ストレイトロード:ルート140(43周目)

オリジナル短編「ストレイトロード」のコンビが毎日お届けしている、掌編という名の習作。今回は2101~2150+イベントレポートなど。 終盤のリクエスト回を除き、共通のテーマとして「クリーチャー(※)以外の生き物」を設定していました。 今後も引き続き1日1組つぶやいていきます。 続きを読む
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Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、2111。笹。

2019-07-02 18:55:36
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

森の奥へ続く足跡を辿る道中、背後から棍棒で殴られた。「ここにあった壺を盗んだな」現場を通っただけで疑われたらしい。藍は携帯端末を構えて犯人に尋ねた。「何か入ってたの?」「入れてたんだ」指差した先には一本の木。樹液を集めていたと聞き、巨大な足の持ち主がここを通った事実を思い出した。

2019-07-03 19:31:49
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、2112。樹液。

2019-07-03 19:32:57
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

砂浜を散策していた藍が足を止め、その場にしゃがんで何かを始めた。車で待つ予定だった私を携帯端末で呼び出し、指示通りに移動しろと言う。前に一歩、左に二歩。砂浜にあるのはチェス盤でも駒でもなく小さな穴だ。「そこで写真を撮る用意」言われるまま端末を構えた私の前に、珍しい色の蟹が現れた。

2019-07-04 18:49:02
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、2113。砂浜。

2019-07-04 18:49:03
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

かすかな音が私を現実に呼び戻した。それが録音ではない本物の小川のせせらぎだと直感で判断したら、自然と足が動いた。「その調子。やればできるじゃない」背負った少女が小鳥のように笑う。彼女の足として働くのは川辺へ出るまでにしよう。辿り着いたらすぐにでも、雇い主の行方を白状させなければ。

2019-07-05 19:09:04
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、2114。せせらぎ。

2019-07-05 19:09:04
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

農道を走っていると車に少年達が駆け寄り、予備のバッテリーを求めてきた。長引く停電で送風機が止まったままだという。「風を送るって何に?」顔を出した藍に同年代の彼らが慌てた。「大事なんだ」「見ればわかる」「飼ってる牛が元気ないって言えば済むじゃない」足りない説明を一蹴する風が吹いた。

2019-07-06 19:34:00
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、2115。送風機。

2019-07-06 19:34:00
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

「余計な手出しをするな」山の持ち主が怒りを露にしたのは、藍のもたらす風がただ自然の在り方に反するとの理由ではなかった。「ここには多くの命がある」小さな植物から獰猛な獣まで、そこに生息する全てを昔の姿のままに保とうとしているという。怪物のように空を飛ばなくとも、彼女は脅威なのだと。

2019-07-07 18:57:39
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、2116。保つ。

2019-07-07 18:57:39
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

新型シェルターの視察団と共に山間の集落へ向かい、谷底を埋めるように並ぶ建物を見学した。中央の川には何もいない。「地下水を損なわないように地上へ建設したそうだ」役人の一人が解説してくれた。谷を囲む織物工場を見て私は理由を察した。藍は首を傾げた。「洪水が来たら?」「秘策があるらしい」

2019-07-08 18:52:05
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、2117。地下水。 不安の種は知識の上にしか芽吹かない。

2019-07-08 18:52:05
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

双眼鏡を構えると視野は狭まる。藍が何かを発見したと言っても私はすぐに追いつけず、やっと焦点を合わせた時には土煙しか見えなかった。「別にいいけど。戻ってきた」両手を下ろして周囲を見渡した。上空を旋回する怪物は、岩陰に隠れた私達に気づかないまま、土煙をまとう牛の群れから逃げていった。

2019-07-09 21:45:13
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、2118。土煙。

2019-07-09 21:45:13
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

「猫が手招きしてる」何を言い出すかと思えば、藍が見つけたのは商店の出窓に寝そべる飼い猫だった。日の当たる位置に投げ出した前肢の動きは言われてみれば手招きにも見える。上目遣いに誘われてか、他にも何人か足を止めていた。「開けてほしいのかもね」店の扉に貼られた紙は既に色褪せて読めない。

2019-07-10 18:50:48
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、2119。手招き。

2019-07-10 18:50:48
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

少年がリードを引いても犬は道の中心から動こうとしない。「僕の日だけいつもこうなんだ」犬の世話は当番制で、他の兄弟との散歩ではここまで抵抗しないと言う。「当番だからって替わってもらえないし」「その子が見てる方に何かあるの?」藍が尋ねた直後、犬がその方向へ走り出した。少年だけ連れて。

2019-07-11 19:50:32
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、2120。当番。

2019-07-11 19:50:32
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

森のどこかからさえずりが聞こえる。だがその鳥は本来この地域に生息しないはずの種類だった。「聞こえるのに?」「誰かが鳴き真似でもしているのでは」藍が立ち止まり、辺りを包む空気に耳を傾けた。「人間の仕業じゃない。鳥しかいなかった」念のため特徴を訊くと、全く違う種類の説明が返ってきた。

2019-07-12 18:43:11
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、2121。鳴き真似。 名手が人間とは限らない。

2019-07-12 18:43:11
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

私達が入ろうと開けた門からその家の鶏が逃げ出し、責任を取って捕まえることになった。高く飛び立つ心配がない代わり逃げ足が速い。体力の衰えを痛感する間もなく段差につまずいて転び、藍に任せるしかなくなった。「鍛え方が足りないんじゃないの?」罵倒の風に乗って、赤い鶏冠が頭上を飛び越えた。

2019-07-13 19:00:21
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、2122。逃げ足。

2019-07-13 19:00:21
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

「絶対外に何かいるよ」「気にするな」食堂の窓を気にして怯える子供を父親が宥めている。猫が盛る時期と聞けば納得できるが。「本当に猫なの?」藍が呟くと、背後から見知らぬ酔客が口を挟んだ。「実は例の化け物も同じようにやるんだよ。誘ってる瞬間を見たことがあってな」明らかに話を盛っている。

2019-07-14 20:06:36
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、2123。盛る(さかる/もる)。

2019-07-14 20:06:36
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