamed_A

「けむ」って過去のことにしか使わないんですね。「む」単体では現在、「らむ」は未来なんですが、どれも推量または伝聞、婉曲の言葉です。まず過去形を使うかとにより、もうこれは起こってしまったんだという危機感をはっきりと相手につきつけています。

2019-08-04 10:18:04
のえさん@なつやすみのおわり @Nonamed_A

「けむ」にたような言葉として「けり」があり、これもまた過去の出来事、過去の伝聞を表すのですが、「熾りけり」では、単にあったそうな、というだけでそこに推量を含みません。あえての「けむ」を使うことで、自分の考えであることをはっきりと示しています。

2019-08-04 10:20:39
のえさん@なつやすみのおわり @Nonamed_A

つまりこの歌は手紙の駄目押し、「もともとめでたいものであった我々の組織とその関係(藤はつる植物であり絡みつく=関係が強固なものである)の中に、まだはっきりとは見えないが不穏なことが起きてしまって、今お前が動かなければ取り返しがつかなくなるぞ」という強い脅し、対応を迫る意味になります

2019-08-04 10:23:53
のえさん@なつやすみのおわり @Nonamed_A

火が「立つ(発生する」ではなく「熾る」という単語を使っていることからもこの威しの意味は明白です。これは火が墨に燃え移り火勢が大きくなることを示す単語で、前の「細火」を受けて、大火が起きる不吉な予感を否が応でも増させます。

2019-08-04 10:27:24
のえさん@なつやすみのおわり @Nonamed_A

それでいながら、全体としては、「一面の藤の花、遠くが霞んでよくみえない藤の花を透かしてみれば、そのあわいにちらちらと細い火が見え隠れしている」という圧倒的に美しく明るい薄紫の印象で、強烈な批判と威しを柔らかく包み込んでいます。

2019-08-04 10:30:14
のえさん@なつやすみのおわり @Nonamed_A

ここまでの意味合いをハイク1つに含めるチバ=サンのインテリジェンスとワザマエが輝くばかりの作といえ、六眼大僧正が感嘆の意を隠しきれなかったのももっともなことでありましょう。 本当に素晴らしい。

2019-08-04 10:32:10
のえさん@なつやすみのおわり @Nonamed_A

書くの忘れてましたが、藤は木自体の寿命が非常に長く、火をすかさねばみえないような一面の藤ということはその藤は大樹であり、この火を消すならば両者の関係はますます栄え千年万年の長きに及ぶだろうこと、また藤の蔓は燃えやすいことなどもおそらくチバ=サンには織り込み済みでしたろう

2019-08-04 13:57:18
スズメバチの黄色

ブラッドレー・ボンド