【蜃気楼】福間健二 #k2fact232
夏は終わらないが、夜の来るのが早くなって、しぶとい資本主義も器官の連絡がうまくいかない。いろんな種類の針、役立つもの、刺さるもの、まだあるとしてもだよ。幽霊の匂いがする壁にもたれて、うつむく共犯者たち。だれかが冷たいお茶を持ってきてくれると思ってるのか。(蜃気楼1)#k2fact232
2019-08-28 14:15:49期待というほどのことはなくても、ゆるまない部分があり、それが開かない窓にもなって、鳥の声がする。計画したこと。実際にやったこと。なんとかつじつまが合うように語る人たち。たとえば野は少年や馬の澄んだ目のためにある。きみがここで何をするかも黙って見ている目だ。(蜃気楼2)#k2fact232
2019-08-29 13:54:20壊れたビニール傘と格闘する男を写真に撮る。デジタル。永遠化していないが、雨があがったあとも引きずられる「構造」と親骨の失意がある。慰めていいのかどうか。委員会は黙っている。青い夜道、二十一世紀だ。この先に足音と「お帰りなさい」で迎えてくれる村はない。(蜃気楼3)#k2fact232
2019-08-30 09:59:50ぼくの影。なりたいものになっていいと言ったら、考え込んでいる。動物、それとも。汗をかく夏だからではなく不意を襲われて南北を錯覚する。半端に他者のかれらの苦労も少しずつわかって通り抜ける都会。シャツを替えなさい。でもその前に迷う子どもの骨に言うことがある。(蜃気楼4)#k2fact232
2019-08-31 13:48:39目印になりそうな高い建物もありすぎると困る。すまんがね、理想はまっすぐな通りの先にフジヤマが見えること。そしてマネー、どこにある。ここだと吠える犬。姿は変化しても「わたしはわたし自身を生きる」でなくては。お知らせやご案内は無用。目が合った瞬間にかみつく。(蜃気楼5)#k2fact232
2019-09-01 12:29:47説明するなってこと。落ちてくる馬蹄形でどの首にまたがるかだ。朝起きるといつも不満の煙を吐きだし、だれかがわかりやすい失敗をしていないかと探る視線の奴隷たち。どうしたらよかったのか。幸福と不幸の数が合うはずはないのに。ぼくたちは夏を楽しんでいただけなのに。(蜃気楼6)#k2fact232
2019-09-02 13:15:50盗んだ。だれかの手紙。横切った。だれかの森。それでも変わらない性格。情報量のために遠まわりする長い音。それもやがてやみ、陥れられたのではなく自分で飛びあがったのだと言わなくてはならない。ありがとう、この席。よく見えるかは別としてとなりにおとなしい人がいる。(蜃気楼7)#k2fact232
2019-09-03 11:39:14気がつくと咳をしても電気が走る。あたえることもしたけど、わるいこともした部位。でも、そんなもの、どうなってもという午後の光の変化。手紙を書いてだれもが言いそうなことを言うのは我慢して。やあ、ぼくだよ、ときみに言うのはいつだろう。きみのとなりのおとなしい人。(蜃気楼8)#k2fact232
2019-09-04 16:53:40東京では安くないレッツィーナ、久しぶりだった。普通のおとなになった先の、むこう岸の森。ちょっと酔って、借り物の自転車で。腰痛をこらえながらのダンス。ひとりで生きていたぼくの中身は、できること、できないことの区別を忘れていた。問題は世界だ。やっとここまで。(蜃気楼9)#k2fact232
2019-09-05 13:43:23森のピアノ。鳴らなくても、実験音楽。ともに立ちたい地面を思い出にしたくなかった。身長差、それだけで物語をこえる物語を再生させたハイキング。出会う人、そのかわいい主張は意味不明でもかまわなかった。みんな、閉じた目のなかに生きている。きょうはまだ治らない。(蜃気楼10)#k2fact232
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