副腎皮質ステロイドとニューモチスチス肺炎
ステロイド薬の効果の裏返しでもあるのですが、免疫抑制状態の患者は、ありとあらゆる感染症のリスクが上昇してしまいます。
2019-08-14 00:44:26ニューモチスチス肺炎とは、真菌の仲間であるPneumocystis jiroveciiが免疫不全状態のヒトに感染することによって発症する肺炎です。薬剤による免疫抑制状態の患者での発症率は2%程度と言われています。 Clin Infect Dis. 2002;34: 1098–107.
2019-08-14 00:49:23しかしながら発症した場合の死亡率は30%-40%とも言われており、絶対に発症させてはいけない合併症と言えます。
2019-08-14 00:50:49しかしながら、ST合剤は細胞のDNA合成の際に必要となる、葉酸の合成阻害と、活性化阻害薬の合剤であるため、副作用として血球減少の原因となる場合があります。 その発生頻度は、予防投薬での使用で約30%との報告もあります。
2019-08-14 00:54:31その場合第二選択として使用できるのが、 アトバコン内用液、ペンタミジンイセチオンのネブライザーによる吸入になります。 しかしながら、アトバコン、ペンタミジンを使用した場合薬価が継続的にST合剤の100倍以上かかってしまうため、ST合剤で予防できるのに越したことはありません。
2019-08-14 00:57:34予防薬を使用した場合、91%のニューモチスチス肺炎は予防できるとの報告があります。 Green H, et al. Prophylaxis of Pneumonia in immu- nocompromised non HIV-infected patients: System- atic review and meta-analysis of randomized con- trolled trials. Mayo Clin Proc 2007; 82: 1052-9.
2019-08-14 00:59:30我々臨床家がしばしば悩むのが、どれくらいステロイドを使った場合に予防投薬が必要なのか、あるいは、どのくらいST合剤を使えば良いのか、と言うところです。
2019-08-14 01:01:10まず前者ですが、プレドニゾロンとして16mg以上の用量で8週間以上継続内服している場合にリスクが高く、予防投薬が推奨できるとする報告が2004年にされています。 N Eng J Med 2004;350: 2487-98
2019-08-14 01:03:21また、エビデンスレベル的には落ちますが20mg以上継続内服している場合や、10mg以上を継続内服している場合必要、との報告もあり、一定の見解は得られていない現状です。
2019-08-14 01:09:49予防方法についてですが、ST合剤は1日1錠連日投与、あるいは2錠を週3回経口投与が推奨されていますが、添付文書通りの投与方法では約30%で何らかの副作用が出現し、継続が難しくなるので、さらなる投与方法の工夫がなされています。
2019-08-14 01:14:00Utsunomiyaらの非盲検ランダム試験での報告では ST合剤0.5錠連日投与法が優れた予防投薬法だと結論付けています。しかしながら、研究対象患者がそれぞれの郡で50名程度であったことから、運よく患者が出なかっただけである可能性も否定できません。 Arthritis Research & Therapy (2017) 19:7
2019-08-14 01:19:29ちなみに、近年発売されたアトバコンは忍容性が高く、副作用もST合剤と比べて起こりづらいため、ST合剤の使用がどうしても難しい場合は選択肢になるかと思います。
2019-08-14 01:21:06今日のまとめです。 ①PSL内服患者ではニューモチスチス肺炎の予防が重要。 ②PSL何mgから高リスクかは意見が分かれるが、15mg以上で予防が必要という強いエビデンスがある。 ③ST合剤の予防投与方法は最適化されていないが、場合によっては減量レジメンの使用も考慮できるかもしれない。
2019-08-14 01:24:01