文科省は英語の民間試験導入と国数の記述式問題を諦めよ
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大学入試改革の目的・目標自体は大変共感できるものなのであるが、それだけに、その帰結として現れた新共通テスト「大学入学共通テスト」の杜撰さは、大学入試への改革という行為そのものを貶める結果となったのは大変悲しいと言わざるを得ない。
2019-09-15 13:44:5221世紀に入ってからのグローバル化と産業構造の変化の中で、より「知っていること・調べたことを元に考える力」「自分の考えを表現する力」が必要となり、その育成に国家的に支援しようという理念は、その通りだと賛意を示すものだ。(国家の教育への関与そのものの是非はここでは留保しよう)
2019-09-15 13:49:23そうした力の育成に、大学に入って急にではなく、高校のうちからそういう方向に力を割いてほしいと考えたときに、高校での学習は入試で問われる内容に大きく規定されてしまうので、大学入試を改革し、そうした能力を問うようにし、合わせて高校の指導要領も変えていこうというのは合理的な発想である。
2019-09-15 13:51:35しかし、この大いなる目標を達成するには、技術的困難が存在した。考える力や表現する力は多肢選択式の問題では測り難く、ペーパーでみるには記述式にせざるを得ない。個々の大学が二次試験でやればいい話だが、やらない大学を無理にやらせることはできない以上は、共通の一次試験を改革するしかない。
2019-09-15 14:00:17かくして、センター試験は「大学入学共通テスト」へと改革されることとなったが、60万人近くが受験し、短い期間で点数を出さねばならない共通テストでそれを行うのは、さらなる技術的制約を受けることを意味した。実施可能な限度での最大限の改変は、目標の達成には大変中途半端なものとなり、
2019-09-15 14:05:29新共通テストの全てが悪いわけではないと一応の擁護はしておこう。施行調査問題をみると、これまで通りの多肢選択式でありながら、資料を読ませ、自分のもつ知識と結合させ、その上で解答させる問題となっており、選択肢だけよみ、反射的に答えられたようなかつてのセンターからは大きく変わっている。
2019-09-15 14:10:45それでいて、必要とする知識量自体は増大することなく、ひょっとすると減っているかもしれない。(いつまでこのレベルの問題を作り続けられるのだろうかと心配になるが、)考える力をはかろうとする努力は大いに見られるものとなっている。
2019-09-15 14:12:55前者について、問題点を指摘しやすいのは国語の方であろう。2018年実施の施行調査で国語には3題の記述式問題があるが、中でも一番長い80〜120字の問題をみると、ここまで丁寧に誘導し、文章の形式まで指定して、それで一ツイートにも満たない字数で書かせようとしていることがわかる。 pic.twitter.com/8lShJHPga1
2019-09-15 14:29:36問題の文章とは別の資料を元に考えを深めようとする内容は、思考力を求めるものではあるが、それをはかるのにこの記述式である必要はない。表現力を図るにしては、ガチガチに形式に当てはめることになり、表現力を示す余地はない。まして、本場の試験ではこれより難易度が下げられると予想されるので、
2019-09-15 14:33:53ますます何がはかれると言うのだろうか。 更なる問題はこれの採点方法であり、大学生バイトによる人力採点となるところである。これが大変信用ならないものであることは採点バイト経験者らの発言からも明らかであり、またそうした模試の採点を受けた諸受験生もまた知るところである。
2019-09-15 14:36:30バイトによる同一基準による採点を実施するために、問題の形式自体も逆に強く規定され、かのようなガチガチのレギュレーションとなるのである。なんたる負の連鎖。 加えて自己採点の困難性も孕み、国公立出願予定の受験生にも強い不安を与えることになるだろう。
2019-09-15 14:39:43そして、後者の英語民間試験である。 大学入試改革の議論において、試験の一発勝負をやめて、複数回受験できるようにし、その中で良かったときのを採用するべきといったものがあったが、それが悪い形で現れてしまったのだろうか。共通テストではスピーキングやライティングははかれないという結論から
2019-09-15 14:47:03そうした要素ごと英語を民間試験に投げやり、共通テストで英語を実施するのをやめようとさえした。そして、高三の間に民間試験を何度も受けていいですよと言うではないか。惨憺たる諦めの境地である。
2019-09-15 14:50:38幸い、共通テストから英語が消えるのは当面の間(2023年までだが)回避されたが、基準の異なる民間が複数あり、加えて共通テストの英語もある状況は、各大学のバラバラな対応につながり、混乱の度合いを増している。
2019-09-15 14:53:29さて、英語民間試験をめぐる問題はすでに多くの人に指摘されている通りであり、特別付け足すことはない。あえて列挙するならば、 ・それぞれ異なる観点から英語能力をはかる民間試験の点数を、比較対照表に基づいて一つのものさしに「変換」するのは元来不可能
2019-09-15 17:27:12・民間試験は受ける月で受験者集団のレベルが変わり、同じ能力でも点数が変動する ・民間試験は採点基準が公開されず、公正度に難がある ・民間試験は共通テストとは別個で高額の受験料がかかる ・受験会場が都市部に限定され、地方の受験生の負担が大きい
2019-09-15 17:27:21・高3の間に受けた民間試験の点数しか認められないため、それまでに高得点や合格を得ていても受け直す必要がある などがある。 最後に挙げた点は、より柔軟な対応を求めたいところであるが、それ以外の点は民間試験そのものが本質的に有する問題点である。
2019-09-15 17:31:38そもそも民間試験はそれぞれに異なるものさしで、異なる英語の実用能力(ビジネスでの能力、研究での能力、高校での学習確認…)をはかれるようにと、それぞれ異なるニッチを形成して存在してきたわけで、そこにこそ市場がはたらいてきたものである。
2019-09-15 17:35:05であるならば、民間試験をどうしても利用するならば、一種類に限定せねばなるまい。しかし、そんな癒着が不可避的な行いは国がすべきものだろうか。 そもそももって、そんなに英語の4技能を図りたいのであれば、大学入試センターが責任を持ってそういう問題を作るべきだったのである。
2019-09-15 17:42:23その場合、ライティングとスピーキングの採点において、国語と数学の記述式で生じる問題と同じことが起こり得よう。しかし、民間の不透明なライティングとスピーキングの採点結果をそのまま利用する不透明性に比べれば、その方がずっとましでさえあるのではないだろうか。
2019-09-15 17:45:30新共通テストの英語については、民間試験の利用をやめ、新共通テストでの英語に一本化して、それを2023年以降も継続するべきであり、4技能をはかりたければ大学入試センターが自前で構築するべきである。ただし、ライティング、スピーキングを共通の一次試験において、短時間で公正に採点するのは困難
2019-09-15 17:49:25であるため、それについてもおとなしく諦め、現行のようにリーディングとリスニングに限るのが妥当である。(なお新共通テストの暫定で継続する英語では、リーディングとリスニングで点数が100点ずつとなる)
2019-09-15 17:51:11