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イカゴジラ @pascal_syan
優勝候補「スキッパーズ」が、事故で意識不明の重体に。 この知らせはすぐにスクエア中に広まり、混乱と悲しみを巻き起こした。 今も集中治療室で、生死の境をさまよっているようだ。絶対に助かりますように。誰もがそう祈った。
イカゴジラ @pascal_syan
「あたい、番狂わせって言葉は好きだけどよ……」 自宅のリビングで、アカネは項垂れていた。 「こんな番狂わせ、ねーよ……なんなんだよ……」 シローは、静かに寄り添った。 姉弟の気持ちは、同じだった。 こんなのあんまりだ。不幸にも程がありすぎる。もし助かったとしても、出場は……
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「ショック、だよね……」 サキとヨーコもまた、項垂れていた。これから戦うかもしれなかった相手。いや、その前に、ナワバリバトルを楽しむ同志だ。彼らが突然見舞われた惨劇に、心を痛めるしかなかった。 こんな状況で、「強豪がひとつ潰れた!やった!」なんて、言える人はいないだろう。
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……だが、いるのだ。 「エグいですねえ~」 スクエア某所。軽薄そうな男・クライスは、自分のチームのリーダーへ語りかける。 「何のことかしら」 黒幕は、すっとぼけてみせた。 「彼らは不幸ね」 なぜなら、彼らは、知らなかったから。弱点を握ったつもりでいて……罠にかかっていることを。
イカゴジラ @pascal_syan
「そこまでして勝ちたいもんですか?普通~……」 やれやれ、といった口調だが、諫める気など微塵もないようだ。 「勝たなければならないのよ」 アヤメの眼光が鋭くなる。 「特に、今回の大会は。お父様は強く望んでおられるのだから」 彼女の背後の壁に、プロジェクターの光が映し出される。
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『死狂』。 その二文字が示す意味。 「お父様が為し得なかった悲願を、私が叶えるの。そのために、手段は選ばない。分かっているわね?」 「そりゃあね。毎日のように聞かされてますから」 クライスは笑った。 「まあ、でも、やりすぎには気をつけなきゃですよ?」
イカゴジラ @pascal_syan
「……そうね」 普段なら怒られるところだが、妙に聞き分けがいい。 「この手は、あいつには使えないわ。……まさか主催だったなんてね」 ぎり、と親指の爪を噛む。 チームへ率いれようとしていた男が、主催に深く関わっていたなんて。計算外の要素に、アヤメは苛ついていた。
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だが、計算外がもたらしたものの中に、メリットもあった。 思っても見なかった好機。優勝者に与えられる、「サイキョーになれる権利」。その意味に、アヤメは誰よりも早く気づいていた。 『シグルイ』。血統も年齢も時代も越えて、王者にふさわしい者に継がれる名前。
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そして、シグルイを守るものとして生まれた、「サキモリ」のチーム名。だが……いつしかサキモリは、主を離れ、独立した。自らもまた王者になりたいという、強欲の権化。下克上を体現するため、長い年月をかけてきた。 その期待と熱情は、アヤメの双肩にかけられたのだ。
イカゴジラ @pascal_syan
「ま、あとは大丈夫でしょう。フシチョーはもはや敵じゃあないし、他に目立つヤツもいない。お嬢様が手を下さずとも、俺たちで何とかしますよ。ねえ?」 チームメイトの二人に振るが、……返答はない。 「つれないねえ」 苦笑しても、やはり返答はない。
イカゴジラ @pascal_syan
フレトとトイラ。彼らは双子だ。とにかく、何も喋らない。その代わり、アヤメの命令を忠実に、迅速に実行する。とても都合のいい操り人形だ、とクライスは評する。 「今日はもう、下がりなさい」 アヤメが言い終わる前に、双子たちは部屋から去っていた。
イカゴジラ @pascal_syan
「じゃ、俺も帰りますね。ほら、これからサイキョー杯の前夜祭がありますし?お嬢様は行かれます?」 「言わずとも、分かると思うのだけど」 「ですよねえ~……。じゃ、お嬢様の代わりにご挨拶してきます。大丈夫ですよ、変なことは言いませんから」 「……好きにしなさい」
