初音ミク「ハジメテノオト」の歌詞を韻による意味の伝達という観点から評価する
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yaoki_dokidoki
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「ハジメテノオト」で僕がいいなって感じるのは、「わ」の音だ。「はじめてのおとは なんでしたか/はじめてのおとは」。ここまではやさしく念をおすように韻がふまれている。韻とはいっても、おなじフレーズが繰りかえされているだけなので、僕たちにはたぶん押韻とはかんじとられない。
2011-05-25 23:19:24
歌のはじまりの部分に繰りかえしを置くのは、畑亜貴せんせーもよくやることだ。ミルキィホームズの「おはよーおはよー」や涼宮ハルヒの「ナゾナゾみたいに」や、宙のまにまにの「遠くとおくへと」や、らき☆すたの「BonBonおーえんだん」などだね。
2011-05-25 23:24:14
畑亜貴せんせーの場合は、畑亜貴せんせーの押韻のやりかたに、みんなの耳がついていけるように準備をさせているのだと思っている。
2011-05-25 23:26:10
さて次の歌詞を見てみると、「わたしにとっては これがそう/だからいま うれしくて」となっている。そして、「わ」の音に注目すると、「わたしにとっては」というフレーズの始まりと終わりに「わ」が置かれている。
2011-05-25 23:29:16
それですこし巻きもどして聞いてみると、「はじめてのおとは わたしにとっては」となっているんだよ。つまり、「わ」の音がフレーズの終わりと次のフレーズの始まりで隣りあっているんだよね。聞いているとあまり意識されないことだと思うけど。
2011-05-25 23:32:31
意識されないのは、フレーズの終わりからフレーズのはじまりへと位置が移動してるからだ。逆にいうと、位置が同じである「おとは」と「とっては」の「わ」の音はちょっとにているよね。「とは」が「とっては」へ引き延ばされているからっていう理由もあるだろう。
2011-05-25 23:36:13
さきにすすんでみよう。次は「はじめてのことばは なんでしたか/あなたのはじめてのことば」。ここでは1連とはちがって「わ」の音が一回しかでてこない。聴いた感じとしては、1連よりも安定的な感じがへると思う。
2011-05-26 00:55:55
そして「わたしはことばって いえない/だからこうしてうたっています」。先ほどと同じように「わ」の音で始まっている。今度は隣り合って置かれてはいない。
2011-05-26 00:58:12
それで、この「わたし…は」というフレーズは1番でけっこうでてくるんだよ。1連「わたしにとっては」→2連「わたしはことばって」→3連「わたしはうたうから」→4連「わたしはしらない」というふうに。
2011-05-26 01:03:50
「ハジメテノオト」という歌が初音ミクという存在にある種の「ほんとうにそういう生命がいる感じ」をもたせたと感じる人がいるなら、それはこのフレーズのちりばめかたにあると思うんだ。
2011-05-26 01:06:28
最初にどうして「同じかたちだと構成がわかりやすい」という話をしたかということだけど、これからする話のために準備していたのだ。
2011-05-26 01:21:14
歌の全体における構成、つまり歌のかたちというのは、意図的につくられていることがおおい。だからわかりやすいのだとも思う。そうだけど、歌詞のこまかい部分でおこなわれている構成は、意識されないことがおおい。
2011-05-26 01:24:11
つくっている本人もわかっていないことが多かったりで、そのため「聴いているひとに歌詞の構成がわかりやすいように」という意識もはたらかなかったりする。そんなとき、もちろん聴いているひとにもあまり構成は意識されて聴かれないだろう。
2011-05-26 01:27:07
でも日本語の歌詞にはそれなりの規則があって、見よう見まねでその規則はいろんな人にうけつがれている。聞いてる人の聞き方にも、作る人の作り方にもね。
2011-05-26 01:30:08
ただ、最初に断ったように、同じかたちをしていると構成はわかりやすいのだと直観する。その考えをすこし強めにおしひろげると、同じかたちがあるのなら、そこに構成が読みとられるのだということ。ゆるい感じで同じかたちがあるのならゆるい構成が、つよく同じかたちがあるのならくっきりした構成が。
2011-05-26 01:34:03
僕のうっすらとした考え、つまり仮説では、「ハジメテノオト」を聴いて「わ」の音になにかを感じているとき、僕たちはぼんやりした意識のなかでそこに構成を読みとっている。
2011-05-26 01:37:05
構成が読みとられると、次に僕たちはぼんやりとそこに意味を読みとろうとすると考える。「どうしてここに『わ』の音があるんだろう。ここにもここにもあるな」というふうに。構成から感じとられる意味を、僕は「論理」と呼んでいる。
2011-05-26 01:39:51
正確には、僕たちは論理をつかって構成から意味を読みとろうとすると思う。そして、僕の考えによると、韻をふむことはそこに構成をつくりだすので、僕たち聞き手からするとそこに論理があるように見えるということ。するとだんだん意味のようなものがうっすら見えてきてしまうの。
2011-05-26 01:45:34
脱線しているようにも見えるけど、そんなことはない。僕が「ハジメテノオト」を聴いて感動して以来、ずっとじっと考えてきたことはそういうことだからだ。それをていねいにかたろうとしているのだ。
2011-05-26 01:48:37
そこでまたここに歌詞へのリンクを張る:初音ミク Wiki - ハジメテノオト http://t.co/gpYqetE
2011-05-26 01:50:33
「はじめてのおとは なんでしたか」ということばは、この歌を聴いているリスナー、つまり僕たちへの質問というかたちをしている。僕たちはこの歌声の持ち主にそのようにことばを投げかけられているのだ。
2011-05-26 01:52:38