À rebours

幻想 / 怪奇 /古典 /詩 /恐怖
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和泉萌香 @moekaizumi

支那米の袋/夢野久作 ねえ、お酒を頂戴、そしたら話してあげる、私があんたを殺したいと思っている訳を。ロシアの若い女が出会ったアメリカ軍人は彼女に金持ちが興じる恋愛遊びを語った。高価い薬に化粧道具、鞭やら蝋燭を用意して滅茶苦茶に戯れた挙句には...軽快な話し言葉で綴られる恐ろしい短編。 pic.twitter.com/OdlqU8zw5x

2019-03-24 09:44:32
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和泉萌香 @moekaizumi

“歯車/芥川龍之介” 半透明の歯車が回転する度に小説家は死へと吸い寄せられていく。罪と罰、独逸人の画集、ダンテを横断する彼をレインコートはいつまでも追ってくる、鏡の骸骨が墓の上に座るまで...この気持の中で生き続ける鬱々が痛烈に露わになる一文で幕を閉じる芥川晩年の悲しい傑作。 pic.twitter.com/1n9cdb2CD3

2019-03-24 08:45:44
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和泉萌香 @moekaizumi

“殺人リレー/夢野久作” 女車掌として働く友人は同僚の運転手と恋に落ちるが彼には以前から恋人殺しの噂がついて回っていた。命がけと思いながら彼女は危険を背に愛情をますます滾らせるその先...女心の揺れ動きを絶妙に描く。”滅多に慰めるものじゃない、何に泣いてるか知れたものじゃないんだから” pic.twitter.com/ugLvo5MWbn

2019-03-23 11:00:11
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和泉萌香 @moekaizumi

夢野久作の作品はドグラ・マグラを筆頭に怪奇幻想なものが多いが"少女地獄”に”押絵の奇蹟”、”支那米の袋”などなど一人の女の独白の中に古代ギリシャの学説やら虚偽の戯れやら鮮明に世界を展開、美人も醜女も脳裏にぱっと浮かぶ繊細な描写、気味悪いくらいに言い当てた女心とそれはもう最高なの... pic.twitter.com/hlIE7aOku1

2019-03-26 11:12:57
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和泉萌香 @moekaizumi

“押絵の奇蹟/夢野久作” 喀血し倒れた美貌のピアニストはある女形歌舞伎役者に手紙を認める。互いの顔が瓜二つな2人、彼女の母と彼の父の間に存在していたのは清純で高貴な恋かそれとも不義か?哀れ酷く散った母の想いを胸に彼女が縋る相手は兄かそれとも...禁断の匂い濃く怪作家が一大恋愛を炙り出す。 pic.twitter.com/8cLVX2VWdB

2019-03-26 09:18:49
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和泉萌香 @moekaizumi

九鬼周造の”いきの構造”を留学前に読んでおいて本当に良かったと思う。色恋や衣服の模様に芸術など横断しながら読み解かれる日本特有の美意識”粋”。ヒンドゥー教での”無常”と日本文学や芸能で見られる”無常観”の違い。”諦”という漢字自体の意味は”諦め”とも違う。これを意味体験できる大人になりたい。 pic.twitter.com/Ivsm0YC4Hf

2019-03-25 12:53:51
和泉萌香 @moekaizumi

“生きる人形/寺田寅彦” 文楽人形芝居の形態を映画に融合することにより面白い結果が生まれるのではないかと思案する寄稿。人間より人間らしく見える人形の秘密、不自然な環境の中に孤立した写実の破綻、映像手法と人形動作の類似...西洋と相容れないかと遠くを見つめつつも現代にも反映できる提起だ。 pic.twitter.com/ebNFqHNXJ0

2019-03-25 08:40:01
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和泉萌香 @moekaizumi

存在はしていなかった。だが人々が愛したから生じたのだ、一頭の純粋な獣が。人々は穀物ではなく、いつもただ存在の可能性だけでそれを育んだ。そしてその可能性が獣に強い力を与え、自分の中から額に角を作り上げたのだ。それは銀の鏡の、そして彼女の内部にあった。 ーオルウェウスに寄せるソネット pic.twitter.com/eVk1uoHzjV

2019-03-27 10:41:25
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和泉萌香 @moekaizumi