イカゴジラ @pascal_syan
サイキョー杯開催まで、あと1日。つまり、開催前日。「前夜祭」という名の元、ほぼ全ての参加者がスクエア中心部に集まっていた。スキッパーズの件が暗く影を落としていたが……それでも、巨大な大会の前日なのだ。若者たちが大いに沸き、興奮していた。
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「悲しいこともあるけれど、大会は大会っ!気合い入れていかないとね!」 「そうなのねー!」 女子たちはぐるぐると腕を回す。 「サキの言う通りだ。切り替えていかねば」 シグルイはブキを手にする。 「行くぞ。前夜祭とやらを、大いに盛り上げてやろうではないか」 「はいっ!」
イカゴジラ @pascal_syan
前夜祭。中身はただのナワバリバトルなのだが、フェスの一般公開ステージのように、テレビやネットで試合光景が生中継される。 今回のフィールドは、偶然にも、前のフェスと同じコンブトラックである。ぐ、偶然だよ。観覧席を使い回せるとかじゃなくて!というのが、運営の言い訳。
イカゴジラ @pascal_syan
観覧席の一角に、ド派手なライブステージが併設されている。 「前、あんなのなかったよね?」 サキが指さす。 「ウン、ないのね。増えたネ?」 サキと一緒に首をかしげるヨーコ。 「あれは一体何だ?」 「さ、さあ?」 シグルイとオクトーも困惑しているようだ。
イカゴジラ @pascal_syan
観覧席も、心なしかざわざわと騒いでいる。あれなに?とか、前なかったよね?とか、誰が歌うの?とか…… 『レディース、エーンド、ジェントルメン!イカした皆様、こんばんは!サイキョー杯前夜祭、次の試合は盛り上がること間違いなしッ!』 前に聞いたことのある、ハイテンションなアナウンスだ。
イカゴジラ @pascal_syan
『な、なんと!またまたこの舞台に、王者シグルイのチームが立ちましたッ!またまた今回も勝ってしまうのか~ッ!?』 『まず、お相手のご紹介をしましょう。それからでは?』 解説の人に窘められている。 『お、おおっとぉ!失礼いたしました!王者シグルイに対するは~ッ!』
イカゴジラ @pascal_syan
その場にいる全員が、敵陣の方に目を向ける。 『期待の新星!イカしたポニテの少女が、飛ぶ!飛ぶ!飛ぶことで有名だーッ! チーム名、「フライ・オクト・フライ」ーーーっ!!!』 ポニーテールの少女を筆頭に、四人の若者がフィールドに降り立った。
イカゴジラ @pascal_syan
「あの髪型、かわいい……」 サキもポニーテールだが、彼女のものとはまた違っている。毛先がくるんとカールしているのが、愛らしい。 『ではでは、意気込みを聞いていきましょうッ!リーダーさんからどうぞ!』 少女にマイクが向けられる。
イカゴジラ @pascal_syan
「ワタシ、ハチ、言います」 おずおずと話し出した。どこか口調が拙い気がする? 「大会、初めてデス。緊張していマス。よろしくオネガイします」 『コメントありがとうございまーす!』 文言は当たり障りのないやつだが、やっぱりなんだか違和感がある。
イカゴジラ @pascal_syan
「あのコ……」 ヨーコはオクトーに耳打ちする。 「ええ、そうですね」 オクトーは頷く。 あの子はタコだ。 二人は瞬時に悟った。 特徴的な癖っ毛と、目元の模様。おまけに言葉に苦戦している。同族ならば、一目で分かるだろう。
イカゴジラ @pascal_syan
『おや?ハチさんのブキ、見覚えのないものですが』 解説の人が突っ込んだ。白と黒のシューター、だろうか?大きさはだいたい、スプラシューターと同じくらいだ。銀色の銃口がイカしているなあ、とサキは思った。 「オクタシューター……」 ヨーコが呟いた。
イカゴジラ @pascal_syan
タコの女戦士タコゾネスに支給される、標準的なブキだ。ヨーコももちろん持ったことがあるので、すぐに正体が分かった。 「中身、スシコラと同じデス」 ハチはブキをとんとんと叩きながら説明した。 『なるほど、モデルチェンジ版ですか。かっこいいですねえ~』
イカゴジラ @pascal_syan
スシコラは、スプラシューターコラボの略だ。 「スシコラってことは、カーリングとジェッパ?」 「サキさん、それはマニュコラです……サブはスプラッシュボムですよ」 オクトーがさりげなく訂正する。 「あ、そ、そうだっけ?」 ブキのサブスペシャルの組み合わせ、全て覚えるのはなかなか難しい。
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