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イカゴジラ @pascal_syan
長かった予選が、終わりを告げた。 一万組いた挑戦者は、ついに4組まで絞られた。 いよいよ、決勝トーナメントが開かれる。組み合わせを決めるための抽選会が、明日行われるそうだ。 多くのメディアが集まる一大イベントだ。
イカゴジラ @pascal_syan
決勝トーナメントに出場するチームは…… シグルイ率いるチーム・無銘。 前夜祭でそれを破った、フライ・オクト・フライ。 疑惑の多い、チーム・サキモリ。 そして…… 新進気鋭の若手、チーム・カマトット。
イカゴジラ @pascal_syan
「まさか……」 まさか、まさかだ。 「まさかあたいたちが、本当に決勝トーナメントに出るなんて……」 「うおお。すごいじゃん。やるじゃん」 キサラギがどこか他人事のようなコメントを出す。 「いや、9割キサ姐のおかげじゃね?」 エースケがツッコむ。
イカゴジラ @pascal_syan
「言い過ぎだよ……」 キサラギは恥ずかしそうだ。 「私がちゃんと当てられるの、みんなが注意、引き付けてくれてるからであって……」 「すると、俺たち4人で9割かあ」 「じゃあ残りの1割は?」 「うーん……?」 シローは少し考えてから、 「……運じゃない?」
イカゴジラ @pascal_syan
たまたま弱い相手に当たったとか、そういう運ではなく。 「あれだけ体調不良起こしてる人が多いのに、俺たちは一人もダウンしなかっただろ?それってすごくないか?」 「運じゃねーだろ、自己管理だろ?」 「そうとも言う」
イカゴジラ @pascal_syan
「でも、まあ、シローの言う通りだね。誰も倒れずに、ここまで来れたんだ。頑張るあたいたちに、神様も応えてくれたのかもな!」 決勝まで進んだことで、実家のカステラ屋の売上が徐々に上がってきている。店は大忙し、なんとアルバイトの子も雇うようになりました。
イカゴジラ @pascal_syan
だが、ここでゴールではない。 あとは、優勝トロフィーと……優勝賞品のひとつ「企業主さま限定 CM放映権」があれば、完璧だ。 「いいかい?ここからが本当の戦いだよ!」 アカネは、メンバーに言い聞かせる。 「化け物どもが選り取りみどり……けどよ!」
イカゴジラ @pascal_syan
どん、と、自分の胸を叩く。 「アイツらと同じ場所に立つあたいたちだって、化け物なのさ!胸を張って、堂々と戦いな。いいね!」 「「「おーっ!」」」 やはり、こういうチームメンバーのまとめあげは、アカネが適任だ。だから彼女がリーダーなのである。
イカゴジラ @pascal_syan
で。 件の化け物はというと…… 「ヨーコ……」 サキは手を後ろに回して、何だか恥ずかしそうにしている。 「どしたのねー?」 サキがそんな態度をとるなんて、珍しいことだ。思わず心配してしまう。 もしかして……
イカゴジラ @pascal_syan
なにか、隠し事があって、それを告白しようとしているのだろうか? 言い出すのに勇気がいるのかもしれない。でも、なにを言われても受け入れるようにしよう。かつて自分もそうしてもらったように…… 「何でも、話すのね。大丈夫なのね」 「あのね……私……」
イカゴジラ @pascal_syan
サキは、両腕を前に出した。 出した。 それだけ。 「?」 至って何の異常もない、普通の、平均的な、女の子の腕だ。 怪我とかもない。血色が悪いわけでもない。…なんだ、これ? 「……よく、わからないのね……」
イカゴジラ @pascal_syan
サキは、テーブルに何かを置いた。 なんの変哲もない、オレンジの缶ジュース。 手にとって封を開ける。ぐいっと一息で飲み干して、空になった缶を…… ぐしゃり、と。 握りつぶした。 「おおーっ!力持ちなのね!」 ここまでは、まあまあよくある光景だ。特に驚きはしない。
イカゴジラ @pascal_syan
サキは、くしゃくしゃに潰れた缶を、両手で挟み込むように持った。 原始的な火起こしをするように、力をこめて、両手を擦り合わせる。 缶が、缶の、形を、どんどん、留めなく、なって、細長い、金属の、棒に、なっていく。 みしみし、と。缶ジュースらしからぬ奇音が響く。
イカゴジラ @pascal_syan
出来上がったのは…指先から肘ぐらいまでの長さの、アルミの……アルミの、棒?棒。先が程よく尖っているのが、クールですね。 サキはそれを二本の指で挟んで、地面に向かって、投げた。 ひゅん、と、風を切って… アスファルトに亀裂が走った。
イカゴジラ @pascal_syan
ヨーコは、何も言えなかった。何を言えばいいのか、分からなかった。 今のは、手品かなにかじゃないかと、そう思った。そう思いたかったのだが。 「私……すごい、怪力になっちゃった……」 告白が、それを許さなかった。
イカゴジラ @pascal_syan
「……?」 ヨーコは、サキの腕を、むにむにと触った。むにむにしていた。普通にやわらかい。筋肉って硬いはずだよね? 「? ?? ???」 よく観察する。だが、やはり、目の前にあるのは、年頃の女の子らしい、華奢な……いや、待って。この間よりもちょっと逞しくなったような?
