佐藤正美Tweet_20190801_15

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佐藤正美 @satou_masami

私が独立開業した頃にコンピュータ業界ではデータ設計が流行って、その流れに乗った私の会社は、「売れっ子」になって繁盛しました。当時 私が持っていた技術は欧米で流行っていた技術でしたが、日本では「先進的な」技術だったので、社会の流行に乗って「売れっ子」になった。

2019-08-04 21:49:22
佐藤正美 @satou_masami

しかし、私自身は「売れっ子」になったにもかかわらず、虚しさを感じていました。そして、その虚しさは、私が欧米の技術を猿真似していることから生じていた。

2019-08-04 21:49:39
佐藤正美 @satou_masami

「売れっ子」になって いい気になって金銭を稼いでも、流行がすぎれば、私は捨てられる──このままでは私は一時(いっとき)の単なる猿真似の消費財である、という危機感を私は抱いていました。

2019-08-04 21:49:55
佐藤正美 @satou_masami

否、正確にいえば、危機感ではなくて、自尊心(自意識)のつよい私は、他人の技術を猿真似していることを、そして猿真似で金銭を稼いでいることを良しとしなかった。

2019-08-04 21:50:10
佐藤正美 @satou_masami

その虚しさを抱いたまま仕事を続けていくのが嫌だったので、会社設立後 4年目に進路を変えました──「私自身の力で私独自の技術を作りたい」と。私の願望を秘書に伝えたら、秘書は「マサミ さんの納得がいくようにやってください」と言ってくれました。

2019-08-04 21:50:23
佐藤正美 @satou_masami

以後 私は(数学・哲学を学習して)独自のモデル技術(事業分析・データベース設計のためのモデル技術)を作ることに専念しました。数学・哲学の学習のために時間を割くので、当然、仕事を抑えざるを得なかった。会社の収入は急降下しました。

2019-08-04 21:50:43
佐藤正美 @satou_masami

そして、私は貧乏になったけれど、いささかも後悔していない。この30年のあいだ、誰からも制約束縛されることなく、独力で常に考えること、そして(昨日の自分に比べて)自分の技術を少しでも前進させることを心掛ける日々を送ってきたから。自分自身の思考力との戦いの日々でした。

2019-08-04 21:50:56
佐藤正美 @satou_masami

私が「私独自の」モデル技術を作りたいと思い上がってできたのがモデルTM(T字形ER法の進化形)です。しかし、「私独自の」技術を作ると慢気満々だった割には、モデル技術として一応の体裁を持ったTMは、数学・哲学では基本中の基本の技術を集めて整えたにすぎない。

2019-08-04 21:51:10
佐藤正美 @satou_masami

40歳からモデル技術を探究しはじめたのですが、26年のあいだ、一心に作った結末が その程度のものだった。しかし、いっぽうで、私はTMを作ったことで或る程度の自信を持ったのは確かです。

2019-08-04 21:51:27
佐藤正美 @satou_masami

もし、TMを作らなかったら、私は、自らの仕事に自信を持てない (それでいて、他人に比べて才識があるという根拠のない自惚れを持った)・神経質な・独りでいることが好きな つきあい 難い、鼻持ちならないヤツになっていたでしょう。

2019-08-04 21:51:40
佐藤正美 @satou_masami

私は、この 26年間、TMと共に、成功と失敗をくり返して成長してきたと言ってもいいでしょう。小林秀雄氏の言うように、「そしてこの自信を得るのにはどんなに傑(すぐ)れた人物でも相当の時間を要するのだ、成熟する事を要するのだ」。

2019-08-04 21:51:53
佐藤正美 @satou_masami

私は自分自身が「傑れた人物」とは思っていないけれど、年配の人たちのなかの多くは、「自信を得るには相当の時間を要するのだ、成熟する事を要するのだ」ということを実感しているのではないかしら。

2019-08-04 21:52:21
佐藤正美 @satou_masami

一時(いっとき)の着想などは自信にもならない──若い人は、着想を以て才能があると勘違いする傾向があるけれども [ 私も若い頃にはそう思っていましたが ]──、その着想を ちゃんとした形にするためには、思いの外、時間(そして、忍耐)を要するというのが齢66になった私の実感です。

2019-08-04 21:52:37
佐藤正美 @satou_masami

「叛逆や懐疑や飢餓を感じていない精神とは、その特権を誰かに売り渡して了(しま)った精神に過ぎない」(小林秀雄、「『悪霊』 について」)。

2019-08-11 20:59:34
佐藤正美 @satou_masami

「叛逆や懐疑や飢餓を感じていない精神」には、「新たなものを産み出す」とか「既存のものを工夫して改良する」ということに思いを巡らすことなどないでしょう。

2019-08-11 20:59:49
佐藤正美 @satou_masami

職業としての芸術家と 「文学青年」の違いは、この「苦悩」を粧うかどうかにある──元より芸術家には身についた苦悩なので、それを粧うことなどないけれど、芸術作品を創る埒外にいる(fully committed していない)「文学青年」は粧うことができる。

2019-08-11 21:00:06
佐藤正美 @satou_masami

この「苦悩」は、専門職に固有の技術(と その熟練)から切り離せるものではないので。だから、その悩みが、「文学青年」には粧いとして(意識的であれ無意識的であれ)顕れる。それが「文学青年」に特有の雰囲気を醸し出す。私も若い頃には十分にその雰囲気を醸していた。

2019-08-11 21:00:21
佐藤正美 @satou_masami

幸いにも(と思いたい)、私は、40才の頃に、モデル技術(事業分析・データベース設計のためのモデル)を作る仕事に就いた。以来、25年のあいだ、私は ひたすら モデルの「探求に力を傾けた」。そして、若い頃の粧った悩みが本物の悩みに変わった(と思う)。

2019-08-11 21:00:36
佐藤正美 @satou_masami

私は、25年前に作ったモデル技術の「T字形 ER法」そして それに対して施してきた改変の成果(モデルTM)には つねに意に満たない。ひとつのモデル技術を作ったことは喜びではあるが、不満の種にもなる。

2019-08-11 21:00:51
佐藤正美 @satou_masami

我々は、仕事の出来栄えに対する不満そしてそれに対する工夫を長年くり返して熟練してゆき、熟練のなかで悩みを強くしてゆくのではないか。悩んで工夫して、また悩む──そのくり返ししかない。

2019-08-11 21:01:07
佐藤正美 @satou_masami

職業に固有の技術を持っていて 10年とか20年のあいだ、その技術を使い込んでこなければ、この苦悩(或る意味では、醍醐味)を味わうことはできないのではないかしら。

2019-08-11 21:01:33
佐藤正美 @satou_masami

人生のなかで多大な時間を費やす仕事を離れても、人生のなかで重大事たる「相聞と離別」には依然として苦悩は内包されているでしょう。ということは、人生の底流には苦悩があるということではないか──苦悩があるから喜びもあるということではないか、それらは同体ではないか。

2019-08-11 21:01:46
佐藤正美 @satou_masami

あるいは、逆説的に云えば、喜びは悩みに属している、と。そういう意味では、小林秀雄氏の謂うように「苦悩は人間の意識の唯一の原因である」かもしれない。ゲーテの次の言葉は示唆に富んでいる──「世の中のものはなんでも我慢できる。しかし幸福な日の連続だけは我慢できない」。

2019-08-11 21:02:00