カイ・ニールセンが挿絵のアンデルセン童話に囲まれたいな...美と儚さが幻想の世界に燻る、日本の浮世絵にも影響を受けた芸術家。ステンドグラスも花々も踊り子も草木もたっぷりレースがあしらったドレスも、全て触れたら壊れてしまいそうで pic.twitter.com/srQGtIzMMO

2019-03-31 14:34:08
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和泉萌香 @moekaizumi

“笑う唖女/夢野久作” 村で若く美しい男女の婚礼の儀式が行われている中やってきたのは身重の唖女。笑い声をあげるばかりの彼女を花婿は破滅の思いで見つめた、物狂わしい官能の香気が立ち込める森で犯した自身の罪を想起しながら...鉛混じりの白粉や異臭が純粋故の狂気にのせて舞い上がる短編。 pic.twitter.com/puywWU0iVL

2019-04-02 09:47:57
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和泉萌香 @moekaizumi

“死後の恋/夢野久作” 浦塩の街のレストランへ元ロシア貴族の青年紳士へ連れ込まれた日本人兵士は不穏なバイタリティ溢れる紳士に不思議な話を聞かされる。それは崇高かつ深刻、奇怪な運命を携える宝石”死後の恋”にまつわる哀しく恐ろしい愛の物語。眼前に広がる美麗な悪夢の行き先はどこに。 pic.twitter.com/cBHJffM3tp

2019-04-01 09:17:52
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和泉萌香 @moekaizumi

“悪魔の弟子/浜尾四郎” 私は貴方を兄、貴方は私を弟の様に尊き愛を育み過ごしてまいりましたのに貴方が若く美しい男に惚れてしまってから疎遠になって。貴方は人を地獄に堕とし破壊し喜ぶ悪魔、しかし貴方自身は決して堕落しない危険な人間なのです...ある男が愛憎入り混じる彼に捧げる告白の手記。 pic.twitter.com/W4zi1eBdCh

2019-04-05 23:25:53
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和泉萌香 @moekaizumi

“押絵と旅する男/江戸川乱歩” 蜃気楼に畏怖した男はその魔力に取り憑かれてか狂気の幻か、帰りの汽車で奇怪な老紳士と出会う。彼が携えた額には命そのまま封じ込められた二体の人形があった。日本海から当時の浅草の風景、生ける人形から血の通う人間の一挙一動まで耽美な筆致で描かれる着色の夢。 pic.twitter.com/MIa1BtcuTi

2019-04-05 08:59:43
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和泉萌香 @moekaizumi

“瓶詰地獄/夢野久作” 父母へ届けんと海を漂流する瓶詰の手紙には地獄が広がっていた。遭難し島へ流れ着いた兄妹2人は豊かな自然の中平穏無事に時を過ごすがやがて邪が彼らの心に潜り込む。神の啓示か悪魔の微笑みか、禁忌の官能に打ち震える物語””明日も悪魔の誘惑に負ける様なことがありませぬ内に..” pic.twitter.com/VHRRKORn60

2019-04-06 09:21:24
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和泉萌香 @moekaizumi

“ヰタ・セクスアリス/森鴎外” 夏目君の小説を読み技癢を感じた。自然主義には妙な事を考えた。あらゆる芸術はLiebeswerbung、口説くのである。性欲が絵画や音楽小説脚本になったりする。文豪が自らの性欲的な生活を冷徹冷静な眼で淡々と、ドイツ語フランス語入り混ぜて語る滑稽で洒落た当時の発禁本。 pic.twitter.com/8cL198qNee

2019-04-07 11:41:24
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和泉萌香 @moekaizumi

“駆け込み訴え/太宰治” 花は美しい間に剪きらなければならぬ。あの人を1番愛しているのは私だ、どのように人から憎まれてもいい...男は愛し献身するが報われない事と嫉妬し絶望し、殺したいと憎む。どんなに憎悪しても彼の美だけは信じると嘆く。壮絶で不安定な人間臭い愛憎、キリストとユダの物語。 pic.twitter.com/JJfTqD9XEs

2019-04-09 10:19:58
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和泉萌香 @moekaizumi

“魔の宮殿(The Haunted Palace)” アッシャー家の崩壊で挿入される、家の主が即興的に作った幻想曲の歌詞はポー自身が発表した詩 人の心を宮殿に例えて理性が崩壊しゆくなか言葉を謳う様、狂人の血走った目がこちらを見つめ妄想が誇張してゆく様の美しい表現が怖い怖い...狂人は笑うが微笑はしない pic.twitter.com/4FoFuWBG0i