イカゴジラ @pascal_syan
「????」 「よ、ヨーコ!首が!傾げすぎて、首が変になってるよ!?」 「キンニクナンテドコニモナイヨ」 「方言戻ってるし!」 「きっと、あれなのね。疲れているのね。そうなのね。今日はぐっすりするのね?」 「疲れてたら怪力なんて出ないよ?」 「カイリキっておいしい?」 「ヨーコ!?」
イカゴジラ @pascal_syan
混乱するヨーコに、あらすじを説明した。パブロ持ったら筋力がついた、と。 ヨーコは終始、首を傾げつづけていた。まだよく理解していない模様。いろいろと実演してみたが、夢でも見ているかのように、上の空だ。 そりゃ、そうだ。たった一日で怪力になりましたなんて言われても、信じられないだろう。
イカゴジラ @pascal_syan
「ま、まあそういうことで。怪力に……なったので……よろしくお願いします……?」 「よろしくなのね……???」 疑問符だらけのご挨拶。 ヨーコがパブロ筋を信じる日は、いつになるのだろうか。
イカゴジラ @pascal_syan
ハイカラスクエア、某所。 アヤメは、父親との対談を終えて、部屋を出る。しばらく廊下を歩いてから、……崩れ落ちるように、膝をついた。 「う……」 すぐに立ち上がらねば。壁に這うようにして、ゆっくりと立ち上がった。膝が、震える。歩き出すことすら、難しい。
イカゴジラ @pascal_syan
「お薬は〜、一日3回、食後にご服用ください」 おどけた声がする。 「でないと、満足に動けやしない。ろくなもんじゃないですよねえ」 「……何の、用かしら」 アヤメはふらつきながらも、両の足で立つ。自分には何事もないと言わんばかりに。
イカゴジラ @pascal_syan
「忘れ物ですよ」 クライスは、アヤメの目の前に、緑の液体が入った小さな瓶を振りかざした。 アヤメはそれを、やや強引に奪う。睨みつけるようにしてから、瓶の中身を飲み干した。 「お父様とお話されるんでしょう?ちゃんと前もって飲んでおかなきゃ」
イカゴジラ @pascal_syan
「……切らしていたから」 「それならそれで、言ってくれれば分けて差し上げたんですが?」 わざとらしく、何かに気づいた顔をする。 「おっかしいなあ。みんな揃って一週間分もらってるはずなのに、どうしてお嬢様だけ先に切らしちゃうんでしょうか?」
イカゴジラ @pascal_syan
アヤメは何も答えない。 「もしかして、俺たちより少なく貰っていたとか。だから切らすのが早い。俺の読みだと、わざとそういう風にして……」 「口を閉じなさい」 アヤメはクライスを睨みつけた。 「下らない推理ね」 「……まあね。根拠はどこにもありませんし」
イカゴジラ @pascal_syan
鼻で笑うようにして。 「それにしても、毒性のあるインクを扱えって、無茶にも程があると思いません?俺、歳ですよ。うっかり飲み忘れたらお陀仏しますって」 「そんな歳でも、そんな弱い体でもないでしょう。泣き言を模すのはやめなさい。黙って任務を全うするの。……いいわね?」
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