浪人生の俺が奴隷美少女を解放したら恩返しにおしかけ女房してきてどうなっちゃうのー?
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ちょっと違うか。 いや、鶴ですとか狐ですとかはもう今どきなあ。 やっぱ奴隷…救っていただいた奴隷が恩義に感じて嫁になってくれるというのがスタンダード。
2019-08-25 14:05:05じゃあ無職の俺が奴隷美少女を解放して…いやなんか無職中高年の話はしんどいからやめよう。嫁が来てもハッスルできそうもないし。 もっと若くて…浪人生ぐらいかなかな。 浪人生の俺が、奴隷美少女を解放してあげたら恩返しに押しかけ女房しにきてこれからどうなっちゃうのー?
2019-08-25 14:09:17つかでも浪人生って。今どき実家に金があって、志望校を選ばなきゃ大学ぐらい誰でも入れるよね…。 いや中世。中世ファンタジー世界の話だから。 そもそも中世ファンタジー世界に浪人生とかいるか? いるんだな。いる。今決めた。
2019-08-25 14:11:24浪人生の名前はロウロウにしよう。 かわいいでしょロウロウ。年のころは、まあ若者だ。 学問をやている。この時代、この地方には珍しい。といってめったにいないというほどではない。 今の皇帝は国の政(まつりごと)をあらためるため、村々町々に呼び掛けて、詩文計数歴史占朴に秀いでたものを招集。
2019-08-25 14:17:06試験を経て天稟知識とも申し分なしと認めた人士を、皇帝直属の国史院をはじめとする役所に迎え入れ、高禄と名誉を与え、帝国三十八州を統べる輔弼として重んじた。 まあ大学受験と公務員試験がいっしょくたになったと思えばいい。
2019-08-25 14:20:54試験は何段階もあって、最初は地方で始まり、それから郡都、州都、さらには首都で最終選考を行う。 ロウロウは村一番の英才というのではぜんぜんなかったが、もっとできのよい年上の青年が戦争で亡くなったりして、いちおう読み書きができるというので抜擢を受けた。
2019-08-25 14:23:59とにかく集落ごとに一人は出す決まりだ。 税金や賦役のようなものだ。 幸いロウロウは父も兄もみんな出征して死んでおり、母はその補いをするために働き詰めに働いてついに病を得て斃れ、看病空しく死んでいて、まあ潰れ百姓というか小農の家の生き残りで、村でそのまま養っておくのも無駄。
2019-08-25 14:25:59読み書きの覚えが多少よかったので、近くの寺院の貫主のもとへやられ、そこからさらに推薦を得て地方の名士の子弟が教えを受ける塾へ行き、くさいきたないと嘲りを受けつつ、のこのこ出戻ればもっと邪険の扱いの遭うと承知だから机にかじりつき
2019-08-25 14:29:14もちろん席次一番になるほどではないのだが、いつも二番か三番で成績を収め、各地の予備試験に通ってついに首都まで来てしまった。 万が一にも最終試験に受かれば、立身出世は思いのまま、故郷の村にもたいへんな恩恵をもたらせそうだが。
2019-08-25 14:32:00しかし送り出した方はどうもロウロウのいささかぱっとしない風采や、切れものというにはちと鈍い話しぶりなどを覚えていて、いまいち信用が置けないらしく、何より貧しさもあって、支援がとどこおりがちになった。
2019-08-25 14:33:31首都の暮らしは金がかかる。 ほかの受験生がそれぞれの郷里の期待を一身に背負って、兎にも角にも食うには困らぬだけの懐のものは常に備えているのに、ロウロウは口にのりするために、手紙の代筆だの写本だのの内職をせねばならず。
2019-08-25 14:35:13それでも食べるのがやっとというありさまで、待ちに待った大一番。試験の日には疲れからなんと居眠りをしてしまった。 結果はまあ。 落第である。
2019-08-25 14:36:02浪人生となったのだが、はたして故郷の村がまた次の試験までの支援をしてくれるのか。そもそもロウロウという学生を送り出したのを覚えているのか。皇帝の勅令にしかたなく差し出した人身御供の類ともはや切り捨てているのではないか。 「…やってられないな」
2019-08-25 14:37:49三日三晩、後悔と自責に呻吟した若者は、涙が乾くと、使い込んだ典籍や文具をまとめ、学生街の古物屋に売り払った。 いずれも少年の頃、塾の師の勧めで古物屋から買いそろえたものだ。きっと当時も、どこかの誰かが同じように夢破れて手放したのだろう。 「次はもっといい使い手を見つけるんだぞ」
2019-08-25 14:41:03筆と硯を指でなぞってから店主に渡す。品はそうよくもないが手入れが悪くないのを見てうなずく。 「学生さんはまだ若い。次の機会もありましょう」 「…いいんです」
2019-08-25 14:42:16郷里に出した無心の手紙は返事がない。 本や筆や硯をかえた金は、帰省の路銀にしようと考えたが、果たして戻ったところでどういう扱いを受けるのだろう。もっと首都に近い州であれば落第しても地方の役人ぐらいの口はあるが。田舎では豪族が一切をしきって、官職はみな縁者で占めている。
2019-08-25 14:47:10「どうしたものかな」 今のところ唯一の頼りである銀を握って、ひとまず近くの寺院へ。 何度も試験の合格を願った女神廟だが、今日はひさしぶりにはるか異国で戦に命を落としてひさしい父や兄、病に斃れた母の霊を慰める祈りを捧げる。
2019-08-25 14:49:19といって物心ついてずっと書物とにらめっこばかりしていたロウロウは、もう皆の顔もろくに思い出せないが。 「…どうしたものかな…どうしたものかな…」 涙がこぼれる。本当のところ最終試験に受かるはずはないと思っていた。周りが必死に刻苦勉励しているあいだ、内職しながら学問などして。
2019-08-25 14:51:15予備試験でもいつ落ちるか、いつ貧村が間に合わせのために送ったえせ学生ととして化けの皮がはがれるか、不安ではあった。 それが運よくあるいはわるく首都までたどりついて。つど費えがかさむのを郷里では苦々しく思っていたのかもしれない。
2019-08-25 14:53:36落第を機に音信が断えたのも、機をとらえての厄介払いということだろうか。 「…学生さん。ずいぶん長く祈っておいでだね」 寺院の下働きが話しかけてくる。向こうもまだ若い。 「あ…失礼しました」 「女神様は涙をきらうんだ。縁起が悪いよ」
2019-08-25 14:56:05あわてて手巾、というにはおんぼろの古布を出して目元をぬぐう。 「もうゆきますよ」 「一人だね?だったら、気をつけてな。最近は兵士くずれがこのあたりでも悪さをしているからね」 「どうもありがとう」
2019-08-25 14:57:36