2019-04-11 10:33:03
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和泉萌香 @moekaizumi

“アッシャー家の崩壊” 主人公が足を踏み入れた退廃の館、拱廊もくすんだ壁も天井も何もかもが知覚ある無機物、有毒で憂鬱な空気と発光する悪魔の吐息となって、読者をも恐怖の沼に誘い込む。理性と知性を手放し崩壊を予感するアッシャーや主人公、家の様子を綴るポーの狂気を超えた精細な筆致が圧巻。 pic.twitter.com/xFqxWxpkx7

2019-04-11 10:14:41
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和泉萌香 @moekaizumi

大好きなコクトーのイラスト群。見る度に様々な詩人達が綴った美しい文句が浮かぶ。”あなたが私にある事は微笑が私にある事です 全てから脱却してただあなたに向うのです” “きみは僕を豊かにしていました 僕はきみを豊かにしていました” “愛がなければ 私は無に等しい” pic.twitter.com/XslR2PRwYL

2019-04-14 10:39:47
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和泉萌香 @moekaizumi

“外科室/泉鏡花” 手術室に運ばれてきた夫人は麻酔無しで切ってくれと言う、譫言を眠っている間に言わない為に。怪奇幻想文学の偉才が生み出す純愛小説は究極そのもの、既に失われた日本語が散りばめられた、瓶に閉じ込められた花の様な美しい筆致は永遠に手が届かぬ憧れ、敬畏の念を毎に抱く。 pic.twitter.com/ZoKrEefl8R

2019-04-13 11:25:55
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和泉萌香 @moekaizumi

“黒猫” 優しく情け深い心は抜け出て悪鬼に取り憑かれた男は猫へ虐待を加えた。悔恨の情を感じ恐怖してもそれはまた癇癪と加虐の精神に変わり、行為は度を越していった... “自身の本性に暴虐を加えようとする、悪のためにのみ悪をしようとする、不可解な切望” 悪徳の深淵への追求が光るポーの短編。 pic.twitter.com/yU7UPNvWqi

2019-04-17 11:17:19
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和泉萌香 @moekaizumi

“霊感!/夢野久作” ある医者の元へ顎が外れた青年が運び込まれてくる。心も要望も瓜二つの双子の兄弟を持った彼は遠縁の美女と三人で結婚関係を結ぶという数奇な状況下にあり、しかし生まれた子供の父親なまるでどちらか分からない...第六感が裁く彼らの運命はいかに、ユーモラスな印象受ける短編。 pic.twitter.com/PfPeNCzS2P

2019-04-23 12:13:56
和泉萌香 @moekaizumi

“猟奇歌/夢野久作” 背徳と残忍、美の究極に達した怨嗟の言葉が滴って脳髄を揺らす。よくある風景、既視感の情景、惹かれた者は狂人として笑むだろう。”白い蝶が線路を遠く横切って 血まみれの恋が残る 彼女の胸に此の短剣が刺さる時 ふさわしい色に春の陽しづめ” 深夜 針を刺して 真っ赤になるまで pic.twitter.com/xkWfszlaK4

2019-04-23 11:18:45
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和泉萌香 @moekaizumi

“早すぎた埋葬” 空虚で真っ黒、ひっそりと虚無が宇宙全体を覆い尽くす完璧な寂滅。世には惨禍で溢れているが最も最悪な悲惨は個人に降りかかる。仮死状態に陥った人間がまだ息のある内に埋葬される事があると言う。死と沈鬱に取り憑かれた男が経験する気が狂いそうな闇をポーが生々しい筆致で語る。 pic.twitter.com/jdVn3OS5WZ

2019-04-25 10:03:11
和泉萌香 @moekaizumi

“卵/夢野久作” 男は隣に住む女と想い合っていたが、現実の恋から生まれる必然的な結果を恐れて逢引は彼らの魂のみで行われ、囁き合い笑い合っていた。ある日彼は大きな半透明の卵が庭に降り立っているのを見た。甘ったるく恍惚とした蜜月の表象が腐敗し死に絶える推移を禍々しく描いた短編。 pic.twitter.com/N8yGcS4Qup

2019-04-24 10:00:53
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