ア㊙️イさんのお尻と学ぶイタリアン・マフィアの世界(全21回)

ア㊙️イさんのお尻 @bot99795157

反マフィア法のもとでは、一定額以上の補助金申請を行なった企業は審査の過程で警察がもつマフィアの情報と照会され、例えばこれまで企業がマフィアと関わっていた証拠はないか、あるいは経営者の親族にマフィアがいないかが厳格に自治体によってチェックされるのだ。 (3/23) pic.twitter.com/EsZwTZ2C9b

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2013年の法改正により「一定額」が€154,937から€150,000に引き下げられたのだ。もし審査の過程でマフィアとの繋がりが露見すれば、企業のみならずファミリーにまで捜査の手が及ぶことになるのだ。審査対象が広がるわけだから、制度はより厳しくなったと言えるのだ。 (4/23) pic.twitter.com/gQY8mChCmz

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でもこの一定額以下の補助金申請を行う企業は、マフィアとの繋がりに関しては「自己申告」でOKという扱いだから、基準以下の審査がユルユルなことに変わりは無いのだ。補助金を可能な限り得たいマフィアとしては、とるべき戦略は一つ、「15万ユーロギリギリ」を狙えばいいのだ！ (5/23)

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ということで実証なのだ！ この研究では、2008年から2015年の間に補助金を受け取った企業の受領額やその企業の情報、そしてイタリア各地のマフィアの存否のデータを統合し、統計分析を行なったのだ。 もう記述統計の時点であからさまな傾向があるのは思わず笑ってしまうのだ… (6/23) pic.twitter.com/5GCQUrJixJ

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統計分析の結果、2013年の法改正後には、15万ユーロギリギリ(14万9千1ユーロ〜15万ユーロ)の額で補助金を受け取る企業が増加していたことがわかったのだ。推計によれば法改正後に「ギリギリ」を受領した企業の増加率はおよそ400%で、補助金受領企業のうちの3.8%が「ギリギリ」を狙っていたのだ (7/23) pic.twitter.com/Uf5aufcTzQ

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もちろん「普通の」企業がこのギリギリのラインを狙う可能性も全くゼロというわけではないから、この研究ではこうした「ギリギリ」を攻める企業がマフィアと繋がりがあることを示す傍証を大量にあげているのだ。 (8/23)

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傍証の一つ目は、マフィアがいる地域に所在地がある企業の方が、そうでない企業に比べて、「15万ユーロギリギリ」の補助金を得る確率が高かったことなのだ。マフィアのお膝元でこういう傾向が見られるということは、やっぱり彼らが関わってるように思えるのだ。 (9/23) pic.twitter.com/mcXDmWTiJi

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傍証の二つ目は、マフィアの組織構成の違いに着目した分析の結果なのだ。4大マフィアの一つ、ンドランゲタ(カラブリア)は、コーサ・ノストラ(シチリア)、カモッラ(カンパニア)、サクラ・コロナ・ウニータ(プーリア)と異なり、組織が親族関係で成り立っているのが大きな特徴なのだ。 (10/23) pic.twitter.com/763eDprkdt

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つまりンドランゲタのファミリーはまさに「ファミリー」で、部外者が加入するには結婚等を通じて家族にならなきゃいけないのだ。彼らはファミリー外の人間を全く信用しないんだけど、この「反マフィア法」はンドランゲタに大ダメージを与えたはずなのだ。 (11/23) pic.twitter.com/q2UO5pr7ok

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フロント企業には名ばかりの「代表」が必要になるのだ。マフィアは色々な方法でこの代表を外部から据えるんだけど、ンドランゲタは自分の親族をこのポジションにつかせることが多いのだ。でも反マフィア法のもとでは基準額以上を申請した時、代表がマフィアの親族かチェックされてしまうのだ (12/23)

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ということは、「15万ユーロ以下ギリギリ」を狙う可能性が最も高いのは、4大マフィアの中で最も反マフィア法に脆弱なンドランゲタのはずなのだ。そこでこの研究では、4大マフィアの所在地(シチリア・カンパニア・カラブリア・プーリア州)に限定した同様の分析を行なっているのだ。 (13/23)

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分析の結果、予想通り、ンドランゲタ(Kinship-based Organization)が拠点を置くカラブリアの企業の方が、他の3つのマフィアが拠点を置く地域の企業よりも「15万ユーロギリギリ」で補助金を受け取る確率が高かったことがわかったのだ。 (14/23) pic.twitter.com/8EnHONOqRR

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傍証の三つ目は、ギリギリを狙う企業がかなり「マフィア」っぽいことなのだ。 フロント企業の特徴として、まともに企業活動なんかしてないから企業としてのパフォーマンスも悪いし、資金洗浄にも使われているし、マフィアが得意とする産業(建設/輸送業)に関わっているはずなのだ。 (15/23)

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これをどう実証するか？15万ユーロ以下ギリギリと15万ユーロ以上ギリギリの補助金をそれぞれ受け取った企業は、反マフィア法の影響の違いを除けば、かなり似通った企業であるはずなのだ。この点を利用すればいいのだ！ (16/23)

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分析の結果、15万ユーロをギリギリ下回る補助金を受け取った企業は、ギリギリ上回った企業と比較して、 ・補助金事業の成果報告を出すのが遅い (=パフォーマンスが悪い) ・銀行債務が少ない (=偽の”債務”で資金洗浄してる) ・建設/輸送業である確率が高い ということがわかったのだ。 (17/23)

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傍証の話をまとめると、ギリギリのラインを攻める企業は、 ・マフィア所在地に集中(傍証1) ・親族ベースのマフィア所在地に特に集中(傍証2) ・企業の財務/事業形態がマフィアっぽい(傍証3) 傾向にあると言えるのだ。ここまで言われたらやっぱりマフィアが関係しているとしか思えないのだ！ (18/23)

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さて、ここまでの分析で言えることは、2013年の法改正によって15万ユーロギリギリを狙うマフィアのフロント企業が増えた、ということだけなのだ。 じゃあこの法改正は、全体としてマフィアに行き渡ってしまった補助金の額を減らすことはできたのか？ (19/23)

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分析の結果、2013年以後、マフィアの拠点がある地域では、15万ユーロ「より多い」額の補助金を受け取る企業が減少していたことがわかったのだ。 この結果は、法改正によってフロント企業がより「慎ましく」なったことを示唆しているのだ！ (20/23)

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じゃあいっそのこと政府は補助金を申請した全ての企業を調査対象にすれば良い(=基準額を0ユーロにしちゃう)のでは？という疑問が当然湧くんだけど、そこまで膨大な数の企業を審査するのはむちゃくちゃお金がかかるはずだし、政府の財源も無限ではないのだ。 (21/23)

ア㊙️イさんのお尻 @bot99795157

そこで、これまでの分析の結果と、イタリアの公務員の給料や一人当たりの審査可能件数を考慮した超シンプルな費用便益分析を行ったところ、4000ユーロ(!)まで基準額を下げても政策的にペイ(マイナスにならない)できるはずという試算を出しているのだ。まだまだ下げても大丈夫なのだ〜！！ (22/23) pic.twitter.com/3hxqlc4bWz

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今回の話は papers.ssrn.com/sol3/papers.cf… からなのだ。 膨大な量の企業データの解析はそれだけで興味深いんだけど、そこに簡便ながら費用便益分析を加える事で政策提言もしちゃう、なかなか欲張りな論文だと思うのだ。出版されるのが楽しみなのだ！ (23/23)